映画.comでできることを探す
作品を探す
映画館・スケジュールを探す
最新のニュースを見る
ランキングを見る
映画の知識を深める
映画レビューを見る
プレゼントに応募する
最新のアニメ情報をチェック
その他情報をチェック

フォローして最新情報を受け取ろう

検索

春本雄二郎監督作「由宇子の天秤」に込められた“海外への意識” 是枝裕和、黒沢清らの「映画祭体験」コメントも

2021年11月2日 19:00

リンクをコピーしました。
テーマは「海外に映画を伝えるには」
テーマは「海外に映画を伝えるには」

第34回東京国際映画祭と国際交流基金アジアセンターによる共同トークイベント「アジア交流ラウンジ」の特別セッション「海外に映画を伝えるには」が11月2日に開催され、「かぞくへ」「由宇子の天秤」の春本雄二郎監督、映画ジャーナリスト/上海国際映画祭プログラマーの徐昊辰氏、東映の国際営業部営業室・高田志織氏(「高」は、はしごだか)がてい談を行った。モデレーターは、ぴあフィルムフェスティバルのディレクター・荒木啓子氏が務めた。

映画作りでは、海外を含めて「どのように伝えていくか」というのも大きな仕事のひとつ。特別セッションでは、国内のみならず、世界各国の国際映画祭で話題となった「由宇子の天秤」を事例として、トークが繰り広げられた。

春本監督いわく、同作は自主映画ではなく、作家自身が資金調達を行い、忖度に左右されない製作体制を整えた“独立映画”だ。第4回平遥国際映画祭での世界上映を経て、第25回釜山国際映画祭ではニューカレンツアワードを受賞している。徐氏は「『由宇子の天秤』のように、日本国内の配給が決まっていない段階で、世界に視野を向けていた事例は、非常に珍しかったんです」と話し、春本監督の戦略に驚きを隠せない。

徐氏「春本監督は、中国のレビューサイトを調べて、その感想を翻訳していました。自分の作品が、海外でどのような評価を受けているのか――その点に意識を向けていましたよね。春本監督のように、映画を見てもらうだけでなく“見てもらった後のコミュニケーション”を重視している方はなかなかいないんです」

画像2(C)2021 TIFF

春本監督は、第1作「かぞくへ」で第29回東京国際映画祭に参加した際、ひとつの気づきを得たようだ。「映画祭の魅力は、海外の映画人が来ていること。彼らが『何を考えて映画を作っているのか』ということを知ることができたんですね。その時、僕自身の映画作りに関しては、まだまだ視野が狭いなと感じたんです。海外の映画人は、世界における“自国”というものを見つめていました。自国において、自分がどうしてこのような映画を作るのかというところまで突き詰めている。哲学を持って映画を作っていました。『なぜ、この映画を作ったのか?』という問いかけに対して、きちんとしたステートメントを表明できなければいけないと思います。自身のことを顧みながら『今の日本のフィルムメーカーには、その熟成が足りてないのかもしれない』と感じました」と話していた。

「予算感、製作費の中身、製作後における回収」にも意識を払うべきだという春本監督。「“(映画を)作る”というのは、観客の鑑賞料金を前借するような形で行っているんです。つまりお客さんを呼んでくるという担保がない限りは、夢物語でしかない。そこまで自身の絵図が描けているか。ここまで考えられているかが、今後のフィルムメーカーにとって必要なのかなと思います。セルフプロデュースという側面は、ある程度バランス感覚として獲得していかなければならないのではないかと。これほど手軽に(映画が)撮れるようになったので『セルフプロデュースをするしかない時代』が訪れているのではないと思います」と述べた。

画像3(C)2021 TIFF

由宇子の天秤」の海外セールスを担当した高田氏は「これだけは意識しておいた方がよい点は?」という問いかけに対し、「春本監督のお話でも出ましたが、皆さん、意外と明確で大きなビジョンというものを持っていないような気がしています。枝葉というものはついてくるもの。私の経験上“幹をしっかり持っている人”が強い」と説明する。

高田「映画は儲からなければ作り続けることはできません。『ライセンスでお金を得る』というのが究極的には必要なんですが、やはり1本目、2本目からバンバン売ることは、ケースとしては非常に少ないんです。春本監督は『由宇子の天秤』をどう見てほしいか――普遍性を追求されていたんですね。私はそのことを伝えたいと思ったのですが、この映画が今すぐに色々な方面に売れるかどうかは、まだわかりません。でも、監督の10年後、20年後――その時に『由宇子の天秤』がどれだけの人に見られたのか。今やっていることは、現段階で結果が出ることもありますが、先の未来に向けての施策でもあります」

荒木氏が、続いてトークの題材としたのは「普遍性」だ。春本監督が「海外でよく言われるのは『自分たちにもこういうことがある』『この登場人物の気持ちは理解できる』というもの。非常にシンプルなのですが『人を描く』こと。人の感情は変わりません。それを取り巻く環境だけが変わる。そこを掘り下げていけば(世界でも)根底に通じるものが生まれるはず」と話すと、徐氏は「おっしゃる通り、本質的には『人間を描くこと』ですよね。そこに社会背景などの様子を積み重ねて、作家性を出していく。これがないと“越境”には繋がらないと思います」と同意していた。

画像4(C)2021 TIFF

徐氏が強調したのは「日本は、海外に向けた宣伝システムが不十分。スピード感を意識して、国際的な感覚で情報を出していくべき」という点。すると、荒木氏は「今年、ナワポン・タムロンラタナリットというタイの監督を特集したんですが、彼は日本が大好きなんですね。その方の作品を見ていると『日本の監督が、こういう作品を生み出しても良かったよね』と感じてしまう。彼はInstagramを使って、英語とタイ語で自身の動向をどんどん発信しています。デビュー10周年なんですが、たったそれだけの期間で、日本の映画界が30年かけてやってきたことを終えているんです。スピード感が違う。彼を見た時に『私たちはやり方を変えなければならない』と実感しましたね」と胸中を吐露した。

画像5(C)2021 TIFF

今回のイベントでは、国際的に活躍する監督陣からの「映画祭体験」にまつわるコメントも披露された。

諏訪敦彦監督「日本人が好きな謙遜、沈黙にはなんの美徳もありません。うまく言葉で言えないということも通用しません。片言の英語でかまわない。話したい人と話し、会いたい人と会う。シンプルな行動がベスト。あなたが映画を信じるならば、国境というボーダーは無いと思ってよい」

塚本晋也監督「映画祭は冒険です。『え? 今ここでこれが起きる?』ということがいっぱいあります。『郷に入れば郷に従え』が一番大切」

是枝裕和監督「大切なのは、人とできるだけ会って話すこと。通訳さんにも、映画祭関係者にも、他の国から来た監督や役者にも、積極的に自分の映画について話す。日本では、普段なかなかしないことです。ランチをしながら皆で論争になって、黙って聞いていたら『あなたはどう思う?』と聞かれた。『うーん、嫌いじゃない』と普段よくやる答え方をしたら、通訳の方に『何それ? どう訳したらいいの? ちゃんとイエスなのか、ノーなのか、ラブなのか、ヘイトなのか。自分の意見を持って言葉にしないと駄目。馬鹿だと思われる』と言われて、出来るだけそうするようにいます。“出来るだけ”でいいんです。無理はしないで。ただ、その作品の監督である以上、自分自身が作品の宣伝マン、営業マンだと、立場を変えて人と接するようにした方がいい気がします。アジアの他の国から来たインディペンデントの監督たちはみんなそうしている。そうやって国外にパートナーを見つけないと、自国の中だけでは作り続けられないから」

黒沢清監督「映画祭は、世界中からものすごいシネフィルが集合しているので、シネフィルの私は、そういう人たちと出会え、作品を通して自分を知ってもらえることが喜びです。それは上映後の質疑応答、ジャーナリストからの質問に答えることで、もたらされます。映画祭では、あらゆる会話が大切。監督の話というのは、その映画と密接に関連している。それぞれの監督の興味があること――例えば、政治、経済、美術、文化、歴史など、興味のあることが話すことで広がる場所が映画祭だと思います。だからこそ、わからないこと、考えてもいなかったことは、正直に伝えることが大事です。作品が全てで、話は必要ないと思う監督もいらっしゃいます。そのような人は、その信念を貫いて“全く話さない”ということが大事だと思います。誠実に話をする。それによって素晴らしい出会いや刺激や発見が待っているのが映画祭です」

画像6(C)2021 TIFF

映画祭とは、自分を知ってもらうための最大の場所であり、そこでの体験が長く続いていくことで自分の裾野が広がっていく。春本監督は「会話をするうえで、自分がどのようなオピニオンを持っているのかということを、まずは言わないといけない」と改めて認識したようだ。

春本監督「例えば、外国で出会う人たちというのは、もしかしたら今後パートナーになるかもしれないですよね。そうした時に、相手は『この作家は、どういうことを考えているのか』ということを知りたがると思うんです。『表現をする』というのは、脚本を書いて、人とお金を集めて、撮るだけの話ではない。『どういう哲学を持っているのか』『どのような表現をしたいのか』『どこに向かっていきたいのか』ということが見えてくれば、きちんと信頼へと繋がっていくんです。それによってパートナーとして組んでもいい、お金を預けてもいいと思われる。そういう姿勢が大事だなと思います」

トークシリーズ「アジア交流ラウンジ」は、7日まで毎日オンライン配信を行う。Zoomビデオウェビナー(登録無料)で視聴可。 第34回東京国際映画祭は、11月8日まで、日比谷、有楽町、銀座地区で開催。

フォトギャラリー

春本雄二郎 の関連作を観る


Amazonで関連商品を見る

関連ニュース

映画.com注目特集をチェック

マフィア、地方に左遷されるの注目特集 注目特集

マフィア、地方に左遷される NEW

【しかし…】一般市民と犯罪組織設立し大逆転!一転攻勢!王になる! イッキミ推奨の大絶品!

提供:Paramount+

外道の歌の注目特集 注目特集

外道の歌 NEW

【鑑賞は自己責任で】強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…地上波では絶対に流せない“狂刺激作”

提供:DMM TV

ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦いの注目特集 注目特集

ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い NEW

【全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作】あれもこれも登場…大満足の伝説的一作!

提供:ワーナー・ブラザース映画

ライオン・キング ムファサの注目特集 注目特集

ライオン・キング ムファサ

【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!

提供:ディズニー

中毒性200%の特殊な“刺激”作の注目特集 注目特集

中毒性200%の特殊な“刺激”作

【人生の楽しみが一個、増えた】ほかでは絶対に味わえない“尖った映画”…期間限定で公開中

提供:ローソンエンタテインメント

【推しの子】 The Final Actの注目特集 注目特集

【推しの子】 The Final Act

「ファンを失望させない?」製作者にガチ質問してきたら、想像以上の原作愛に圧倒された…

提供:東映

映画を500円で観る“裏ワザ”の注目特集 注目特集

映画を500円で観る“裏ワザ”

【知って得する】「2000円は高い」というあなただけに…“超安くなる裏ワザ”こっそり教えます

提供:KDDI

モアナと伝説の海2の注目特集 注目特集

モアナと伝説の海2

【モアナが歴代No.1の人が観てきた】神曲揃いで超刺さった!!超オススメだからぜひ、ぜひ観て!!

提供:ディズニー

関連コンテンツをチェック

シネマ映画.comで今すぐ見る

セルビアンフィルム 4Kリマスター完全版

セルビアンフィルム 4Kリマスター完全版 NEW

内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。

aftersun アフターサン

aftersun アフターサン NEW

父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。

HOW TO HAVE SEX

HOW TO HAVE SEX NEW

ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。

愛のぬくもり

愛のぬくもり NEW

「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。

痴人の愛 リバース

痴人の愛 リバース NEW

奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。

卍 リバース

卍 リバース NEW

文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。

おすすめ情報

映画.com注目特集 12月17日更新

映画ニュースアクセスランキング

映画ニュースアクセスランキングをもっと見る

シネマ映画.comで今すぐ見る

他配信中作品を見る