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鈴木亮平&宮沢氷魚がアジア・フィルム・アワード参加で考えたこと【「エゴイスト」インタビュー】

2023年4月10日 18:00

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第16回アジア・フィルム・アワードに参加した「エゴイスト」チーム
第16回アジア・フィルム・アワードに参加した「エゴイスト」チーム
写真:朱恒斌

鈴木亮平宮沢氷魚が共演し、男性同士のラブストーリーを紡いだ「エゴイスト」。さかのぼること3月12日、香港で開催されたアジア全域版アカデミー賞「第16回アジア・フィルム・アワード」(AFA)授賞式にて、宮沢が助演男優賞を受賞した。同部門での快挙は、2020年の加瀬亮(「旅のおわり世界のはじまり」)以来となった。

鈴木と宮沢は、そうそうたる顔ぶれとともに授賞式に参加。衣装デザイナー部門ではプレゼンターも務めあげた。助演男優賞の受賞が告げられると、宮沢は流暢な英語で「この舞台に立てて、そしてこの賞を受賞できて光栄です。これ以上幸せなことはありません。この映画を愛し手を差し伸べてくださった皆さんと監督の松永大司、主演の鈴木亮平に感謝したいです」とスピーチ。視線の先には涙ぐむ鈴木と松永監督がいた。

宮沢「この映画が映画という枠のみでなく、人々に対して新しい形の生活や人々をどのように認識し、支え合うのかについて多くの可能性を開けることができるものだと信じています。私はこの映画が世界を旅して多くの人に届き、また戻ってくるのを楽しみにしています」

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映画.comでは、授賞式の直前に、鈴木と宮沢にインタビューを敢行。取材動画とともに、その貴重な内容をお届けしよう。(取材/徐昊辰)


――まもなく授賞式が始まりますが、今の率直なお気持ちをお聞かせください。
鈴木:まずは氷魚君とともにこの場に来れたことが非常に嬉しいです。2人揃って、このような場に呼んでいただけるとは……撮影時から考えると感謝しかないです。
宮沢:亮平さんとこうやっていれることがとても嬉しいです。助演男優賞でのノミネートは初めてのことなので、その機会がこのような場で本当に良かったと思います。
――香港は非常に“アジア的な街”です。授賞式会場の近くには「恋する惑星」のロケ地として使用された重慶ビルがあるんですよ。香港という街についての印象をお聞かせください。
鈴木:(香港を訪れるのは)3回目です。といっても、前回は十数年前のことになるので、(街並みも)色々変わっていると思います。今回はまだ見て回ることができていないので“今の香港”をたくさん感じてから帰りたいなと思っています。
宮沢:僕はおよそ25年ぶりになります。前回来た時は3歳の頃です。
鈴木:おー、それはほぼ初めてだね(笑)。
宮沢:そうなんです。記憶にはないんですが、親から色々話を聞いたりしてたのですが、空港が新しくなっていたことに驚いていましたね。昔の空港は街の真ん中にあって、急旋回をしながら着陸をするという“世界で一番危ない空港”とも言われていたらしいんです。それを体験してみたかったですけどね(笑)。
画像3(C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
――現在、アジア映画が世界から注目を集めていると感じています。お二人にとっての“アジア映画の印象”を教えてください。
鈴木:アジア映画、アジア人の俳優やクリエイターも含め、年々注目度が上がってきていると思います。このようなイベントで、アジアの映画製作者や俳優たちが集まり、皆で話し合ったり、情報交換をしたり、賞を競い合う。そういう形でお互いに影響を与えていける場があるということが有難いなと思います。僕もたくさん色んな方々と話してみたいなと思っています。
宮沢:自分はアメリカ生まれなのですが、子どもの頃、アジア映画というものが映画館であまりやっていなかったんです。でも近年では「ドライブ・マイ・カー」「ミナリ」「パラサイト 半地下の家族」などが世界で評価されている。それをアジア人として誇りに思います。今はハリウッドだけの時代ではありませんし、世界中で素晴らしい作品がどんどん生まれている。これは映画界にとって素晴らしいことだと思っています。
画像4(C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
――最近面白かったアジア映画はございますか?
鈴木:「別れる決心」は感激しました。撮り方がとても美しいですし、ストーリーテリングの手法もワクワクさせられるもの。コミュニケーションというテーマに関しても、非常に共感できる部分がありました。主演のお2人の演技はもちろんですが、映画全体の完成度が成熟しているなということに感動しました。
宮沢:「これぞエンタメ!」だと感じたのは「RRR」です。3時間を超える長尺の映画ですが、純粋にエンタテインメントとして楽しめた作品です。久しぶりに映画館で“爆笑の嵐”に巻き込まれて……。
鈴木:まぁ、爆笑するようには作ってないんだけどね(笑)。
宮沢:そうなんですよね(笑)。Bunkamuraの映画館で鑑賞していて、当時は満席でした。エンドロールが終わって、劇場の照明がついた瞬間、誰もが隣の人と話が盛り上がっていました。その光景を目の当たりにして「これぞ映画。これがエンタテインメントなんだな」と感じたんです。
画像5(C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
――「エゴイスト」は、第35回東京国際映画祭でもいち早く披露され、その当時も話題を呼んでいました。その後、日本国内での劇場公開を経て、海外でも反響を呼んでいるという形になりました。
宮沢:この映画を撮っている時、そして撮り終えた今でも感じていることがあります。それは日本国内だけでなく、この作品はおそらく国境を超えて色んな方々に楽しんでいただけるものになるのだろうということ。確信といいますか……そうあってほしいという願望もありました。公開前、映画祭で紹介していただき、さまざまなところで評判が良いと聞いていました。映画に携わる者としては、その国(=製作国)の方々に楽しんでもらうというものだけではなく「違う文化圏の方々、バックグラウンドが異なる人に楽しんでもらえるようなものを作りたい」とずっと思っていたんです。それが現実となったので、とても嬉しいんです。
鈴木:撮影時は「海外に向けて作る」「日本に向けて作る」といったことは全く考えていませんでした。結果として、僕たちが作ったものが、日本だけでなく、他の文化圏の方にも愛されているというのはとても嬉しいです。同性愛のカップルを描いているという点が話題になりがちですが、そこだけではなく、同性愛者であるからこそ描ける深い愛、親子の愛、アイデンティティなど、見て下さった方がそれぞれに感じられるものを描いています。そこをお客様の感性に委ね、お客様を信じて余白を残すという松永監督の作り方が、たくさんの国の方々に楽しんでもらえる、受け入れてもらえている、ひとつの理由になったのではないかなと思っています。
画像6(C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
――本作の重要なポイントは“距離”というものだと考えています。お2人が演じた浩輔と龍太の距離、そしてキャストとカメラの距離、スクリーンで描かれる世界と観客たちとの距離も印象的です。
鈴木:“距離”というものは確かに近かったね。
宮沢:近かったですね。
鈴木:僕らは恋人同士という役柄ですから、もちろん距離は近いんですが、カメラとの距離も近かった。でも、それがまったく気にならないくらいの空気感をつくってくださった。リハーサルの時からカメラマンがカメラを回してくれていたり。スタッフの皆さんは、僕たちがリラックスした環境で演技ができるという方向に、一丸となって向かってくれていました。それがあったからこその“距離感”。映画館で観た時に吐息さえ感じる……そう信じ込めるような作りになったのかなと思います。
宮沢:クランクイン前にリハーサルを行うというのは、初めての経験でした。松永監督をはじめ、カメラマンの池田(直矢)さん、亮平さん、阿川(佐和子)さんとの関係性を少しずつ構築していきました。ベストの状態で初日を迎えられるように調整してくださったんです。これはすごくプラスになりました。この作品を通じて、撮影前のリハーサルであったり、ワークショップというものが、もっと普及していってもいいのではないだろうかと感じました。
画像7(C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
画像8(C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
――最後に、日本映画に対する思いについて、お聞かせください。
鈴木:僕なんかが偉そうに言えることではないんですが、自分なりに考えていることがあります。日本のお客様の好みといいますか……映画を見る時に何を楽しみにしているのかという部分は、他の国と比べて違う進化を遂げているように見えます。独特の感性があると思っているんです。今、何が起きているのかというと、日本国内でヒットさせるために作るもの、海外に受け入れられるために作るもの、これがはっきりとわかれているような状態になっていますよね。そこをなんとかしたいんです。「エゴイスト」もその試みのひとつなんです。海外のお客様にも楽しんでもらいながら、日本でも興行的な成績を残しつつ、よりたくさんの人に楽しんでもらう。そういう作り方を、俳優も意識的にやっていかないといけないなと。それが個人的な課題でもあります。
宮沢:難しい課題ですよね。日本国内だけで満足し、上手く回っていればいいのではないかという考えが、やはりまだどこかにあるような気がしているんです。それは映画だけでなく、何かを生産・消費する場合も、国内というすごく狭い所を見ているような気がしています。国内で何かを残すというのは前提にあるとは思いますが、ここ数年で各国と連携やコミュニケーションをとれるようになったからこそ、広い視野を持ち、どんどんと日本映画が拡散していって欲しいなと思っています。

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