【2023年の映画界を振り返るVol.1】鮮烈な印象を植え付けた「スラダン」大ヒット
2023年12月28日 12:00
2023年の映画界は、実にさまざまなニュースが駆け巡りました。異例の興行を展開して大ヒットした作品の話題から、長年にわたり活躍してきた映画人たちの訃報、海外の映画祭における日本勢の大健闘など、挙げ出したらきりがありません。映画.comでは、23年の映画界を象徴するニュースを10本ピックアップし、本日から3日連続で読者の皆様とともに振り返ってみようと思います。Vol.1では、3本のトピックスをご紹介します。(文・大塚史貴)
バスケットボール漫画の金字塔「SLAM DUNK」を原作者の井上雄彦氏による監督・脚本で新たにアニメ映画化した「THE FIRST SLAM DUNK」は、22年12月3日に封切られました。今年8月31日に国内上映が終了し、国内累計興行収入157億円、観客動員数1088万人を突破するなど大記録を打ち立てたましたが、今年最初に発表された国内興行ランキング(1月4日発表)で首位を飾ったのも今作でした。この時点での興収は67億円超。その後、1年にわたりロングランを続けたことからも、どれほど多くの人に愛されたかが分かる23年を代表する1本となりました。
新年早々、ショッキングなニュースが飛び込んできました。マーベル作品のホークアイ役で知られるジェレミー・レナーが1月1日(現地時間)の午前、米レイクタホの自宅近くで甥を助け出そうとした際、自身が所有する重さ6トン以上の除雪車にひかれ、ヘリコプターで緊急搬送されました。胸部と顔面にひどい外傷を受けたほか、30カ所以上を骨折という重症でしたが、必死のリハビリ治療に励み、4月には杖をつきながらトーク番組「ジミー・キンメル・ライブ!」に出演。そして、9月にはパラマウント+の主演ドラマ「Mayor of Kingstown(原題)」シーズン3で俳優復帰という吉報が届き、ファンを喜ばせました。
今年も多くの映画人が鬼籍に入りましたが、映画界に多大な貢献を果たした音楽家ふたりの死は、映画界のみならず文化的な側面からも大きな衝撃を与えるものでした。3月28日に71歳で他界した坂本龍一さんは、大島渚監督作「戦場のメリークリスマス」(83)では音楽のほか、俳優としても出演。ベルナルド・ベルトルッチ監督作「ラストエンペラー」(87)では、日本人として初めてアカデミー賞作曲賞を受賞しました。近年も音楽作りに情熱を注ぎ、今年公開の是枝裕和監督作「怪物」の音楽が最後の仕事となりました。今年のベネチア国際映画祭では、息子の空音央(そら・ねお)がメガホンをとった坂本さん最後のコンサートを収めたドキュメンタリー「RYUICHI SAKAMOTO | OPUS」が上映され、満場の客席からエモーショナルなリアクションを巻き起こしました。
一方、フランスで最も愛されたイギリス人と言われた、アイコン的な存在でもあるバーキンさんは7月16日の朝、76歳で旅立ちました。カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝くミケランジェロ・アントニオーニ監督作「欲望」に出演していますが、その後、50本以上の映画で存在感を発揮。一昨年からコンサート開催を延期していたバーキンさんが最期に公の場に姿を現したのは、2月のセザール賞の授賞式。娘のシャルロット・ゲンズブールが監督した「ジェーンとシャルロット」がベスト・ドキュメンタリーにノミネートされた際でした。
執筆者紹介
大塚史貴 (おおつか・ふみたか)
映画.com副編集長。1976年生まれ、神奈川県出身。出版社やハリウッドのエンタメ業界紙の日本版「Variety Japan」を経て、2009年から映画.com編集部に所属。規模の大小を問わず、数多くの邦画作品の撮影現場を取材し、日本映画プロフェッショナル大賞選考委員を務める。
Twitter:@com56362672