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「グリーンマイル」「シャイニング」「キャリー」スティーブン・キング作品の映像化の裏側は?

2022年10月4日 09:00

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ドキュメンタリー映画「King on Screen(原題)」
ドキュメンタリー映画「King on Screen(原題)」
Yellow Veil Pictures

テキサス州オースティンで開催されたファンタスティック映画祭(9月22日~29日)に、興味深いドキュメンタリー映画が出品された。タイトルは「King on Screen(原題)」。テーマは“ホラーの帝王”スティーブン・キングの映像化作品だ。今回、監督を務めたダフネ・ベビールが単独インタビューに応じてくれた。(取材・文/細木信宏 Nobuhiro Hosoki)

映画では「キャリー」「シャイニング」「スタンド・バイ・ミー」「ミザリー」「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」、テレビシリーズでは「アンダー・ザ・ドーム」「ミスター・メルセデス」など、多くの著作が映像化されているキング。本作では、そんなキング作品の映像化を試みた監督陣が、製作当時を振り返っている。

ダフネ・ベビール監督
ダフネ・ベビール監督
Olivier Vigerne

どの“スティーブン・キング作品”に影響を受け、本作を手掛けることになったのか。まずは、ベビール監督にその点を尋ねてみた。

「私は子どもの頃からキング作品のファンで、その中でも『グリーンマイル』が一番気に入っています。私は“最も脚色された作家”であるキングの作品群を、さまざまな監督の観点から深く調べてみたかったんです。でも、全ての作品を描くことはできません(2022年時点、約70作品が映画化&テレビシリーズ化)。情報だらけの映画にはしたくありませんでしたし、そのバランスをとる必要がありました。(人々が)より語り合えるような、ドキュメンタリーに適応できる映像をいくつか選択する必要があったんです。それから監督たちの言葉を、ドキュメンタリー全体のストーリーにどのように繋げていくかを決めていきました」

画像3(C)1994 Castle Rock Entertainment. All Rights Reserved.

ベビール監督は、出演してくれた監督陣が語る“裏話”に魅了されてしまったという。いくつかのエピソードを紹介しよう。

ショーシャンクの空に」のフランク・ダラボン監督は、映画の基になった原作「刑務所のリタ・ヘイワース」を、5年間かけて脚色している。完成した脚本は、大勢の俳優陣に読まれることになった。ジェフ・ブリッジスケビン・コスナーニコラス・ケイジジョニー・デップ……その中のひとりだったトム・クルーズは、「スタンド・バイ・ミー」のロブ・ライナー監督にメガホンをとるように勧めたという逸話が残っている。

「キングは、ダラボン監督の最初の短編映画『The Woman in the Room(原題)』を鑑賞した後、『刑務所のリタ・ヘイワース』の映画化権を与えています。ダラボン監督は、脚本を完璧なものにしたかったそうで、書き上げるまでに5年もかかったそうです。『ショーシャンクの空に』は、ダラボン監督にとって最初の長編映画。それまでは『Buried Life(原題)』というテレビ映画、いくつかの脚本を書いていました。彼にとっては『ショーシャンクの空に』は必要不可欠な作品で“(自分であれば)撮れる”という確信があったと思います。映画が完成し、それから何年が経とうと、情熱的に同作について話している。彼こそ『ショーシャンクの空に』の監督にふさわしい人物だったと思います」

画像4写真提供:アマナイメージズ

キングの妻タビサについての逸話も。彼女は、キングがゴミ箱に捨てた「キャリー」の原稿を拾い上げ、作品を読んで批評し、最初に評価した人物だった。キング作品の女性キャラクターの多くは、タビサに基づいているとも言われている。

「キングと妻のタビサとの関係は、このドキュメンタリーに入れたかった部分でした。彼女は、あらゆるレベルで彼の作品に大きな影響を与えてきました。彼女はキングの書いた全ての原稿を読んでいて、いつも最初の読者として批評し、フィードバックを提供しているんです。彼が創造したキャラクターに、タビサとの関係、シングルマザーによって育てられたという事実が反映されている点が興味深いと思います」

画像5写真提供:アマナイメージズ

キングは、自身の原作を基にした映画「シャイニング」(スタンリー・キューブリック監督)を毛嫌いしていた。その理由のひとつは、キングにとって、原作小説がとても個人的な作品だったから。キング作品の読者も、ストーリーを変更したキューブリック監督の映画版に対して、公開当初、拒否反応を示していた。やがて、キング自身も不満をあらわにし、自らテレビのミニシリーズ「シャイニング」を手がけることになった。

「原作は、キングにとって(まるで)我が子のように感情的な絆を持った存在。彼は、フィルムメイカーの(思い通りの)脚色のために、映画化権を与えていました。映画版『シャイニング』が自由な解釈と方向性をとり、そこに満足できなかった事実を突きつけられたことで、キング自身の方法によって、作品を修復したかったのだと思います。キングの作品が成功していなかった時代について、『King on Screen(原題)』で語っているパートを見てみると、キングの視点がわかるはず。テレビ版「シャイニング」を脚色することができたのは、自らの原作に近いから。キングの脚色では、主人公ジャック・トランス(映画版ではジャック・ニコルソンが演じた役)が正気を失っていくさまを、視聴者が完全に感じ取ることができると思います。キャラクターの進化(=変化)を探求する時間があるため、ミニシリーズで描いた点も良かったと思います」

画像6

1999年、メイン州西部にある別荘の近くを散歩していたキングは、ライトバンにはねられて重傷を負う(常習的に危険運転を繰り返していた人物が運転していた)。リハビリ中のキングは、「グリーンマイル」のプレミアに参加している。

「『グリーンマイル』の企画は、キングにとって大切なものでした。キングの代弁をしたくはありませんが……ダラボン監督はキングにとって、とても良い友だちでした。(障害が残っていても)プレミアに行きたかったんだと思います。それにキングにとっての『グリーンマイル』は、とても大切な芸術作品だったので、プレミアに出席することが重要だったんだと思います。キングがどのように事故から回復したのか。その過程は驚くべきものでした」

また、ベビール監督は、キングと“ゾンビ映画の巨匠”ジョージ・A・ロメロの関係性についても言及してくれた。

「ロメロ監督とキングには、多くの共通点を見出せると思います。彼らは親密でしたし、2人の世界観は(タッグを組んだ)「クリープショー」で感じとることができると思います。キング自身が『クリープショー』に出演したこと自体が、彼らのコラボがいかに大きいものだったかを示しています。当初は“一緒に何か別のことをする”予定だったそうです。でも、最終的には『クリープショー』でゼロから何かを創造することを決めました。それが『クリープショー』の魅力となり、彼らが何者誰かを物語っていると思います」。

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