【第76回カンヌ国際映画祭】是枝裕和監督「怪物」にクィア・パルム賞 日本映画としては初
2023年5月27日 13:00
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第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されている、是枝裕和監督作「怪物」が、コンペなど主要部門の授賞式前に発表される独立賞の「クィア・パルム賞」を受賞した。「クィア・パルム賞」は、2010年に創設されたカンヌ国際映画祭の独立賞のひとつで、LGBTやクィアを扱った映画に与えられる賞で、日本映画としては初の受賞となる。
同賞は、公式部門とは別に独立した審査員が組織され、映画監督や俳優、ジャーナリストや大学教授、各国のクィア映画祭のプロデューサーなど、毎年5~8人が審査員となり、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門、国際批評家週間、監督週間、ある視点部門に出品されたすべての作品が審査対象となる。
本賞の授与にあたり、審査員長のジョン・キャメロン・ミッチェル(『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』『パーティで女の子に話しかけるには』)は、「私たち審査員は、10日間で12本の映画を観ました。1本を選ぶのは大変な作業でしたが、ある作品が満場一致で選ばれました。その物語の中心にいるのは、他の子供たちと同じように振る舞うことができず、またそうしようともしない、とても繊細で、驚くほど強い2人の少年です。世間の期待に適合できない2人の少年が織りなす、この美しく構成された物語は、クィアの人々、馴染むことができない人々、あるいは世界に拒まれている全ての人々に力強い慰めを与え、そしてこの映画は命を救うことになるでしょう。登場人物のあらゆる面を、繊細な詩、深い思いやり、そして見事な技術で表現した是枝裕和監督の『怪物』に、私たち審査員は満場一致でクィア・パルム賞を授与します」と語った。
是枝監督は「ありがとうございます。まずこの作品を満場一致で選んで頂いたジョン・キャメロン・ミッチェルさん、審査員の皆さまありがとうございます。そしてこの喜びをここで分かち合って頂いている皆様にもお礼申し上げます。ありがとうございます。(ジョン・キャメロン・ミッチェルさんが)お話してくださった映画の紹介の中に、この映画を通して僕が描きたかったことが全て語られていて、ここで僕が何か言葉を重ねることは何も必要ないような気がしています。僕がこの映画のプロットを手にしたのは4年半ほど前なのですけども、その瞬間からこの主人公2人の少年が抱えている葛藤とどういう風に、それを演じる少年と同じように作り手であるプロデューサー、監督、脚本家がその葛藤と向き合うべきなのか、どうしたら向き合えるのかをとてもとても時間をかけてやってきました。映画がすべてを語っていると思うので、監督がここでなにかをいうのは、おまけのような、いらない蛇足なのですが本当に、この映画を愛していただいて感謝いたします。ありがとうございました」と喜びのコメントを発表した。
「花束みたいな恋をした」で知られる脚本家・坂元裕二が初めてタッグを組み、故坂本龍一さんが音楽を担当、出演は、安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子ら実力派と、ふたりの少年をみずみずしくかつ情感豊かに演じる黒川想矢と柊木陽太。
息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っているとある郊外が舞台。そんなある日、学校でケンカが起きた。それは、よくある子ども同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に大人や社会、メディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子どもたちが忽然と姿を消してしまう。
なお、是枝監督作品がカンヌ国際映画祭でコンペティション部門に選出されるのは、2022年の韓国映画「ベイビー・ブローカー」から2年連続、7回目(カンヌ国際映画祭への出品自体は9回目)。なお「ベイビー・ブローカー」ではエキュメニカル審査員賞、そして主演のソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞。これまで、「誰も知らない」(2004)で主演を務めた柳楽優弥が最優秀男優賞、「そして父になる」(13)で審査員賞、「万引き家族」(18)では最高賞であるパルム・ドールに輝いている。主要部門授賞式は、現地時間27日午後8時半(日本時間/28日午前3時半)から開催される。「怪物」は、6月2日に全国公開。
(C)2023「怪物」製作委員会
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