劇場公開日 2022年5月27日

  • 予告編を見る

瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと : 特集

2022年8月12日更新

「人間が一番成長するのは恋愛です」と説いた寂聴さん パワフルな生き様と笑顔に癒される!

画像1

話題の映画を月会費なしで自宅でいち早く鑑賞できるVODサービス「シネマ映画.com」。2021年11月に99歳で亡くなった作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんのドキュメンタリー「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」が、8月12日~25日まで先行独占配信されます。

数多くの著書を持つ作家として、そして講演や法話を行う僧侶として絶大な人気を集めた寂聴さん。波乱万丈な若き日から、晩年となってもエネルギッシュに自らの生き方を貫く寂聴さんの姿を映した本作について、映画.com編集部が見どころを語り合いました。

シネマ映画.comで今すぐ見る

瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと (中村裕監督/2022年製作/95分/G/日本)

<あらすじ>

大正・昭和・平成・令和と4つの時代を生きた瀬戸内寂聴は、駆け落ち、不倫、三角関係など自らの体験を私小説のかたちで発表し、世間からバッシングを受けながらも、作家としての不動の地位を確立した。51歳で出家してからは僧侶と作家の2つの顔を持ち、2020年1月まで毎月一回行っていた法話には全国から人が訪れるなど晩年まで大きな人気を集めた。女性であるということを忘れずに人生を楽しむ彼女の生きざまを通して、不寛容な空気が充満する現代社会において人間の生命力とは何か、いかに生き、老いていけばよいかというヒントを探る。


座談会参加メンバー

駒井尚文(映画.com編集長)、和田隆、編集部スタッフM、今田カミーユ

■寂聴さんの魅力的な人柄が伝わるドキュメント
画像9

駒井編集長 寂聴さんの人となりについては、これまで良く知らなかったのですが、この映画を見て、非常に好感を持ちましたね。とにかく明るい。いつもケラケラ笑ってらっしゃってて、周りを元気にしますよね。

和田 見ているだけで癒されましたw

M 私は法話も聞いたことがないし、小説も読んだことはないけれど、映画のラストの中村監督との蛍の思い出を綴った文章が素敵で。これまで関心がなかったけど、小説も読んでみたいなと思いました。

今田 私も映画化された作品をいくつか見ただけで、寂聴さん&晴美さん時代の著書も生き様もさほど知らなったのですが、このドキュメントを見て多くのファンがいらっしゃることに納得しました。

画像5
■いかに生き、老いていけばよいかという問いにヒントをくれる作品

駒井編集長 今年見た映画では「PLAN75」の真逆に位置する映画だなと思いました。生きるもポジティブ、死ぬもポジティブ。そんなメッセージの方が多くの人に伝わりますよね。

今田 近年は、終活を考えるようなシニアの人生を描いた作品に注目が集まっていますよね。

和田 いかに生き、老いていけばよいかという問いにヒントをくれる作品だと思います。

駒井編集長 それにしても、臨終まで密着した案件は相当珍しいですね。

M 普段の生活に加えてリハビリや入院の様子など、ありのままの姿に親しみがわきました。自分の98歳の祖母と重なって、老いるってこういうことなんだと改めて思いましたね。

画像7

駒井編集長 中村裕監督が、燃え尽き症候群になってるんじゃないか心配です。

和田 「被写体」と「監督」の関係を超えたドキュメンタリーを久しぶりに見たなあという感想です。

駒井編集長 17年ですからね。他に例がないほど長い密着。

和田 瀬戸内寂聴の記録であると同時に、撮影者・中村裕監督の記録にもなってますね。中村監督が離婚されて、ずっと一人暮らしという切ない場面も。それを心配する寂聴さん。

■肉や酒は晩年の創作のエネルギー源!? 食いしん坊の寂聴さん
画像4

M 私が一番印象に残ったのは、90歳を超えて豪華な食事を楽しむ姿。晩年の創作のエネルギー源は“食べること”だったのかなと思いましたね。

駒井編集長 寂聴さん、お肉大好きですよね!この映画見て、「オレも死ぬまですき焼き食べよう」って誓いましたw

和田 90歳を超えてあの食欲には感心しました。美味しそうに食べますよね。素材も良いものなのでしょうねw

M だいぶ下世話ですが、豪華な食卓を見て、老後を楽しく過ごすにはやっぱりお金が必要だなと思いました。

今田 お酒もお肉もお好きな一方で、子どものように、野菜を勧められても箸を伸ばさなかったりするのが可愛かったです。

■人生の最期まで貫いた作家人生
画像10

駒井編集長 私が驚いたのは、寂聴さんが臨終の間際までちゃんと仕事していたところですね。新潮の連載とか、群像の連載とか、手書き原稿をFAXで入稿してましたもんね。

和田 著書は400作以上でしたっけ。ものすごい創作量ですよね。

今田 私生活のあれこれがゴシップ的に取りざたされることもありますが、やはりずっと物書きになりたくて、なるべくしてなった方なんだなと思いました。

M 寂聴さんの生き方には賛否あると思いますが、若くしてお見合い結婚して戦争も経験して、才能ある女性にとってはさぞ生きづらかっただろうなと思いました。真逆の安定した人生を望む身としては共感は難しいけれど、理解はできる気がしました。

■「雷だから止められない」何よりも“恋愛”を創作の糧にした寂聴さん
画像8

駒井編集長 「共感できない」という意見も少なからずありますよね。「人間が一番成長するのは、恋愛です」ってのが印象的でしたね。で、その恋愛が、ことごとく略奪愛とか不倫だったわけで。でも「雷だから止められない」って。すごいエモーション。

M 人間はある程度、煩悩、寂聴さんの言葉を借りるなら色気があったほうが元気で長生きできるのかなと思いました。寂聴さんにとっては食べることと同じくらい、誰かに恋愛感情を持つことが生きる意欲、創作意欲につながっていたんだろうなと。

今田 不倫のお相手だったと言われる井上光晴さんの晩年を、原一男監督が撮ったドキュメント「全身小説家」もめちゃくちゃ面白いんですが、恋愛関係が終わってからも、ふたりは井上さんのご家族も認める同志のような関係だったそうで。寂聴さんが小説家として飛躍されたのも井上さんとの出会いがあったからなんですよね。

駒井編集長 不倫して、その経験を小説に書いて、また別の相手と不倫をして、それも小説になって……。不倫ってネタの宝庫なんだなって思いました。

今田 本当の恋愛は家庭の外で生まれるもの……と寂聴さん、フランス文学みたいな生き方を地で行ってますね。

和田 それでも出家しないと恋愛に溺れてしまい、小説が書けなくなってしまう、という危機感もあったんでしょうか。

M 過去を悔いるとともに、世間に叩かれて深く傷ついた様子をのぞかせていたのも印象的でした。今もその風潮は根強いけれど、道ならぬ恋を部外者がよってたかって責め立てるのは違いますよね。

画像2

駒井編集長 上記の文脈だと、出家するしか不倫のループを絶てない。ある意味、合理的な判断ですよね。しかも、僧侶として人生をまっとうしています。

今田 寂聴さんご本人は映画の中で、出家後も酒も飲み、肉も食べてらっしゃるけど、恋愛だけは絶ったと仰ってましたしね。

駒井編集長 老いにさしかかっていく年齢とも相まっての決断かな、とも思いました。

今田 年の離れた中村監督と、友情とも親子とも恋愛ともまた違った関係性が素敵でしたよね。それでも監督が「女性として見てます」と寂聴さんに言っていたのが良かったです。寂聴さんも悪い気はしなかったと思います。

画像6
■寂聴さんの気遣い、行動力、強制しない信仰……そのバランス感覚に私たちの心がほどかれていく

和田 一方で、印象深かったのが、寂聴さんと中村監督が出会った最初の方で距離を縮める会話。「本当はおひとりが好きですよね」とか、「人がいるとついつい気を遣っちゃうのでは」とか。そんな面も持たれている方なんだなと。

駒井編集長 ああ、そこは意外でしたね。

今田 他者へのサービス精神旺盛な気配り上手の方こそ、実はひとりでいる方が好きという傾向ありますよね。だからこそ自分自身だけに向き合える小説家という仕事を選ばれたのかなと。

駒井編集長 確かに、寂聴さんは1対nの状況が多くて、そこはお仕事モード。でも、小説書くのはひとりきりじゃないと難しいですからね。

今田 法話のシーンはいつも大盛況でしたね。この映画が公開された劇場もファンの方でいっぱいでした。

M 法話に集まった人たちを見て、同じような経験をした人、特に同世代の女性にとって、寂聴さんの姿や言葉は自分を肯定してくれるようで心強い存在だったんだろうなと感じました。

和田 2020年1月まで毎月1回法話を行っていたとありますね。映画では、震災で夫を亡くされた女性の心をほどいていましたね。

M いま宗教との関わり方が取りざたされていますが、個人的には寂聴さんくらいゆるい信仰がいいなと思いました。出家しながらも、「ひとつくらい戒律を守ればいいじゃない」とあっけらかんと笑ってる姿が印象的でした。

駒井編集長 まったく同感ですね。ユルいところが仏教のいいところ。執筆や法話以外では、戦争反対のデモにも参加していましたね。

画像3

今田 寂聴さんの行動力は本当にすごいですよね。

駒井編集長 スピーチも上手で、選挙に出たら楽勝で当選すると思います。

和田 震災、コロナ禍、ロシアによる侵略、中国による台湾への高まる圧力。そして不寛容な空気が充満する現代社会において、寂聴さんのような法話は必要ですよね。この作品は人生を楽しむ生きざまとは何かのヒントを教えてくれますので、肩の力を抜いて、幅広い世代に見て欲しいです。

駒井編集長 今年一番のマインドフルネス案件だと思います。ちなみに2番目は「ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド」。

今田 まだ寂聴さんの半分も生きておらず、その功績をほとんど知らなかった自分が見ても、今、健康でいられることに感謝し、寂聴さんのように長生きしたくなる、ありがたい癒しのドキュメントでした!

画像12
シネマ映画.comで今すぐ見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」の作品トップへ