なぜ君は総理大臣になれないのか

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なぜ君は総理大臣になれないのか

解説

2019年の国会で不正会計疑惑を質す姿が注目を集めた政治家の小川淳也を17年にわたり追いかけたドキュメンタリー。2003年、当時32歳で民主党から衆議院選挙に初出馬した小川は、その時は落選するも、05年の衆議院選挙において比例復活で初当選。09年に政権交代が起こると「日本の政治は変わる」と目を輝かせる。しかし、いかに気高い政治思想があろうとも、党利党益に貢献しないと出世はできないのが現実で、敗者復活の比例当選を繰り返していたことからも発言権が弱く、権力への欲望が足りない小川は、家族からも「政治家に向いていないのでは」と言われてしまう。17年の総選挙では希望の党に合流した前原誠司の側近として翻弄され、小池百合子代表への不信感から無所属での出馬も考えた小川だったが、前原や地元の盟友・玉木雄一郎への仁義というジレンマに悩まされ、背水の陣で総選挙にのぞむ。映画では「シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録」「園子温という生きもの」、テレビでは「情熱大陸」「ザ・ノンフィクション」など、数多くのドキュメンタリーを手がけてきた大島新監督が、17年間追い続けた小川の姿を通して、日本政治の未来を問いかけていく。

2020年製作/119分/G/日本
配給:ネツゲン

スタッフ・キャスト

監督
プロデューサー
前田亜紀
撮影
高橋秀典
前田亜紀
編集
宮島亜紀
ライン編集
池田聡
整音
富永憲一
音楽
石崎野乃
制作担当
船木光
三好真裕美
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映画レビュー

4.5積極介入ドキュメンタリー

2020年10月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

“右手には花束を、左手にはナイフを持つ気持ちで取材対象に挑む”という大島監督が、被写体である小川淳也議員にカメラを向けながら、ことあるごとに自らの思いを率直にぶつけていく。今回の決断は間違っていたんじゃないか、(民進党は)政権とる気あるのか、果ては、あなたは政治家に向いていないんじゃないか…。柔らかい物腰とは裏腹に舌鋒鋭く議員を追い詰める。

そのスタイルは、同じく政治を題材にしたドキュメンタリー映画「選挙」(傑作!)とは真逆だ。“観察映画”を標榜する想田和弘監督は取材対象である山内和彦氏を客観的に観察し、どのシーン・側面を切り取るかで自らの思いを伝えた。一方で大島監督は、自らの意見をダイレクトに伝えることで、小川淳也議員から迷いや苦悩などあらゆる言葉を引き出していく。

白眉は選挙カー車内での雑談シーン。民進党から離党し、希望の党への参加を決めた小川議員に対し、大島監督は“無所属でいくべきだった”と意見する。すると小川議員が重い沈黙を交えながら、徐々に心情を吐露し始める。その嘆きはおよそ政治家が漏らすような言葉ではなく、はっきり失言と言えるレベルの内容だが、理想に燃える品行方正な若手議員の本当の苦悩がもっとも表れた瞬間だった。

その後の小川議員が選んだ道を見れば、大島監督の積極的な介入がその決断に影響を与えているのがよくわかる。その功罪はさておき、監督自身が物語の道標となっていくその過程に、ドキュメンタリー映画の持つ力をあらためて思い知った。

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オスカーノユクエ

4.5苦悩する民主主義の姿

2020年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

現職の衆議院議員、小川純也氏の初出馬から現在までの17年を追いかけた力作ドキュメンタリーだ。民主党から出馬し、実直に国の行く末を憂う小川氏が、民主党の政権奪取から解体、第二次安倍政権の長期化と野党の弱体化の流れの中で、悩み続けてきた姿を赤裸々に映し出している。
最大の見どころは、民進党が解体され、小川氏が小池百合子の希望の党に移って臨んだ衆院選選挙だ。その選択が正しかったのか、期間中もずっと悩み続ける。街中では罵声を浴びせられる。たしかに小池新党とは政治信条的に相いれない部分があるわけだが、あの時は清濁併せ吞む気持ちだったのだろう。
その後、国民民主党には入らず、無所属を選んで原点に立ち返ったかに見える小川氏。彼のような政治家が国政で思うような活躍ができないのはなぜか。まっとうな主張よりも党利党略が優先され、理念がないがしろにされる現実に打ちのめされる。タイトルは言い直せば、なぜ我々有権者は彼のような人物を総理大臣にすることができないのかということになる。「苦悩する民主主義」の姿が映されていた。

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杉本穂高

3.5理想の光りで照らすことによって、自分の生き方が良く見えてきたりする・・・・

2023年3月7日
PCから投稿

彼は周りの人たちの賞賛や要望に応えているうちに理想の政治家から降りられなくなり、心の中では、そんなのではないんだよ・・・と言い続けながら、我慢して役目を果たしてきた。しかし、誰も気づいたりしないように思えてくる。そして、その限界において破局が待っている。

人間が過ちや邪悪な行為を犯す可能性と正面から向き合うことができず尚且つ温室育ちの花のように真の論争から保護しなくてはならない愛国心しか持たぬ政治家に戦い臨むその心意気が画面からはみ出し、僕の眠りこけてしまった頭脳を揺さぶってくれたのは確かだった。

彼か自問自答する政治家に必要なもの、"野心"が足りないのじゃないかという疑問があまりにも幼いきがした。
政治家にとって考えなくてはいけない大事なテーマは人間をどういう状態に置いたら一番幸せなのかということだ。それは、つまり人間はどこまでバカかと言うのを読み切らなくてはいけない。

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はる

2.0ズルく生きれ!と言わなきゃ行けない日本

2022年10月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

日本で一番真面目が報われない職業は政治家だ。
ひとりの生真面目な政治家を長年追い続ける事で、日本の政治家の根本的な問題が見えて、日本は変われないと思った。
真面目にコツコツなんて求められてない。話題性になる発言が人の注目を掻っ攫う。

誰もが「小川淳也は政治家に向いてない」と言う。家族も政治家は辞めて欲しいと願っている。私も向いてないと思った。だって、いい人なんだもの。この国ではいい人は政治家として成功しない。
絶望を感じたけれど、小川さんが「信用出来る議員に〜」と発言してた記憶がある。たった数名でも、本気で日本を考えてる政治家がいるのが救いだった。

この映画を楽しむにはニュースや政治の知識がいる。週刊紙のように、おもしろく書き立ててないので、生々しい冴えない政治家のリアルだ。なので、大衆ウケはしないけど、こんな映画があってよかった。

小川さんを一番素敵だなと思ったのは、「政治は多数の意見を取り入れるが、自分は反対意見も耳を傾けたい」と言っていたところ。
政治家の性格まで把握せずに投票をしてるけど、自分と考えが違っていても小川さんは信じたい、そう思った。

衝撃だったのは、3DKの賃貸アパートに家族で住んでたこと!家族の悔しい気持ちが分かる。
東大卒で将来が約束されてたエリートは、たくさんの人に裏切られ暴言を吐かれても、日本のために歯を食いしばってた。
小川さんが総理になれる日本に、世界になれたらいいなと思った。

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りりまる
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