瀬戸内寂聴さんドキュメント公開 撮影秘話明かす中村裕監督に、大島新監督「寂聴さんの最後の恋が成就」とコメント
2022年5月27日 19:00
2021年に亡くなった瀬戸内寂聴さんの生誕100年記念のドキュメンタリー映画「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」が、5月27日に公開され、中村裕監督と、「なぜ君は総理大臣になれないのか」(20)などで知られる大島新監督がトークを行った。
死の直前まで月刊誌、新聞の連載をこなす“現役”作家であり、月1の法話には全国から人が押し寄せる「最長寿の国民的アイドル」であった寂聴さん。駆け落ち、不倫、三角関係など、自らの体験を私小説の形で次々に発表し、世間のバッシングに晒されるも、作家として不動の地位を確立。51歳のとき出家し、以来、僧侶と作家という2つの顔を持ちながら活躍した。
中村監督は、寂聴さんを17年間を撮影したNHKスペシャル「いのち 瀬戸内寂聴 密着500日」(15/ATP賞ドキュメンタリー部門最優秀賞受賞)のディレクター。22年5月15日で満100歳を迎えるはずであった寂聴さんに長年寄り添い続け、日々の老いから、過去の恋愛まで互いに全てを報告するように。一方、寂聴さんは中村監督を裕さんと呼び、母親、先輩、友人、あるいは恋人のような、形容しがたい関係となった。
そのようなふたりの特別な関係性を映し出したことについて、中村監督は「NHKスペシャルの後、寂聴先生の記録をどうアウトプットしていこうかと、プロデューサーや友人と話して、次は“恋バナ”しかない。という話になった。僕自身は、ちょっと怖気づいていたところもあった。でも、僕にしか作れないものはそこにしかテーマはないなと。そういう進行だった」と明かす。
そのいきさつを聞いた大島監督は「それは大正解だったと思います。テレビではやりづらいテーマですが、映画というメディアでやったことで、ある種個人的なものにできる。“恋バナ”をやられてよかったと思いました。推薦コメントでも書かせていただきましたが、瀬戸内寂聴さんの最後の恋がこの映画によって成就した、と思ったんです。いわゆる一般的な意味の色恋というものを超越してると思うのですが、寂聴先生が朝日新聞に書かれた文章、私小説と呼んでよいものには、明らかに裕さんのことを書かれています。寂聴先生は裕さんにある種の恋心であり、親のような愛や心配など、色んな思いを抱いていたと思う」と感想を述べる。
中村監督「映画の冒頭で先生は『これは親子(の関係)みたいなもの』と仰るのですが、僕は『男女の関係ですよ』って早いうちから言っていました。普通、自分の肉親に何でもさらけ出してしゃべったりしませんよね。でも、お互いになんでも話してたんです。そういう相手ってほかにはいませんし、逆に本当の恋人同士だったら、話せないこともあるかもしれませんが、タブーみたいなものは全くなかった。本当に特殊な間柄で、先生も僕の話を面白がってくれたんです」
そして「映画では使っていないのですが、先生は昔からどういうタイプを好きになるのか聞いたところ、『私は窪みがある人を好きになって、その窪みを埋めたくなる』と仰っていて。それで、窪みが埋まると興味がなくなって離れると。だから僕は窪みが埋まらなかったのかも」と振り返る。
映画では、寂聴さんの恋愛、創作、そして波乱万丈の人生が本音で語られ、99歳を迎え、コロナ禍の日々などドラマティックな人生がスクリーンに映し出される。
そんな寂聴さんの素顔について大島監督は「改めて感じたのは瀬戸内寂聴さんっていう方は本当に人生の達人だと思う。本音で喋るし、自分に嘘をつかない。すごく面白かったのは、講話で『悪口は言っちゃいけない、だけど悪口を言いながら食べるご飯はめちゃくちゃ美味しい』なんて仰っている。あれってなかなかお坊さんには言えないこと。でもすごく真実というか、そういうふうに考えてもいいんだ、と教えてもらえる。あとは人を愛するということ、それは男女だけじゃなくて、誰かをすごく愛する気持ちをずっとお持ちだった」と述懐する。
中村監督は寂聴さんが出家した理由について「いろんなタイミングで何度か聞いていて、『自分でもよく分からない』と仰っているのですが、総合すると、男女の性愛を伴った感情って、やっぱり制御しきれないところがあって、で、仕事もしなければならない中で、先生はずっと愛の本質みたいなものを書きたいと思っていた。だからその邪魔な部分だけを断ち切るには、もう出家っていう手段しかなかった。そういうことなんじゃないかなと思ったんです」と持論を語った。
そのほか、肉好きで健啖家だった寂聴さんの食生活や、メールや電話でのやりとり、自身の死を予感するような発言など、中村監督だからこそ捉えられた映像についてトークが弾む。最後にふたりは「この映画は、機嫌良く長く生きるための勉強になる」(大島監督)、「反戦活動など、何かがおかしいと思ったらすぐ行動した人。皆さんの心の中で、先生だったらどうするのかな?と思ったり、先生の言葉をかみしめていただいたら」(中村監督)とメッセージを寄せた。
「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」は、全国で公開中。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
十一人の賊軍 NEW
【本音レビュー】嘘があふれる世界で、本作はただリアルを突きつける。偽物はいらない。本物を観ろ。
提供:東映
映画料金が500円になる“裏ワザ” NEW
【仰天】「2000円は高い」という、あなただけに伝授…期間限定の最強キャンペーンに急げ!
提供:KDDI
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 NEW
【人生最高の映画は?】彼らは即答する、「グラディエーター」だと…最新作に「今年ベスト」究極の絶賛
提供:東和ピクチャーズ
ヴェノム ザ・ラストダンス NEW
【最高の最終章だった】まさかの涙腺大決壊…すべての感情がバグり、ラストは涙で視界がぼやける
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
“サイコパス”、最愛の娘とライブへ行く
ライブ会場に300人の警察!! 「シックス・センス」監督が贈る予測不能の極上スリラー!
提供:ワーナー・ブラザース映画
予告編だけでめちゃくちゃ面白そう
見たことも聞いたこともない物語! 私たちの「コレ観たかった」全部入り“新傑作”誕生か!?
提供:ワーナー・ブラザース映画
八犬伝
【90%の観客が「想像超えた面白さ」と回答】「ゴジラ-1.0」監督も心酔した“前代未聞”の渾身作
提供:キノフィルムズ
追加料金ナシで映画館を極上にする方法、こっそり教えます
【利用すると「こんなすごいの!?」と絶句】案件とか関係なしに、シンプルにめちゃ良いのでオススメ
提供:TOHOシネマズ
ジョーカー フォリ・ア・ドゥ
【ネタバレ解説・考察】“賛否両論の衝撃作”を100倍味わう徹底攻略ガイド あのシーンの意味は?
提供:ワーナー・ブラザース映画
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
死刑囚の告発をもとに、雑誌ジャーナリストが未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづったベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部編)を映画化。取材のため東京拘置所でヤクザの死刑囚・須藤と面会した雑誌ジャーナリストの藤井は、須藤が死刑判決を受けた事件のほかに、3つの殺人に関与しており、そのすべてに「先生」と呼ばれる首謀者がいるという告白を受ける。須藤は「先生」がのうのうと生きていることが許せず、藤井に「先生」の存在を記事にして世に暴くよう依頼。藤井が調査を進めると、やがて恐るべき凶悪事件の真相が明らかになっていく。ジャーナリストとしての使命感と狂気の間で揺れ動く藤井役を山田孝之、死刑囚・須藤をピエール瀧が演じ、「先生」役でリリー・フランキーが初の悪役に挑む。故・若松孝二監督に師事した白石和彌がメガホンをとった。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
ハングルを作り出したことで知られる世宗大王と、彼に仕えた科学者チョン・ヨンシルの身分を超えた熱い絆を描いた韓国の歴史ロマン。「ベルリンファイル」のハン・ソッキュが世宗大王、「悪いやつら」のチェ・ミンシクがチャン・ヨンシルを演じ、2人にとっては「シュリ」以来20年ぶりの共演作となった。朝鮮王朝が明国の影響下にあった時代。第4代王・世宗は、奴婢の身分ながら科学者として才能にあふれたチャン・ヨンシルを武官に任命し、ヨンシルは、豊富な科学知識と高い技術力で水時計や天体観測機器を次々と発明し、庶民の生活に大いに貢献する。また、朝鮮の自立を成し遂げたい世宗は、朝鮮独自の文字であるハングルを作ろうと考えていた。2人は身分の差を超え、特別な絆を結んでいくが、朝鮮の独立を許さない明からの攻撃を恐れた臣下たちは、秘密裏に2人を引き離そうとする。監督は「四月の雪」「ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女」のホ・ジノ。