【「ジョゼと虎と魚たち(2020・韓国版)」評論】憐憫や自己犠牲を超えた静かな切なさに貫かれているラブストーリー
2021年10月30日 14:30

「ジョゼと虎と魚たち」は田辺聖子の同名短編小説を原作に、2003年に妻夫木聡と池脇千鶴の共演、犬童一心監督のメガホンで実写映画化(「ジョゼと虎と魚たち(2003)」)された。足の不自由な女性ジョゼと平凡な大学生の青年の切ない恋模様の行方を描き、青春恋愛映画の名作として高い評価を得ている。2020年には、中川大志と清原果耶が声優を務め、タムラコータロー監督によりアニメ映画化もされた。
韓国版「ジョゼと虎と魚たち(2020・韓国版)」では、映画「虐待の証明」「密偵」などの演技派女優ハン・ジミンがジョゼを、ドラマ「スタートアップ:夢の扉」「保健教師アン・ウニョン」などで人気沸騰中の若手俳優ナム・ジュヒョクが青年ヨンソクを演じている。テレビドラマ「まぶしくて 私たちの輝く時間」でも共演しているこのふたりが素晴らしい相性をみせて、美しくも儚い、新たな究極の純愛ラブストーリーとして生まれ変わった。
少し寂れた趣の住宅街の片隅、足の不自由なジョゼのものと思われる低い視点からの庭の木や風の舞う路地の風景に小鳥や風の音が聞こえ、雑然とした家の中、本棚や台所の様子がやわらかな光と薄暗い影の中に映し出され、そこに美しい音楽とふたりのナレーションが被る。この冒頭シーンは、韓国映画の名作「八月のクリスマス」を想起させ、韓国のラブストーリー映画の系譜を感じさせる。
日常の中の偶然の出会い。それを劇的に映し出すのではなく、セリフは最小限に抑えられ、自然音の中で静かに、じっくりとふたりを捉えることによって、それが運命的な出会いとなることを予感させる演出は秀逸だ。脚本も手掛けたキム・ジョングァン監督は、オリジナル版のエッセンスを巧みに取り入れながら、四季が織りなす映像美を背景に、官能的でみずみずしい美しさにあふれた物語に仕上げていて、映像で語ろうとするその静かな切なさが全編に貫かれている。
外の世界との接触を遮断し、本の中の世界に思いを馳せ、心を閉ざしていたジョゼが、ヨンソクとの出会いによって次第に笑顔を見せ、生きる希望を見出していく美しさ。年上のジョゼとの出会いによって、ヨンソクが他人に必要とされることで自らの存在価値に目覚め、人を愛することで知る若さゆえの痛み。そんなふたりの決断、選択は、憐憫や自己犠牲、障がい者と健常者の恋愛という枠を超え、人をいかに愛するのか、いかに生きるのかを見る者に問うてくる。四季を通して次第に変化していくふたりの心情が痛いほど切ない。ヨンソクを思いやって拒絶しながらも、ジョゼが外の世界に追いかけていく雪のシーンは、映画史に刻まれることだろう。
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