【コラム/細野真宏の試写室日記】「ゴーストバスターズ アフターライフ」はド派手な作風か......それとも?
2022年2月4日 08:00
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
今週末2月4日(金)から「ゴーストバスターズ アフターライフ」が公開されます。
まず、この作品は“正統”な「ゴーストバスターズ」シリーズの続編となっています。
これは、どういうことなのかと言うと、そもそも「ゴーストバスターズ」は1984年に公開され日本も含めて世界的に大ヒットしました。1989年には「ゴーストバスターズ2」も公開されています。
ところが2014年に主要キャストだったハロルド・ライミス(イゴン・スペングラー博士役)が亡くなってしまったこともあり、続編の構想はストップしていました。
そんな経緯もあり、2016年には“ゴーストバスターズになりたい新世代の女性のための映画”といったコンセプトで、女性をメインキャストでそろえる形で「リブート作品」となりました。
私はこのリブート作品から「ゴーストバスターズ」を見始めたのですが、このリブート版についてはそこまで出来が良いとは感じませんでした。
日本での興行収入は12.4億円と想定より少し良かったのですが、世界的には上手くいかずに赤字という結果に。
それもあってか、今回の「ゴーストバスターズ アフターライフ」では、2016年のリブート版は無視して、1984年の初代「ゴーストバスターズ」シリーズの続編となっているのです。
今回の「ゴーストバスターズ アフターライフ」が“正統”な「ゴーストバスターズ」シリーズの続編と言えるのは、大きく2つの要素があります。
まず、本作は、1984年の「ゴーストバスターズ」と、1989年の「ゴーストバスターズ2」でメガホンをとったアイヴァン・ライトマン監督の“実の息子”であるジェイソン・ライトマン監督による作品となっているのです。
そして、主人公の女の子のマッケナ・グレイスが演じるフィービーは、「亡くなったイゴン・スペングラー博士の孫」という設定になっています。
ちなみに、マッケナ・グレイスは、 2017年のマーク・ウェブ監督の良作「gifted ギフテッド」でクリス・エヴァンスと共に主演し、“驚くべき数学の才能”を持つ小学生を演じた女の子です。役柄が本作と似ているという共通点もあり、彼女の成長を見られる点も良いと思います。
さて、以上の予備知識を基に、本題の「ゴーストバスターズ アフターライフ」はド派手な作風かどうか、について考察していきます。
まず、正直なところ、ジェイソン・ライトマン監督が本作でメガホンをとる、ということに少し違和感を持っていた面があります。
それは、ジェイソン・ライトマン監督は機微な人間模様を描くことに定評のある監督で、「超大作映画の監督」というイメージがなかったためです。
2005年の長編映画1作目である「サンキュー・スモーキング」は、タバコ業界の広報部長が巧みな話術で情報操作をしていく様が描かれた良作。低予算ながら世界的にヒットし、ゴールデングローブ賞では最優秀作品賞(コメディ・ミュージカル)と最優秀主演男優賞(コメディ・ミュージカル)にノミネートされています。
そして2007年の「JUNO ジュノ」も低予算ながら大ヒットし、アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞の4部門にノミネートされ、脚本賞を受賞しています。
さらには2009年の「マイレージ、マイライフ」ではアカデミー賞で作品賞、監督賞、脚色賞、主演男優賞(ジョージ・クルーニー)、助演女優賞(ヴェラ・ファーミガ)、助演女優賞(アナ・ケンドリック)と6つもノミネートされています。
このように、アカデミー賞系の、ややこじんまりとした良質な作品を作り出す監督というイメージが強かったのです。
とは言え、私のイメージでは、「マイレージ、マイライフ」以降はなぜか低迷期のようなものを感じ、直近の2018年の「フロントランナー」あたりは、その象徴的な作品だった気がしています。
そんなジェイソン・ライトマン監督が、実の父親の後継者として初代「ゴーストバスターズ」シリーズの続編を作るとどういう感じになるのか。1984年の「ゴーストバスターズ」では、巨大マシュマロマンなどが登場するド派手な雰囲気なので期待と不安がありました。
結論から言うと、本作については割と想定通りの完成度でした。
まず、2016年のリブート版は、どちらかと言うとド派手な作風だったと思います。
そこと比較するのであれば、丁寧で堅実な作風と言えます。
これは、リブート版の制作費が1億4400万ドルと高すぎた影響もあり、本作では制作費が7500万ドルと半減していることも関係あるのかもしれません。しかし、ジェイソン・ライトマン監督作品ならではの堅実さが発揮された結果だとも思えます。
興行収入については、新型コロナの影響もあるのか、一足早く昨年11月から公開されているアメリカでは、現時点での興行収入はリブート版とほぼ同じになっています。
一方で、世界興行収入で見ると、今週末から日本が頑張ってもリブート版には達しないような状況です。
とは言え、制作費が半分程度で済んでいるため、まずまずの結果と言える面もあるのです。
ちなみに、Rotten Tomatoesでは、批評家の評価は62%、一般層は94%となっていて、一般層の評価が高くなっています。(2022年2月2日時点)
これは、1984年の初代「ゴーストバスターズ」の正統な続編ということが評価された結果だと思われます。
実は、私は「ゴーストバスターズ」のテーマ曲などは知っていましたが、1980年代の2本を見たことがないので、本作にそこまで強く心が動かなかった面もありました。
そこで私のような1980年代の過去作を見ていない人のために、公開日となる2月4日(金)の金曜ロードショーで第1作目が放送されます。本作を見る前に是非チェックしてみてください。
その上で“コメディ×アクション×ホラー”の本作を見ると、たぶん私の評価も上がると思っています。
このように初期の作品を見ているかどうかで評価が変わりそうなことや、2016年のリブート版の結果を踏まえると、日本では、もし興行収入10億円を突破できたら快挙と判断できる状況と言えるでしょう。
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