石原さとみ主演「ミッシング」の音楽はどう生まれた? 世武裕子「空白」に続く2度目の吉田恵輔作品での試み
2024年4月18日 10:00
石原さとみが主演を務め、「ヒメアノ~ル」「空白」の吉田恵輔監督(※「吉」は“つちよし”が正式表記)がメガホンをとった「ミッシング」。同作の音楽を担当しているのは、シンガーソングライターの世武裕子だ。吉田監督とは「空白」に続き、2度目のタッグ。このほど、世武が手掛けた音楽にまつわる秘話が明かされた。
本作は、幼女失踪事件を軸に、失ってしまった大切なものを取り戻していく人々の姿をリアルかつ繊細に描き出した作品。2022年の出産後、1年9カ月ぶりの芝居に臨んだ石原が、出口のない迷路を彷徨い続ける母親・沙織里を演じ、中村倫也、青木崇高、森優作、小野花梨、細川岳、有田麗未、小松和重、カトウシンスケ、山本直寛、柳憂怜、美保純ら実力派キャスト陣が集結している。
世武は、ピアノ演奏・キーボーディストとして森山直太朗、Mr.Children、いきものがかりなどのライブサポートに参加。さらに「Arc アーク」「エゴイスト」「カラオケ行こ!」など、20作品以上の映画音楽も手掛けている。
吉田監督は「ミッシング」では世武以外の劇伴は考えられなかったという。「『空白』で出来上がった楽曲を聞いた時には、その素晴らしさに感動し、作品の質を向上させる説得力を感じました」と振り返り、本作でもその世界観を作ってもらいたいと世武へオファー。オファーを受けた世武は、「『空白』の音楽を『良かった』と思ってくれていたのだな、というのと、少なくとも人間的にも嫌われてはいなさそうだな、という二つの気持ちで有難く思いました」と引き受け、2度目のタッグが実現した。
脚本については「こういう、ちょっとした『あるある』の積み重ねで物語を作っていくのはシンプルなようでとても難しいことだと思います。吉田監督が執拗に(言い方、笑)そういうものを映画でやろうとしていることは社会にとって必要なことだと思います」と感じつつ、それと同時に「やっぱり『空白』の方が良かったと言われたくない」と熱い気持ちを燃やしていたという。
吉田監督の中では、当初「空白」と同じ曲を違うアレンジにするというようなアイデアもあったそう。やがて「空白」と“姉妹作”の空気感を持つ音楽をイメージし「純粋な母性の中に、葛藤や苛立ちなどの『割りきれなさ」みたいなもの」がある楽曲をオーダーした。
世武は、作ったデモを一度音楽ディレクターに提出するという「自身でも珍しい」と話す制作スタイルをとることに。「要するには自分が、吉田監督とまたやるなら、何か新しいことにチャレンジしたいだけのことだな」と、同じ監督の作品でも他作と比べる必要はなく、シンプルにこの映像に呼ばれたものを出そうと思いつつ、「またかよって飽きられてない? 手堅く仕事しているなって思ったら正直に教えてほしい」とディレクターに電話までして、突き詰めていった。
音楽ディレクターからは「映像に自然に呼ばれて作るのが映画音楽作曲家だし、いい音楽だと思った、でもその悩み自体も分かるけれど」という答えが返ってきた。それでも自分が安全な仕事をしている気がしてならず、作り直して納得をしていく道を探っていったというから、まさに“挑戦あるのみ”の戦闘モードで臨んだことがうかがえる。
こうして出来上がった音楽については“映画音楽的な物語に対してのアプローチには、少し新鮮な手法を取り入れた”とのこと。特に、本作の後半部分について「石原さんの精神や肉体、部屋に入る光、そこに映っていないものなど、映像の全てに同化する音楽が描けたかなと思っています」と手ごたえを感じている。
吉田監督も、今回も限られた楽曲数の中で「その世界観を印象付ける説得力、力強さと優しさ、儚さを感じました。登場人物やシーンとの心情の距離感が絶妙。暖かく包み込むような楽曲」になったと絶賛している。
「ミッシング」は、5月17日から全国公開。
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