架空の村での性被害、未来をかけた“話し合い”を描く「ウーマン・トーキング」あらすじ・キャスト・トリビア
2023年3月11日 18:00
3月12日(現地時間:日本時間は13日)に開催される第95回アカデミー賞授賞式。作品賞にノミネートを果たした「ウーマン・トーキング 私たちの選択」(日本公開:6月2日)は、脚色賞の候補にもあがっています。
映画.comでは、同作の概要&あらすじ、キャスト、トリビアをまとめました。本記事でしっかりと予習を行ってから、興奮必至の授賞式に臨みましょう!
[概要&あらすじ]
[評価]
[スタッフ&キャスト]
[トリビア1:サラ・ポーリーが原作から感じたこと]
[トリビア2:オスカー俳優が驚いた監督のビジョン]
[トリビア3:ストーリーの中心“納屋”について]
女性たちがレイプ事件の裏にあった真実を知る、2005年~09年にボリビアで起きた実際の事件をもとにした物語。「死ぬまでにしたい10のこと」などで女優として活躍し、06 年に「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」で監督、脚本家としてデビューしたサラ・ポーリーが、ミリアム・トウズの同名ベストセラー小説を映画化した。
2010年、自給自足で生活するキリスト教一派の村で、女性たちがレイプされる事件が連続する。女性たちは、事件を「悪魔の仕業」「作り話」だと男性たちから否定されていたが、やがてそれが、紛れもない犯罪であることを知る。男性たちが街へと出かけている2日間、彼女たちは自らの未来をかけた話し合いをする。
・ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞/アンサンブルキャスト賞
・第43回ボストン映画批評家協会賞/アンサンブル演技賞
・第35回シカゴ映画批評家協会賞/脚色賞
・第28回クリティックス・チョイス・アワード/脚色賞
・WGA賞(2023年)/脚色賞
監督・脚本:サラ・ポーリー
製作:デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー、フランシス・マクドーマンド
製作総指揮:ブラッド・ピット、リン・ルチベッロ=ブランカテッラ、エミリー・ジェイド・フォーリー
原作:ミリアム・トウズ
撮影:リュック・モンテペリエ
音楽:ヒドゥル・グドナドッティル
美術:ピーター・コスコ
衣装デザイン:キータ・アルフレッド
編集:クリストファー・ドナルドソン
ルーニー・マーラ(オーナ・フリーセン)
クレア・フォイ(サロメ・フリーセン)
ジェシー・バックリー(マリチェ・ローウェン)
ジュディス・アイビ(アガタ・フリーセン)
シーラ・マッカーシー(グレタ・ローウェン)
ミッチェル・マクレオド(メジャル・ローウェン)
ケイト・ハレット(オーチェ・ローウェン)
リブ・マクニール(ネルチェ・フリーセン)
オーガスト・ウィンター(ネッティ/メルヴィン)
ベン・ウィショー(オーガスト・エップ)
フランシス・マクドーマンド(スカーフェイス・ヤンツ)
監督を務めたサラ・ポーリーは、カナダ出身。家族の仕事の関係で幼少期からショービジネスの世界に親しみ、4歳から子役として活動。TV映画「丘の家のジェーン」で注目を集め、ドラマシリーズ「アボンリーへの道」に主演。若くしてカナダを代表する俳優と目されるようになった。アトム・エゴヤン監督作「スウィート ヒアアフター」の助演を経て、イザベル・コイシェ監督作「死ぬまでにしたい10のこと」に主演。同監督とは続く「あなたになら言える秘密のこと」(05)でもタッグを組んだ。
アリス・マンローの短編小説を自ら脚色した長編初監督作「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」でアカデミー脚色賞の候補となり、以降は軸足を監督業に移す。「テイク・ディス・ワルツ」、ドキュメンタリー「物語る私たち」などを手掛け、「ウーマン・トーキング 私たちの選択」へと至った。
本作品の出来事の背景には“女性たちが経験した暴力”が存在する。劇中では、暴力に見舞われた彼女たちが「短い時間の間に集団としてどんな対応を取るべきか決断を迫られる様子」が描かれていく。ポーリー監督は、原作を読んだ際に「今まで明確に表現できなかった、私たちが住む世界についての疑問や考えが浮かんだのです。許し、信仰、権力の構造、トラウマ、癒やし、過失、コミュニティー、そして自己の決断といったことに対する疑問です。そして読後感は戸惑うほど希望に満ちたものでした」と振り返っている。
ポーリー監督が創出した寓話の世界は、小さな宗教コミュニティーが舞台となっている。
「作品に提示される疑問を普遍的なものとして感じてもらえる物語とするためには、大きなキャンバスに広い視野で描くことが必要だと感じたのです。そのため、作品の視覚的言語をより広げることが不可欠だと感じました。壊れた世界をいかに立て直すかという話し合いが持つ終わりのない潜在的な力と可能性を、全てのフレームで感じたかったのです」
原作は2018年に出版され、NEW YORK TIMESブックレビュー誌の年間最優秀書籍に選ばれたベストセラー小説「WOMEN TALKING」。本作の製作は、フランシス・マクドーマンドが原作のオプション権を獲得したところから始まった。
マクドーマンドは読むだけでは満足せず“深堀りしたくなる小説だった”と話し、「私たちは異なるジェンダー間で認め合い和解することが求められる混乱した時代にいます。トウズがこの小説で描いたテーマを検証することは時代にふさわしく、やりがいがあり、真剣なことであり、爽快でおもしろいと思いました」と語っている。これまでに「ノマドランド」などでプロデューサーとしてもアカデミー賞を獲得してきたマクドーマンド。そんな彼女は、ポーリー監督の本作に対するビジョンに一番驚いたと称賛している。
「私は至近距離から撮ったような素朴な作品を想像していたのですが、サラは最初から『これは叙事詩的な大作に仕上げたい。そろそろ女性の物語をスケール感たっぷりに描いても良いはず。撮影も華麗に壮大にシネマティックに撮るべき』と語っていました。そしてそれを撮影監督のリュック・モンペリエとともに見事に実現しています。必ずしも美しくなくとも、壮大に撮ることがこの作品の要であり、何よりもそういう壮大さを要するストーリーだったのです」
物語は“納屋での話し合い”を中心に展開していく。納屋に集まった女性たちは、閉ざされた空間で起きた恐ろしい出来事について、それぞれの意見を述べ合う。タイムリミットは「男たちが町から戻ってくるまでの間」。女性たちは生活を一変させる可能性のある決断について話し合うのだ。この場に残り男たちを許すのか。残ったうえで変化を求めて戦うのか。それとも、ここを去り新しい生活を始めるのか……。
撮影用にいくつか変更を加えた納屋の干し草置き場のセットがスタジオに作られ、そこで女性たちが話し合っている主なシーンが撮影されている。屋外のシーンと追加の室内シーンの撮影は、トロントから車で1時間ほどの農場で行われている。
屋根裏の干し草置き場をメインの舞台に据えたことで、女性たちを天国と地上の間に置くという詩的なイメージと合致。信仰と現実生活での不安の間で揺れる女性たちの葛藤が反映されている。干し草置き場はスタジオ内の床から約2.5メートルの位置に作られ、納屋の屋根の高さは7メートル近くに達した。俳優たちは毎日そこへ上ることに。現実にも比喩的にも、実際の納屋の様子や高い所にいる雰囲気が映し出されている。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。