大塚康生さんは“オタク第1号” 「わんぱく王子」のクライマックスを2人で描いた月岡貞夫氏の回想

2021年11月2日 20:10


月岡貞夫氏(右)と司会を務めた藤津亮太氏
月岡貞夫氏(右)と司会を務めた藤津亮太氏

第34回東京国際映画祭のジャパニーズ・アニメーション部門の特集「アニメーター・大塚康生の足跡」で11月2日、「わんぱく王子の大蛇退治」が東京・TOHOシネマズシャンテで上映され、同作で作画を担当した月岡貞夫氏がトークショーに登壇した。

月岡氏は、手塚治虫が製作に参加した劇場アニメ「西遊記」(1960)をきっかけにアニメ業界に入り、長年アニメーターとして活躍してきた。「最近はアニメーションをやらずに、もっぱら絵を描いています」と挨拶すると、アニメ評論家の藤津亮太氏からの質問にこたえながら「わんぱく王子の大蛇退治」と今年3月に亡くなった大塚康生さんの思い出を振り返った。

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わんぱく王子の大蛇退治」は、1963年に公開された東映動画(現・東映アニメーション)製作の劇場アニメ。日本神話を題材にとり、母イザナミを亡くした主人公スサノオが、母がいるという黄泉の国を目指して冒険を繰り広げる。大塚さんは月岡氏と2人で、スサノオとヤマタノオロチが戦うクライマックスシーンの作画を手がけている。

同作を監督(クレジットは演出)した芹川有吾は、新東宝で映画監督の中川信夫に師事した実写畑の演出家だったが、「わんぱく王子」ではアニメーターの意見を聞きながら絵コンテ段階からアニメーションならではの魅力を出すための工夫をこらしてきたと月岡氏は語る。クライマックスのシーンは、阿吽(あうん)の呼吸で大塚さん6割、月岡氏4割の割合で担当カットを分けあい、月岡氏はロングショットやオロチが登場するところ、大塚さんはアップショットで激しく戦うところを多く担っていたと明かす。

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東映動画時代、机を並べて仕事をしていた大塚さんとは仕事以外での交流も多かった。「波長があったんでしょうか。2人でよくいろんなところに行きました」と話す月岡氏は、大塚さんの部屋に遊びにいったときに押入れをあけたら、たくさんのカタログが落ちてきて驚いたとにこやかに笑う。「車、戦車、飛行機……アメリカの本格的な武器のカタログが山のようにありました。銃は型番を言うとそらで描ける人でした」と述懐。東映動画時代に帆船の模型をつくっていたことにも触れ、「当時も思っていましたけども、あとから冷静に考えてみると(月岡氏が会った)“オタク第1号”が大塚さんですね」と懐かしそうに話していた。

第34回東京国際映画祭は、11月8日まで開催。

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