セリフのないシーンの表情も大事――「ドクター・ストレンジMoM」三上哲が語る、吹替の極意
2022年5月4日 10:00

「スパイダーマン ノーウェイ・ホーム」のその後を描く「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」が、本日5月4日から公開された。ベネディクト・カンバーバッチ扮する主人公ドクター・ストレンジの日本語吹替版声優は、これまでに続き三上哲が続投。いまだ謎の多い本作の魅力について、三上に聞いた。
元天才外科医にして、アベンジャーズ最強の魔術師であるドクター・ストレンジ(カンバーバッチ)が、多くの謎に包まれている“マルチバース”を舞台に新たな脅威へと立ち向かう。
(C)Marvel Studios 2022「スパイダーマン」シリーズなどのサム・ライム監督がメガホンをとり、ストレンジの盟友で魔術師ウォン役のベネディクト・ウォン、ストレンジの元恋人で医師のクリスティーン役のレイチェル・マクアダムスらも続投。ワンダことスカーレット・ウィッチ役のエリザベス・オルセン、新キャラクターのアメリカ・チャベス役でソーチー・ゴメスらが共演する。
“マルチバース”が描かれるので、ストーリー的にも可能性が広がって本当にすごいことになっています。“マルチバース”と聞くと難しいのかなと考えてしまいそうですが、時間軸についてなどの難しさはないので、何も考えずまずは気軽に見て楽しんでいただきたいです。
予告にもありましたが、ストレンジが何人か出てきますし、それぞれがどうやって絡んでいくのかも楽しみにしてほしいですね。そのほかにも、ストレンジとウォンのいつものやり取りや、クリスティーンとの関係性もどうなっていくのか、気になるところがたくさんあります。新キャラクターのアメリカ・チャベスとストレンジのやり取りも面白くなっていると思います。まだ幼さが残るチャベスに対して、ストレンジは大人として接しているのですが、笑えるだけじゃなくてちょっとしんみりする部分もあります。
サム・ライミ監督に決まった時、今回はホラーテイストが強くなるんじゃないかという声もありましたが、おどろおどろしい感じではなく、みんなが楽しめる迫力ある映像になっていると思います。
実は、まだ映像が未完成の状態でリハも収録もやったいたので、演じながらこれはスクリーンで見ないとダメだ、完成版はすごいことになっているんだろうなと思いながら収録をしていました。細かい息を本国に合わせて拾うこともあるので、周囲の音楽が大きくなっているものとは別に、セリフだけのチャンネルを拾って収録することもあります。なので、全部の音が一つにまとまったときの臨場感は僕も早く体験してみたいです。

今回のストレンジにはすごく成長を感じました。「アベンジャーズ エンドゲーム」であれだけの壮絶な戦いを経て、「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」ではスパイダーマンに対して「まだ子どもだったんだな」と気付けるようになっていましたよね。本作では、人に寄り添えるようになった部分も描かれています。
どの作品も一緒ですが、吹替の場合は本国の役者さん、今回はベネディクト・カンバーバッチさんがどう演じようとしているのかを汲み取って同じように表現するようにしています。日本語版なのでわかりやすいように足す部分もありますが、セリフのないシーンでも目線など役者さんがどんな表情をしているかが大事だったりします。カンバーバッチさんはわかりやすく繊細に、でも大胆に表現してくれているので、そこを拾ってシンクロするようにしています。
(C)Marvel Studios 2022強い、頭がいいとかいろんな魅力がありますが、ただ単に優しい、強いだけではないところが好きです。嫌な部分もありつつチャーミングで、人間的に小ささを感じるようなところも良いなと思います(笑)。
作品ごとにいろんな表情を出していて、この前の「パワー・オブ・ザ・ドッグ」もこんな役をやるんだってびっくりしましたが、1本通して見たときにやっぱりすごいなと思いました。特徴的なビジュアルをしているのに、彼が演じていると本当にその人に見えてしまいます。今回も何人かストレンジが出てくるのですが、カンバーバッチさんはそれぞれお芝居も変えていて。違う歴史を背負ってきたストレンジをどう表現しているかとか、僕もディレクターと話し合って進めました。
4Dの上映もあるので、アトラクションとしても気楽に楽しんでいただきたいです。吹替版は言葉の情報量が多いので、吹替版を見た後に字幕版でも見るとより理解が深まると思います。ベネディクト・カンバーバッチさんはすごくいい声なので、なんだ三上ってなってしまうかもしれませんが(笑)。吹替版と字幕版の両方を楽しんでいただけたら嬉しいです。
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