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【インタビュー】佐藤信介監督が語る「今際の国のアリス」S2 山下智久出演の裏話も「あの肉体はCGじゃない」

2022年12月22日 14:00

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佐藤信介監督
佐藤信介監督

山崎賢人(崎はたつさきが正式表記)と土屋太鳳が主演を務めるNetflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン2が、12月22日から全世界独占配信される。シーズン1に続いてメガホンをとったのは、「アイアムアヒーロー」「キングダム」シリーズのほか、実写映画版「僕のヒーローアカデミア」の監督も務める佐藤信介。シーズン1からさらにパワーアップした本作について、佐藤監督に話を聞いた。

画像2(C)麻生羽呂・小学館/ROBOT

2020年12月にNetflixで配信されたシーズン1は、生きる意味を見失っていたアリス(山崎)とウサギ(土屋)たちが謎の世界“今際の国”で、生死を懸けた“げぇむ”に挑むさまを描き、世界70カ国以上でTOP10入りを果たした。

元の世界に帰るために“今際の国”の謎を追いかけるアリスとウサギは、謎を解き明かす鍵と思われる場所で仲間と敵、そして“げぇむ”を操る黒幕と出会う。“げぇむ”に勝利する度に手に入るトランプの数字のカードをすべて集め、残るはジャック、クイーン、キングの絵札のカードのみ。前作を上回る難易度とスケールの“げぇむ”に挑む。

山崎、土屋に加えて、村上虹郎三吉彩花桜田通朝比奈彩渡辺佑太朗阿部力青柳翔仲里依紗がシーズン1から続投。そのほか、山下智久恒松祐里磯村勇斗井之脇海、毎熊克哉さとうほなみらが新たに参加している。

画像3(C)麻生羽呂・小学館/ROBOT
――シーズン1は2020年12月10日に配信され、12月24日にはシーズン2の制作が発表されました。具体的にシーズン2が動き出したのはいつ頃ですか?

シーズン1が完成した何カ月か後のことだったと思います。ただ、シーズン1の脚本を書いているときから、原作の後半はシーズン2で描きたいと思っていたので、よほどのことがなければシーズン2もやろうと思っていました。実際にシーズン1を撮影してみて、みんなも手応えを感じていたし、配信後大きな成果も残せたので、シーズン2もやろうということになりました。

――前作は「世界配信を念頭に置き、制作する」とコメントを出されていました。シーズン2はどういうところを意識しましたか?

今回も脚本を書いているときからどういう人たちに見てもらえるかを考えています。日本だけではなく世界中の人に見てもらうので、日本について良く知らない人にも楽しんでもらえるように作り始めました。実際にシーズン1が配信されてから、ネット上での反響がすごくありました。僕がとある外部サイトの順位を見たときは、世界ランキング5位にも入っていて。見た人はどんな反応をしているんだろうと気になって、TwitterやInstagram、YouTubeなどのSNSを探ってみたのですが、秒単位で誰かがコメントをしていました。世界中に配信されているので、世界のどこかで誰かが今見ているんだなと実感しました。

そのうち、キャラクターのイラストを描いてアップしている方も出てきて驚きました。アニメ作品や、僕が以前監督した「BLEACH」のようなファンタジックなキャラクター押しの作品だとこういった現象もあると思いますが、ここまでキャラクター愛が生まれることは予想していなかったので、デスゲームを扱った作品で、しかも生身の人間の話でこういう現象になるのは面白いなと思いました。

画像4
――“世界配信”される作品というのは、作り手の方々にとってどんなメリットがありますか?

世界配信されるということを念頭に置くとマーケットが広がるので、今までと比べて、より大きな予算をかけることができました。テレビだと放送コードもありますが、配信だとわりと自由な発想で作らせてもらえるということもすごくありがたかったです。

私の映画も、海外の映画祭に出すなど何らかの方法で国外の方々に見てもらえることはありますが、Netflixで世界同時配信されると、「家族で見ている」と声をかけていただいたりして、多くの一般の方々に、普通の日常的な娯楽として楽しんでもらえていたことがとても嬉しかったです。業界内の方ともまずはそこから話が始まります。ただ単純に楽しんで見てもらえていたことがすごく嬉しかったです。この灯を消さないように活動していきたいです。

画像5(C)麻生羽呂・小学館/ROBOT
――シーズン2では山下智久さんが、アリスに大きな影響を与えるクラブのキング・キューマを演じています。ビジュアルも勇気のいる役だと思いますが、起用の決め手は?

プロデューサーとキューマについて話しているとき、ある時、山下さんの名前が上がったんです。山下さんが演じてくれたらすごいけれど、そんなすごいことが起きるのかなと、ちょっと信じられない気持ちでした(笑)。キューマは“普通の人ではない”部分を感じさせるキャラクターです。山下さんに演じていただけるなら、山下さんの持っているカリスマ性や耽美的な部分を加味したいという思いが沸々と湧き上がってきて、山下さんならではのキューマを考え始めました。

画像6(C)麻生羽呂・小学館/ROBOT

実際に山下さんに会う前に、本当にやっていただけますかっていう確認をしたのですが、「喜んでやりたいです」とおっしゃっていただいた。劇中のキューマのあの特別な姿についても、全然問題じゃない、ぜひ、と言っていただけて、勇気づけられました。僕らも山下さんが出ることはなるべく業界内で知られたくないという思いがあって、隠密で衣装合わせなどをしました。

撮影では山下さんならではのキューマ像を作り上げてくださって、キューマになるための身体作りもしっかりしてくださった。本当にすごかったです。もとからいい感じだったのに、完璧主義なのか「もっとやれます」っておっしゃっていただいた。あの肉体はもちろんCGじゃないですが、まるでCGのように完璧です(笑)。山下さんが参加される前に考えていたキューマ像を、遥かに超えたキューマになったと思います。

――谷田歩さんが演じたスペードのキングもとても印象に残りました。アリスたちを追いかけるさまが本当に怖かったです。

スペードのキングについては、風貌と佇まい、雰囲気を特に重視してキャスティングしました。谷田さんが演じることになってからいろいろ作りこんでいったのですが、最後にスキンヘッドにしようと決まりました。ほかのお仕事もあるのにスキンヘッドにしてくださって、その姿を見たときにスペードのキングが完成したなと思いました。スキンヘッドで、イメージが一気に飛躍し、完成しました。本人的にも役に入りやすかったようで、劇中は本当に異様な表情でしたよね。普段のご本人はすごく優しい方ですが、スペードのキングを演じているときの谷田さんは、みんなから、怖い!と恐れられていました(笑)。

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――前回より“げぇむ”の内容もスケールアップしています。撮影で特に苦労した“げぇむ”はありますか?

キューマの “げぇむ” 「すうとり」の撮影はとにかく暑かったので、よく覚えています。アスファルトが焼けているなか素足で歩かないといけないので、細かく養生テープを貼ったり、地面を冷やしたり。キューマの恰好的に暑い日に撮らないといけないシーンだったので、夏のいい日を狙って撮影したのですが、それでみんな暑さに参っていましたね。

山本千尋さんが演じたスペードのクイーンの“げぇむ” 「ちぇっくめいと」は、実は北九州の火力発電所で撮っているんです。四六時中タービンが回っていて、それを止めるわけにもいかない。セリフがなかなか聞き取れないなかでのお芝居でした。セリフの終わりを、相手の役者にわからせるため、スタッフが手振りで合図を送ったり、あるいは山崎さんに分からないようにインカムをしてもらって、土屋さんの声が聞こえるようにしてもらったり、役者のお芝居的にはかなり大変でした。「ちぇっくめいと」は原作にはないオリジナルの“げぇむ”なのですが、ロケ地にあわせて内容を考えていきました。二酸化炭素が出にくい火力発電所らしく、そういう場所があることを知っていただきたいという思いもあり、今回ロケ地として貸していただくことができました。

――最後に、もうすぐ2022年が終わります。佐藤監督が今年見て面白かった映画を教えてください。

古い作品になってしまうのですが、シネマヴェーラ渋谷で開催されたジョン・フォード監督の特集(「蓮實重彦セレクション 二十一世紀のジョン・フォード」)を40本近く見に行きました。ものすごく忙しかったです(笑)。ちょうど「今際の国のアリス」の撮影が終わって、運よく見に行けることになったので、打ち合わせの合間に通いました。昔からフォードは折々見ていて、でもまとめて見る機会がなかったので、ここで見てみようと思ったのですが、やっぱり素晴らしかったです。映画って発展しているようでここで止まっているのかもしれないと。また、まとめて見たことでいろんなことに気付かされました。

僕は誕生日が9月16日で、たまたまその日は「駅馬車(1939)」の上映日でした。今まで何度も見てきた作品でしたが、誕生日だしと思って見に行ったら、やっぱり流れで見てるおかげか、いろんな新たなことに改めて気付かされ。また、その映像、スタイル、人物、全てに改めて感動しなおし、誕生日ということもあってか、しまいには号泣しちゃって(笑)。その日を境にマイベスト映画を「駅馬車(1939)」に更新しました。

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