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あちらにいる鬼 : 特集

2022年10月31日更新

【これは男女3人の“魂の結びつき”の物語】
ラストシーンで愛の底力を知ったとき、
きっとあなたの心が“泣けてしまう”

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妻子ある男を愛してしまった。だがそこに修羅場は起こらない。生じるのは絆と連帯。男女を超えた“魂の結びつき”の始まりだった――。

11月11日から全国公開される映画「あちらにいる鬼」は、容易な理解を拒みつつも、類まれな美しさと驚異的な力強さをもって、観る者を圧倒する“感動作”である。

瀬戸内寂聴と作家・井上光晴、その妻の三角関係をモデルに描いたセンセーショナルな傑作小説が原作。映画のラストに示される“愛の底力”を知ったとき、きっとあなたの心は揺れ動き、積み重ねてきた感情が一気に開放され、最後には“泣けてしまう”だろう。

この記事では、本作の見どころ解説と、試写で鑑賞した観客の「共感した」などのコメント、そして現実とのドラマチックな“つながり”について記述していく。ぜひとも映画館で鑑賞し、胸に宿る一筋縄ではいかない情動を確かめてほしいと思う。


【予告編】愛という言葉を持ち出せば、すべてが許されるのだろうか。

【物語と解説】瀬戸内寂聴らがモデルの人間ドラマ
傑作小説が待望の映画化、驚がくの“愛の形”を描く

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原作は作家・井上荒野による同名小説。

荒野が自身の両親である作家・井上光晴と妻・郁子、そして瀬戸内寂聴の三角関係をモデルに、登場人物の名前や状況にフィクションを交え描出。その衝撃的な愛の形は日本中に大反響を巻き起こした。

刊行当時、件の瀬戸内寂聴が同書の帯に「作者の父井上光晴と、私の不倫が始まった時、作者は五歳だった」と寄稿したことでも知られている。


[あらすじ]妻子ある“作家の男”を愛してしまった――
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「髪を洗ってやるよ」。それは、男と女でいられる最後の夜のことだった。

1966年、講演旅行をきっかけに出会った長内みはる(寺島しのぶ)と白木篤郎(豊川悦司)は、それぞれに妻子やパートナーがありながら男女の仲となる。

もうすぐ第二子が誕生するという時にもみはるの元へ通う篤郎だが、自宅では幼い娘を可愛がり、妻・笙子(広末涼子)の手料理を絶賛する。

奔放で嘘つきな篤郎にのめり込むみはる、全てを承知しながらも心乱すことのない笙子。

緊張をはらむ共犯とも連帯ともいうべき3人の関係性が生まれる中、みはるが突然、篤郎に告げた。

「わたし、出家しようと思うの」。


[テーマ]ただの色恋沙汰ではない…描かれるは、男女を超えた“魂の結びつき”
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たしかに本作は「妻子ある男が別の女性と愛し合う筋書き」ではあるが、従来のいわゆる“不倫もの”とはまた別のアプローチで、人間の営みにクローズアップしている。

関わる女性のほとんどを夢中にさせる白木。彼と逢瀬を重ね、深みにハマっていくみはる。そしてとうに夫の不貞は承知済みで、ときに入院する愛人のお見舞いにまで出かける妻・笙子。

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みはると笙子は幾度も顔を合わせる。有り体に言えば修羅場になるところを、興味深いことに彼女たちは“同じ男を愛した”という共通点から、同志のような連帯感を育んでいくのだ。

男女や論理や何もかもを超越した“魂の絆”としか言いようのない強い結びつき……。

なぜ、そのような関係がうまれるのだろうか? 物語は観客が抱える問いや疑問に“ある答え”を提示しながら、「昼顔」「浮雲」などかつての名作とはまた異なる、しかし重要なメッセージを投げかけていく。


[キャスト]寺島しのぶ×豊川悦司×広末涼子 監督は名匠・廣木隆一の豪華布陣
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キャストとスタッフも強烈な布陣だ。

主人公となる長内みはる(瀬戸内寂聴がモデル)役は、日本を代表する俳優・寺島しのぶ。自分の“女性性”の終焉を予感する一方で、白木との愛に溺れ、やがて出家へと続く人生を、静かな激情と豊かな知性をもって演じきった。なお、寺島は実際に髪の毛を剃り上げて役づくりに臨んでいる。

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そして白木(井上光晴がモデル)役は豊川悦司。妻子への愛を持ちながら他の女性とも寝る男の精神性を、抜群の魅力をもって表現した。

白木の妻・笙子(井上の妻・郁子がモデル)役には広末涼子。夫の女性関係に葛藤しながらも腹をくくっている、強さとも違う覚悟のような心境を、常にほほ笑みを湛えて体現している。

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監督は「ヴァイブレータ」「やわらかい生活」などの名手・廣木隆一。ときに耽美に、ときに詩的に、ときにエロティックに、そしてときに感動的に描出し、唯一無二の作品世界を形作った。


【観客の感想】試写会を実施、その反響は――?
人間模様に共感・感動「心に訴える傑作」

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では実際に鑑賞した観客は、どのように感じたのだろうか? 公開に先がけて実施した試写会での観客コメントをもとに浮き彫りにしてみよう。

多く上がった声は、「芝居の熱量」「気づけば涙していた」という感動や、そして「不思議と登場人物全員に共感していた」という感想だった。


●高い満足度…「実話に基づいているなんて信じられない」
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まずは作品全体の感想について。壮絶な三角関係をどう感じるかで評価がわかれそうだが、観客の多くがポジティブにとらえているようだ。

不倫という言葉では表現しきれない特殊な関係が見どころ」という評や、「心に訴えてくる傑作」という絶賛評も。感想の端々から、筆に力がこもっている様子が伝わってくる。

そのほか「こんなにも情熱的で本能の赴くままの人生があったとは」「三角関係が切ない人間物語に昇華されている名作。実話に基づいているなんて信じられない」など驚きの声も多く上がっており、予想を超える映画体験を堪能した様子がうかがえる。


●「熱演に心を奪われた」…圧巻の演技力に絶賛&圧倒の声多数
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寺島しのぶ、豊川悦司、広末涼子らの演技力にも称賛と圧倒の声が集まった。上述の高い満足度は、キャスト陣の熱演が観客の心を揺さぶった結果だとも言えそうだ。

あの3人だからこそ、普通では共感できない特殊な関係性の物語をまた見たいと思える作品にしている」という感想や、メインキャストだけでなく「バイプレーヤーも、ありえないと思うほど生々しかった」といった賛辞も。芝居のクオリティは一級品と言えそうだ。

また、具体的な場面では、寺島の剃髪シーンに特に注目が集まっていた。「剃髪のシーンは、静かに時が流れていた」「寺島しのぶさんの実際に剃髪をした体当たりの熱演に心を奪われました」。それまでの“人生”を精算する――そんな儀式で、みはるが何を思うのか。寺島が表情の細部で、得も言われぬ感情を表現しきる見事な場面だ。


●「不思議と全員の気持ちに歩み寄れた」…“自分なら”を考える観客続出
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映画の登場人物と、自分自身の心情が重なったとき、その映画体験はかけがえのないものとなる。その点、本作はどうなのだろうか? 不倫という、現代社会では忌避感の強いアンモラルが題材だが、「自分ごと化できた」「登場人物に共鳴した」との声も多かった。

「なぜ、篤郎をそこまで愛するのか。私には理解しづらい。でも、みはると笙子の哀しい怒りや、どうしようもないほどの愛は、観ていてどんどん共感してしまった」「観る前は『誰にも共感できない』と思っていたのに、不思議と全員の気持ちに歩み寄れた」など……。

もちろん、「彼・彼女らとは、自分は違う行動をとるだろう」との声も確かにある。あなたはどう思うだろうか? 劇場で鑑賞し、ぜひ確かめてみてほしいと思う。


●「引き込まれ、気づけば涙していた」…心を強く動かす感動も
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登場人物たちが織りなす魂の結びつきは、観客の胸に“感動”を呼び起こしたようだ。

特にクライマックス付近のシーンには称賛が集中した。「出家を決めた(みはるの)気持ちに涙」「病院でのシーン、本妻と愛人の表情・行動にこちらも涙……」「物語に引き込まれ、気づけば涙していた」。これらの感想は、観る者それぞれの人生を映し出し、それが主人公の心境と重なって、胸を熱くさせたことの証と言える。

また、「ドロドロしすぎていない」「観た後に、清々しい気持ちになった」との声も。爽やかな気分で映画館を出ることができるので、あまり身構えず、気軽に鑑賞してみるのも一興だ。


【鑑賞の手引き】現実とのドラマチックな“つながり”
これを知れば、「あちらにいる鬼」がさらに深くなる

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最後に、現実と本作「あちらにいる鬼」にまつわるエピソードに言及し、特集を締めくくっていこう。


●瀬戸内寂聴、井上光晴、妻・郁子は、同じ墓地に眠っている

登場人物のモデルとなった上記3人は、やはり現実でも強い絆で結ばれていたといっても過言ではない。

2021年11月9日に99歳で死去した瀬戸内寂聴は、2022年9月15日、岩手県二戸市の天台寺の霊園に分骨された。天台寺霊園は瀬戸内が開設。そして、井上光晴(1992年没)と妻・郁子も同所に納骨されており、それは瀬戸内にすすめられたものだという。


●映画「全身小説家」の存在 余命いくばくの井上光晴を追ったドキュメント

映画ファンならば一度は耳にしたことがあるかもしれない。原一男監督による映画「全身小説家」は、実際の井上光晴の晩年を追った傑作ドキュメンタリーだ。

「ゆきゆきて、神軍」などで知られる原監督が映し出したのは、井上光晴の“虚構と現実”。癌により死に至るまでの5年間をとらえ、第68回キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画第1位を、第49回毎日映画コンクールでは日本映画大賞を受賞するなど、国内の主要な映画賞を独占した。

同作では、実際の井上光晴らがどんな人物だったのかを観ることができる。豊川悦司らの芝居とのリンクも当然、多くあり、「あちらにいる鬼」とあわせて鑑賞すれば非常に味わい深い体験となるだろう。

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インタビュー

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