【「THE BATMAN ザ・バットマン」評論】犯罪ジャンルを極め、闇の病理と正義の真価に迫るバットマン映画
2022年3月13日 15:00

バットマンの劇場実写版は、回を重ねるごとにトーンが沈み、そしてハードボイルド化していく傾向にあるようだ。マット・リーブス監督の最新作「THE BATMAN ザ・バットマン」も、グラフィックノべルのアダルトなエッセンスをより備え、いっそうの容赦と妥協を許さぬヘヴィな犯罪映画となっている。
次期市長候補が何者かによって殺害。おりしもギャングたちの跳梁跋扈で、ゴッサム・シティの治安は悪化の一途をたどっていた。富豪ブルース・ウェイン(ロバート・パティンソン)はゴッサムの浄化を求め、闇の存在バットマンとなり悪を威嚇してきたが、そのため警察組織からもマークされ、混沌はさらなる脅威を生むことになる。犯行現場に謎を残し、バットマンを挑発する殺人鬼リドラー(ポール・ダノ)の出現。ブルースはゴードン警部補(ジェフリー・ライト)と共に当該人物の足跡を追うが、その過程で警察官や検事の一大汚職が浮上し、水面下で私怨と秩序崩壊をはらむ巨大な陰謀がうごめいていることを知るのだ。
リーブス監督とクルーは“主人公の葛藤”という表現域の余白を原作「バットマン:エゴ」から見つけ、「モールス」(11)や「猿の惑星:新世紀(ライジング)」(14)「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」(17)と同じ再定義の姿勢で既存作の新生を図っている。未解決事件として悪名高い「ゾディアック連続殺人」にも似たリドラーの術策と劇場型犯罪。いっぽうでブルース自身も相克に苛まれ、自分が何者なのかを定められずにいる。そこに一族の呪縛という枷が食い込んでいく展開は、硬質なDC映画の極みに思われたクリストファー・ノーランのトリロジーでさえ、まっとうなスーパーヒーロー神話と解釈できるほどに病理と闇が深い。財力を駆使したハイテク兵器は実戦的で、現実世界に軸足を置いたハイパーリアルなバットマンを象徴する。だからこそ、正義という行為に重みが増し、その真価がこれまで以上に問われることになるのだ。
複雑に階層化された犯罪が明らかにする、リドラーの動機とゴッサムの暗部。それにブルースはどう立ち向かうのか--? 上映後にシアターを出て、天空にバットシグナルを探してしまうような実体感と、陰キャなバットマンの造型に対する共感。約3時間に及ぶロングストーリーは、これらの確かな感触をしっかりと握らせてくれる。また全編を通してデビッド・フィンチャー作品の韻を踏むかのようなリスペクトの構えも、映画愛の馴者リーブス監督ならではだろう。
(C)2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC
関連ニュース






映画.com注目特集をチェック

宝島
【あまりにも早すぎる超最速レビュー】すさまじい映画だった――全身で感じる、圧倒的熱量の体験。
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

映画「F1(R) エフワン」
【「トップガン マーヴェリック」を観た人類におくる】あの“胸アツ”を更新する限界突破の超注目作
提供:ワーナー・ブラザース映画

フロントライン
【感情、爆発。】日本を代表する超豪華キャスト。命を救う壮絶な現場。極限の人間ドラマ。魂の渾身作。
提供:ワーナー・ブラザース映画

試写会で絶賛続々
「愛しくて涙が止まらない」…笑って泣いて前を向く、最高のエール贈る極上作【1人でも多くの人へ】
提供:KDDI

ネタバレ厳禁映画の“絶品”登場!
【超・超・超・超・異色展開】このカオス、このサプライズの波状攻撃…あまりにも好きすぎた
提供:バンダイナムコフィルムワークス

We Live in Time この時を生きて
【仕事にならないくらい泣いた…】人生の岐路で何度も観返したい、“一生大切にする”珠玉の1本
提供:キノフィルムズ

おばあちゃん版「ミッション インポッシブル」!?
【辛口批評サイト98%超高評価!】アクション映画好きに全力でオススメ!めちゃ良かった!!
提供:パルコ