グザビエ・ドラン、初のTVドラマで「私の全てを語り尽くしてしまった」 貴重なディレクターズ・ノート入手
2023年2月23日 10:00
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「Mommy マミー」のグザビエ・ドランがテレビドラマに初挑戦した「ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと」が、2月24日より「スターチャンネルEX」で独占日本初配信される(「BS10 スターチャンネル」では、3月6日より放送)。このほど、ドラン監督が製作秘話を語った貴重なディレクターズ・ノートの内容、グラフィックデザイナー・大島依提亜が手掛けた日本版キーアートを入手した。
カナダ・ケベック州出身のドランは、19歳で発表した長編デビュー作「マイ・マザー」がカンヌ国際映画祭監督週間で上映されて以来、「胸騒ぎの恋人」「わたしはロランス」も同映画祭で上映。「Mommy マミー」で審査員賞、「たかが世界の終わり」でグランプリを受賞するなど同映画祭から高い評価を受けているため“カンヌの申し子”の異名を持っている。
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「ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと」が、同名舞台が原作。ドラン自身が脚本・監督・製作・出演を務め、30年前に起きた事件とそれにかき乱される家族の姿を、過去と未来を行き来しながらサスペンスフルに描き出している。
ディレクターズ・ノートでは、これまで「母と息子の親子関係」「家族間の確執」「疎外された人々」といったテーマを中心に物語を描いてきたドラン監督が、10年の月日を経て心境に変化があったことを語っている。子どもの頃からホラーやスリラーといったジャンル映画に夢中になりながらも、新人時代はなかなか踏み出せなかったと明かしつつ、2011年に、ミシェル・マルク・ブシャールの舞台「トム・アット・ザ・ファーム」を観て、ジャンル作品の映像化に踏み切った。そして、2019年、再び導かれたように、本作の原案となったブシャールの同名舞台に大きな衝撃を受け、本作の映像化を確信したようだ。
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ドラン監督は、フランスのメディアに対して「私は、映画よりもテレビの方が好きなんだと思います。テレビシリーズを作る事の方が自分にとっては自然だと言ってもいいくらいです。時間をかけてシナリオを構築していくのは、とてもシンプルで気持ちのいいものでした。もしそうだとしたら、私は映画の監督というより、ショーランナーですね」(仏映画誌/Premiere)とテレビシリーズとの親和性を率直に語っている。
その一方で「『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』は私にとって誇りです。ただ、今は同時に空虚さも感じています。この作品に全身全霊を捧げ、そしてついに私の全てを語り尽くしてしまったんです。だから今の私にとって必要なのは、長い休みと変化、それに静寂や休息、プライバシーだと思っています」(仏国営ラジオ/France Inter)といった発言も。「友人や家族との親密な時間を過ごしたいです」(Premiere)と心情を吐露している。
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「ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと」(全5話)は、Amazon Prime Video「スターチャンネルEX DRAMA & CLASSICS」にて、2月24日より独占日本初配信開始(毎週金曜1話ずつ更新)。「BS10 スターチャンネル」では、3月6日より、毎週月曜23時ほか放送(3月5日21時より字幕版第1話先行無料放送)。
ディレクターズ・ノートの全文は以下の通り。
私はずっとジャンル作品が大好きでしたが、これまではどちらかといえば母親と息子の親子関係、家族間の確執、疎外された人々といったテーマを中心にしてきました。人は自分が知っていることを描くものだと言われますが、10年の月日を経て、私自身も変わっていくのを感じていました。
ですから、性的暴行を受けたひとりの少女が30数年後に家族のもとを訪れる姿を描いたミシェル・マルク・ブシャールの舞台「La nuit ou Laurier Gaudreault s’est reveille(原題)」を観劇した時、まさに自分のやりたいことが目の前に繰り広げられていると思いました。ミステリーとホラーが融合した家族ドラマを観ながら、1時間もたたないうちに私はすでにこの物語のシリーズ化をイメージしていたのです――舞台で描かれているすべてのエピソードや過去と現在の結びつけ方をスクリーンでどう描けばいいのか思い描いていたのです。さらに結末に大きな衝撃を受け、自分の次回作にこの作品以外は考えられないと確信したのです。
子供の頃に観ていたティーンドラマや初めてひとり暮らしをしたアパートで貪るように見ていた数々の映画の中でも、ホラーやスリラーはいつも私を夢中にさせてくれました。折に触れて自分も思い切って挑戦してみようかと思いましたが、当時の自分はまだ一歩踏み出す自信を持てずにいました。
しかし2011年、喪失の悲しみを機に出口の見えない世界に身を置くことになった青年のサイコセクシャルとストックホルム症候群を描いたブシャールの別の舞台「トム・アット・ザ・ファーム」を観て――私はついに舞台作品の映像化を決意しました。この舞台作品がまだ新人の私の挑戦を後押ししてくれたのです。まさにジャンル作品との出会いが私の人生を決める瞬間になりました。これ以後、私は再び映像化の機会を模索し続けていました。そのためミシェル・マルクの別の舞台作品を手掛けるというのは当然の流れのように思えました。
『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』はホラーとスリラーの要素が強く出ているように見えますが、ヒューマンドラマも描かれています。ラルーシュ家の幸せだった日々、憂鬱な日々、過去のいくつもの過ち、彼らの行く末を決めることになった数々の出来事が綴られています。登場人物たちがこれまで頑なに守ってきた秘密が暴かれることによって、闇に包まれていた悪夢も蘇ります。それは夜見る夢などではなく、彼らの心の傷をえぐり出し、たとえ明るい日差しの中にいても容赦なく付きまとう悪夢なのです。
このドラマには、人間の暴力性のほかに、逆境、恥、憎しみなどに直面した時、それらに屈したことで受けた惨い扱いなどが描かれています。しかし大部分に描かれているのは、我々もかつては子供だったこと、そして、惨い扱いに直面しどんな大人になったのかということです。そこには真実から目を背けるために受け入れてしまった歪んだ依存心、嘘、誤った信念などが描かれているのです。
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