【コラム/細野真宏の試写室日記】「土竜の唄 FINAL」。生田斗真の当たり役シリーズは有終の美を飾れるか?
2021年11月18日 09:00
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映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
生田斗真という存在は個人的に面白いと思います。
それは、ジャニーズ所属でありながら、グループに属さず「俳優」メインで活動しているからです。
近年では岡田准一が「俳優」として目覚ましい活躍をみせていますが、生田斗真という存在は独自性があり興味深いのです。
ただ、なぜか、ここ数年は、生田斗真を映画で見かけなくなったと感じるようになっていました。
とは言え、現実にはそういう事もなく、2017年には「彼らが本気で編むときは、」「先生! 、、、好きになってもいいですか?」の2本に主演し、2018年にも「友罪」で主演しています。
もちろん、これらの3作品は見ていますし、どれも良い作品だとは思っていました。
では、なぜ映画で見かけないと勘違いをしてしまっていたのでしょうか?
これは、おそらく“ある映画”が大きく関係しているのだと思います。
それは、2014年2月15日に公開された「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」。
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予告編等でも使われた車のシーン等、文字通り“体を張った演技”で、「えっ、ジャニーズの俳優がここまでやっていいの?」と、軽く引くくらいに驚きました(笑)。
ただ、映画の本編は、意外と面白く、興行収入21.9億円という大ヒットになったのも納得の結果でした。
実は、数日前から原作マンガを隙間時間を見つけて読んでいるのですが、原作マンガの方は、もっと過激だったのですね。
よく「原作のイメージ通りのキャスティング」という表現がありますが、特にメインの生田斗真、堤真一、仲里依紗あたりは、絵柄と合っています。
その点を踏まえて「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」を見返してみると、脚本の宮藤官九郎がかなり上手く処理をしていることが分かりました。
三池崇史監督もギリギリの演出――テレビ局映画としては攻めすぎていて、地上波ではノーカット版の放送は難しいだろうな、という印象でした。
このように、あまりにこの作品のインパクトが強く、しかも役者として弾ける役も上手いので、どうやら私の中で、「生田斗真=菊川玲二」というイメージになっていたようなのです。
そう考えると、近年はコメディ映画への出演がなかったため、私にとっては「土竜の唄」シリーズでないと、生田斗真という存在を感じにくくなっていたのかもしれません。
そのくらい、本作は生田斗真の当たり役だと思います。
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2016年12月23日には、続編「土竜の唄 香港狂騒曲」が公開され、あのハチャメチャな菊川玲二が再び帰ってきました。
この作品も出来は良く、興行収入は14.3億円となっています。
1作目から2作目は、約3年間の期間が空きました。そのため、3作目があるとしたら2019年末か2020年くらいだと想定していました。しかし、さらなる続編でのスケールは“前作超え”は目標にしたいところ。海外が舞台となった「土竜の唄 香港狂騒曲」を超えることは、なかなか容易ではなかったようです。
そこで原作者・高橋のぼるが、現在でも「ビッグコミックスピリッツ」で連載中であるにもかかわらず、「続編を“FINAL”とし、映画を締めくくる形で行うのはどうか」というアイデアのヒントを提供します。当時はまだ原作で描かれていなかった“豪華客船のエピソード”を、原作者自らが提示してくれたことも大きく、一気に「土竜の唄 FINAL」が動き出すことになりました。
しかし新型コロナの影響が出て、制作延期を余儀なくされます。そしてようやく完成したのが、今週末11月19日(金)公開の「土竜の唄 FINAL」なのです!
本作では、文字通りの「FINAL」として、これまでの復習の要素も出てくるので、分かりやすく仕上がっていると思います。
見どころは、まずは何といっても「生田斗真=菊川玲二」の弾けた演技でしょう。
日本ではハリウッド映画のようにはいかず、警察は潜入捜査を禁止されています。
一方、厚生労働省の麻薬取締官は潜入捜査を認められているものの、麻薬以外の捜査は禁止されています。
そこで、警察でも麻薬取締官でもない「一般人」として、菊川玲二は暴力団に潜入捜査する「モグラ」となっているのです。
そのため、誰にも言えない秘密を抱えながら命がけのミッションをこなす過程で新たな人間関係も生まれます。
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その筆頭が、堤真一が演じる「クレイジー・パピヨン」こと日浦匡也。玲二とは「義兄弟の契り」まで交わしている関係です。
このミッションが終わりを告げるとき、玲二と日浦の関係も終わるので、この2人はどうなってしまうのか――というのも、本作の大きな見どころになっています。
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また、ターゲットの暴力団トップの轟周宝(岩城滉一)の息子で“最強の敵・轟烈雄”として、新たに鈴木亮平が参戦します。
暴力団と警察の対決という構造も含め「孤狼の血 LEVEL2」を感じる設定ですが、本作は“コミカル版の「孤狼の血」”といった感じでしょうか。
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そして、「ボンドガール」ならぬ「土竜ガール」(?)は、本作では滝沢カレンが努めます。
正直、滝沢カレンはフジテレビ系列の「全力!脱力タイムズ」という番組でのふざけた感じしかイメージが無かったのですが、意外と女優もアリなのかもしれません。
「土竜の唄」シリーズはこれで終わりますが、生田斗真×宮藤官九郎×三池崇史監督というチームは、まだまだポテンシャルがあると思うので、また弾けた生田斗真が見られるといいなと思います。
新型コロナ等もあり、やや期間が空いたことでこれまでの作品のファンが離れた面はあるのでしょうが、興行収入10億円突破という高い目標に向かって有終の美を飾ってほしいところです。
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