天才作家vs東大生、戦後最後の沖縄県知事、米軍が恐れた沖縄のヒーロー。今すぐ家で見れるドキュメンタリー3選
2022年11月26日 14:00
「TBS DOCS ニュースの真実に迫る映画祭」が11月30日まで、オンライン配信プラットフォーム「シネマ映画.com」で開催されている。配信6作品をピックアップし、映画.comの駒井尚文編集長に加え、編集部&スタッフがそれぞれの視点から配信作品の見どころやポイントなどを紹介する。(全2回)
「TBS DOCS ニュースの真実に迫る映画祭」(https://cinema.eiga.com/tbsdocs/)は、「テレビでは伝えきれない、真実や生き様をドキュメンタリー映画として発信する」というプロジェクトのもと、オンライン開催。「TBS DOCS」とは、1955年の開局以来、日々のニュースやドキュメンタリー番組を放送してきたTBSが立ち上げたドキュメンタリー映画の新ブランドで、DOCSとは“DOCUMENTARY FILMS”のこと。今年3月に開催された「TBSドキュメンタリー映画祭2022」で上映された作品の中から、映画祭でしか公開されなかった貴重なドキュメンタリーを含む6作品を配信している。
三島由紀夫が割腹自殺したとき、私は小学生でしたから、現役時代の三島に関する記憶はまったくありません。しかし、割腹自殺はもの凄い衝撃を世間にもたらし、新聞、テレビなど各メディアは大騒ぎになったのを覚えています。
私はこの映画で初めて、動く三島、喋る三島をちゃんと見ました。その姿は新鮮ですが、一方、相当にレトロでもあります。「論壇」とか「言霊」とか、今のネットメディアには登場しなくなった単語が頻出で、「そんな時代もあったのね」と不思議な感慨が湧いてきます。
それにしても、三島由紀夫も東大生もガチで討論していますけど、正直、今見るとアツいしウザい。画面からは、もの凄い熱量のエネルギーが伝わってきます。「安保」って何? 「民青」って何? 「革命」って何? 50年で時代はこんなに変わるんですね。戦後昭和の重要なキーワードに遭遇できる貴重な映画だと思います。若い世代が、この映画を見てどんな感想を持つのか、とても気になります。
“ありったけの地獄を集めた”と称された1945年・沖縄戦。「俺は死にとうないから誰かが行って死んでくれとは、よう言わん」。家族からの承諾も得ず、死を覚悟して、沖縄県知事に着任した島田叡(しまだ・あきら)。本作ではわずか5カ月の在任期間で、彼が何を成し得、そして何を成し得なかったのかという点を、語りと数々の証言で浮き彫りにしている。
注目すべきは、その身に宿した「矛盾」。周囲の人々には生き長らえることを是と説きながらも、自らは死に近づいていく。時代と国家に忠実な官僚としての姿と、不遇の県民に寄り添い続ける人間らしい姿。島田の映像、音声は存在していない。しかし、沖縄戦の証言者たちの“生々しい言葉”を通じて、「美徳(=自決・玉砕)」に抗うことの苦悩、二律背反に陥ったことで生じる心の揺らぎがまざまざと伝わってくるはずだ。
こんなにも強い志を持った政治家が日本にいたことを改めて知り、その活動によって今の沖縄、日本があることを思い知らされます。恨みをのんで殺された仲間たちの魂に報いるために、沖縄への揺るぎない思いを持った政治家の激動の戦いと、そんな中でも家族を大切にした一人の男の記録です。戦後、占領下の沖縄でアメリカ軍の圧政に立ち向かった政治家・瀬長亀次郎の生き様に胸を打たれることでしょう。
沖縄の本土復帰を訴える彼の演説と人柄は民衆を鼓舞し熱狂させ、その人気と意志を恐れたアメリカ軍は様々な策略を巡らせ執拗にカメジローを弾圧。理不尽な理由で逮捕・投獄され、旅券申請拒否、被選挙権を奪われて、身の危険も感じたであろうに、それでもなお恐れずに不屈の精神で戦い、那覇市長から、衆議院議員を務めるまでに至ります。
そして1971年12月4日の衆議院沖縄・北方問題特別委員会で、アメリカン軍の基地を沖縄に残したままの返還であってはならない、再び戦場の地となることを拒否するという、当時の首相・佐藤栄作と繰り広げた激論の記録映像は必見です。佐藤首相に敬意を示しながらの熱弁は、本来あるべき政治家のあり方を示しています。現代へと続く沖縄の解決されない問題が浮き彫りとなり、沖縄に強烈な自治意識を残したカメジローの人生から、日本人としての生き方を考えさせられる作品です。
なお、作品ごとにチケットを購入し、PCやスマートフォンで鑑賞できるが、「石破茂・嫌われた正論 10人の証言」「完黙 中村喜四郎~逮捕と選挙」「池袋母子死亡事故 『約束』から3年」を特別価格の1500円で3本セット販売(通常料金1650円)している。
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