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「あちらにいる鬼」新場面写真&実際の人物たちの3ショット 娘であり作家井上荒野が語る父と母、そして瀬戸内寂聴の唯一無二の関係

2022年10月15日 12:00

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「全身小説家」から実際の3人(上)と「あちらにいる鬼」新場面写真
「全身小説家」から実際の3人(上)と「あちらにいる鬼」新場面写真
(C)疾走プロダクション (C)2022「あちらにいる鬼」製作委員会

直木賞作家・井上荒野による、父である作家・井上光晴と母、そして瀬戸内寂聴をモデルに男女3人の特別な関係を描いた同名傑作小説を、主演・寺島しのぶ豊川悦司、共演に広末涼子を迎え、廣木隆一監督・荒井晴彦脚本で映画化した「あちらにいる鬼」の新場面写真が公開された。

昨年11月、満99歳で波乱の人生を全うした作家・僧侶の瀬戸内寂聴。1960年代から人気作家・瀬戸内晴美として活躍した彼女が出家した背景には、同業者で妻子ある井上光晴との恋があった。出会うべくして出会い、互いにのめり込んでいくふたりと、全てを承知しながら心を乱すことのない男の妻。「あちらにいる鬼」は、同志にも共犯にも似た不思議な3人の関係を、光晴の長女、井上荒野が書き上げたセンセーショナルな物語だ。

映画では、寂聴をモデルにした人気作家・長内みはる(寂光)を寺島が演じ、実際に剃髪して臨んだ。井上光晴をモデルとした白木篤郎を豊川、白木の妻・笙子を広末が演じているほか、高良健吾村上淳蓮佛美沙子佐野岳らが共演している。

原作発売当時、寂聴が帯に寄せたセンセーショナルなコメント「作者の父 井上光晴と、私の不倫が始まった時、作者は五歳だった。」が世間の注目を集めた。生前の寂聴と交流があった著者は、何故自分の両親と寂聴の物語を書こうと思ったのかこう答えている。(朝日新聞の本の情報サイト「好書好日」2019年2月8日公開より)

「江國香織さんや角田光代さん、うちの夫や編集者と一緒に京都の寂庵を訪ねました。最初は寂庵でみんなで喋って、食事も一緒にして、最後は祇園のお茶屋さんまで行ったんですが、寂聴さんはその間ずっと、うちの父のことをお話しになるんですよ。私へのサービスもあったのでしょうけれど、ああ、父のことが本当に好きだったんだなって思いました。父との恋愛をなかったことにしたくないんだろうなって。そこにぐっときちゃったんですよね。それで、すごく書きたい気持ちになりました。書いて、寂聴さんに読んでもらいたいな、って。そこから本格的な準備に取り掛かっていきました」

このほど公開された場面写真には、既に長い髪を剃り落とし、法衣に身を包んだみはる(寂光)が、かつての恋人であった白木篤郎の自宅に訪れ彼の家族と共に食卓を囲むシーンが写し出されている。篤郎の妻・笙子の手料理に舌鼓を打つ寂光だが、彼女の隣に座っている少女が、若かりし日の原作者をモデルにした白木家の長女の姿だ。

そして、その特別な関係性が垣間見られる実際の3人の写真も存在する。微笑みながら並んで歩く瀬戸内寂聴井上光晴、そしてその少し後ろを追いかける形で光晴の妻・郁子が写っている。これは、原一男監督が井上光晴の“虚構と現実”を、癌により死に至るまでの5年間を追い描いたドキュメンタリー「全身小説家」の一場面。第68回キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画第1位を、第49回毎日映画コンクールでは日本映画大賞を受賞するなど、国内の主要な映画賞を独占した作品だ。

「一般的には夫に愛人ができたら、相手の女を憎むのが普通だと思われているけれど、普通なんてどこにもないんですよね。どういうふうに思い、どういう態度で処するかは、人の数だけ違うんだなと思います。もともと母は、父の他の女の人のことを私たちの前で悪く言ったことはないんです。きっと、怒るとしたら父に対してであって、寂聴さんに対してはむしろ、どうしようもない男を愛した者同士としてのシンパシーがあったのかなと思います。寂聴さんのことはむしろ好きだったんじゃないかな」と、当時渦中にいた井上荒野は振り返っている。

あちらにいる鬼」は、11月11日から全国公開。R15指定。


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