【「PATHAAN パターン」評論】キング・カーン完全復活!王の帰還が生み出す新たな宇宙。
2023年9月3日 10:00
インドのムンバイにある観光名所のひとつが「MANNAT LAND’s END」だ。セキュリティ常駐の広大な敷地には六階建ての豪邸。邸内には主のオフィス、トレーニングジム、読み聞かせ用ラウンジ、子どもの遊び場と図書室、広いキッチン。2フロアーのリビングには世界の美術品が並び、バーやホームシアター、エレベーターもある。近くにはバス停があり運が良ければ主に会えるかもと期待する観光客が絶えない。「キングの家」とも称されるこの豪邸の主こそ、シャー・ルク・カーン(以下シャー・ルク)である。
2013年にシャー・ルク邸に行ったことがある。インド映画が熱かった年だ。前年にラジニカーントの「ロボット」(2010)があり、シャー・ルクの「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」(2007)がスマッシュヒット。「ボリウッド4」と銘打ってアーミル・カーンの「きっと、うまくいく」(2009)、サルマーン・カーンの「タイガー 伝説のスパイ」(2012)、シャー・ルクの「闇の帝王DON. ベルリン強奪作戦」(2011)と「命ある限り」(2012)、三大カーンの4作品が連続公開された。
それから10年、今やインド映画といえば「RRR」(2022)や「バーフバリ」2作など、超絶な世界感で観客の度肝を抜く作品を思い浮かべる人が多いかもしれない。そんな中、キング・カーンが4年振りにスクリーンに復帰した「PATHAAN パターン」は、半世紀を超える歴史を誇る老舗ヤシュ・ラージ・フィルムズが放つ「スパイ・ユニバース」の幕開けを飾る超特作。
2019年、インドがパキスタン国境にある州の自治権を無効化したことを知った将軍が激怒、ある男に攻撃を命じる。3年後、国家の危機に直面したインド諜報機関(RAW)は、キャリア30年のエージェント、パターンに密命を発令する。人質として登場するや鍛え上げた肉体で敵をなぎ倒すとヘリを駆って空へと飛び出す序盤から、ブランクを一切感じさせないシャー・ルクの“割れた腹筋”に驚嘆すること間違いなし。
パターンの前に立ちはだかるのは、妻を殺した国家を憎む元RAWの最強エージェントのジム(ジョン・エイブラハム)、凶悪なテロリストの復讐心が燃えたぎる。パキスタン諜報機関のルバイには、「恋する輪廻」でデビュー、シャー・ルクとの共演も多いディーピカー・パードゥコーン。マジョルカ島で大胆な水着姿を披露し、バイカル湖上ではアスリート顔負けのスケーティングに挑戦している。さらにパターンの秘められた過去、瀕死の状態から最前線に帰還する描写が、シャー・ルクの銀幕復帰に重なってドラマを加速させる。貫禄充分の存在感で窮地を救うタイガー(サルマーン)の登場も痛快だ。
「バンバン」(2014)、リティク・ローシャン(カビール役)を主演に究極のスパイ師弟対決を描いた「WAR ウォー!!」(2019)のシッダールト・アーナンド監督は、ボリウッドの復権を懸けた本作でインド映画世界歴代興収5位を奪取。今後はリティクとディーピカー共演の「Fighter」(2024)、シャー・ルクとは2つの新プロジェクトを準備中だ。
気になるのは王の帰還が生み出す新たな宇宙の行方だ。サルマーンの「タイガー3」(2023)にパターンは登場するの? カビールの「WAR!!」の続編はどうなる? ヤシュ・ラージの「チェイス!(原題『DHOOM:3』)」(2013)でアクションを炸裂させたアーミル・カーンを巻き込んだ三大カーン競演は実現しないのか…。妄想は膨らむばかりだが、まずはパターンの勇姿を観てスパイ・ユニバースの未来に期待しようではないか!
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内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。