劇場公開日 2021年10月29日

ジョゼと虎と魚たち(2020・韓国版) : 特集

2021年10月22日更新

珠玉の恋愛映画の韓国版が限定最速上映!
映画.com編集部による見どころ解説座談会

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話題の映画を月会費なしで自宅でいち早く鑑賞できるVODサービス「シネマ映画.com」。日本で2003年に犬童一心監督が実写映画化、20年にアニメ映画化された田辺聖子の短編小説を、今回は韓国で実写映画化した「ジョゼと虎と魚たち(2020・韓国版)」が、10月29日からの劇場公開に先駆け、本日10月22日から24日まで“日本最速プレミア上映”(3日間、300人限定)されます。

違う世界に住み、出会うことがなかったであろう若者二人が惹かれ合い、恋の喜びと痛みを知る……青春恋愛映画の傑作として、池脇千鶴さん&妻夫木聡さん主演の日本実写版で涙し、アニメ版では美しく優しいファンタジックな世界観を楽しんだ方も多いはず。韓国版では、大学卒業を控えた青年が、足の不自由な年上の女性と出会うという設定で、人気俳優のハン・ジミンとナム・ジュヒョクが共演します。一足早く鑑賞した映画.com編集部スタッフ4人が様々な視点で、韓国版の見どころを語りました。


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<あらすじ>

キム・ジョングァン監督が日本実写版のエッセンスを巧みに取り入れながら、四季が織りなす美しい映像を背景に、足の不自由な女性と心優しい大学生の純愛を描き出す。大学卒業を控える青年ヨンソクは、道端に倒れている車椅子の女性に遭遇し、家まで送り届ける。足が不自由な彼女はジョゼと名乗り、祖母と2人きりで暮らしていた。本が大好きで独特の感性を持つジョゼに興味を抱いたヨンソクは、それ以来、度々彼女の家を訪れるようになる。


座談会参加メンバー

イケメン大好き編集部員M(イケメンコラム担当、韓国ドラマ&映画ファン)、岡田寛司(アジア映画コラム担当、韓国映画ファン)、クチナシ(海ドラ&ハリウッドコラム担当、恋愛映画ファン)、今田カミーユ(進行)

今田 犬童一心監督の日本実写版からは18年ぶり、韓国実写版「ジョゼ虎」を見終えて、皆さんはどんな感想を持ちましたか?

M 日本版とはまた違った大人の味わいの作品でした。韓国映画ならではの映像美と、世界観がよかったです。あと、「まぶしくて」のハン・ジミンとナム・ジュヒョクの最共演も胸アツでした!

岡田寛司 まず韓国版を見るにあたり、犬童一心監督版、アニメ版(タムラコータロー監督)を見返したんですが、本当に「ジョゼ虎」という物語は懐が深いといいますか……。それぞれの作品でかなり異なった印象を受けました。で、韓国版は、犬童監督版の良さを踏襲しながらも、Mさんのおっしゃる通り、「大人らしさ」という点が強調されていたように思えます。総じて面白かったです。

クチナシ 私は犬童一心監督版のみ見返したのですが、それぞれの良さがあるなと思いました。おふたりがおっしゃるように、犬童監督版より落ち着いた雰囲気だったと思います。2020年版というか、時代の変化も上手く取り入れているなと感じました。


■ちょっと陰のあるイケメン、ナム・ジュヒョクのミステリアスな魅力に惹きつけられる
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今田 やはりみなさん、韓国版は落ち着いた、大人のラブストーリーという印象を持ったようですね。私はジョゼの部屋がファンタジーなところはアニメ版に近い感じだなとも思いました。ヨンソク演じたナム・ジュヒョクは、韓流ドラマファンにも人気が高い注目俳優なんですよね。Mさんは、今作での彼のどんなところがグッときましたか?

M ナム・ジュヒョクはあの通り美形で身長も187cmあって、「ザ・イケメン」っていう感じの俳優さんなので日本でもとっても人気があります! (私も好きですw)。映画はこの作品含めて2本しか出演していないので、ドラマを中心に活躍しているんですけど、もれなくイケメンの役が多いです。一重(もしかしたら奥二重かも?)で切れ長の涼しい目元をしていて、落ち着いた雰囲気があるので、ちょっと陰のあるイケメン役を演じることが多いんですけど、今回もその流れ(?)をくむ役で彼の魅力が存分に生かされていたなと思いました。

今田 なるほど~。私はちょっとヨンソクの行動が読めない部分もあったのですが、そのミステリアスさが魅力なのですね! 事前に田辺聖子さんの原作を読んだのですが、とても余白の多い物語だったので、このように三種三様の魅力ある映画が生まれたのだなあと思いました。3作見比べた岡田さん、韓国版ならではの“これは新鮮だ”と感じた表現はありましたか?


■「ジョゼ虎」は食べ物映画 美味しそうな韓国風朝食&大人の嗜好品に注目
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岡田 まず、3作品に共通する魅力を簡単に言っておきますね。「ジョゼ虎」は食べ物映画でもあると思っていて。日本の犬童監督版ではだし巻き卵、干物、みそ汁、アニメ版ではたこ焼き(ジョゼの祖母が作りますが)。で、韓国版もそのポイントをしっかりおさえています。アイロンで焼くスパムなんて、めちゃくちゃ美味そうじゃないですか(笑)。

韓国版での魅力を深掘りすると、先程も挙げた「大人らしさ」という部分にも繋がるんですが、それを強調する要素が付け加えられていますよね。例えばジョゼはウイスキー好き、主人公は年上の女性と関係を持ち、コーヒーの味の違いがわからない。あとはジョゼの移動手段にも注目してほしいですね。犬童監督版では乳母車でしたが、今回は最初から車椅子に乗っている。アニメ版にも共通する部分ですが、そちらは言動や振る舞いで「子どもらしさ」が強調されています。なので、韓国版はわりと自立した印象を受けたんです。それも「大人らしさ」に繋がっていて、少々ビターなテイストが生まれた。そのような点にオリジナリティを感じられてよかったです。

今田 韓国版のスパムの卵焼きは本当に美味しそうでした! 大人の嗜好品も、こんな風に物語に使うのか!と良い意味で驚くアイテム。移動手段にも注目ですね。クチナシさんは日本実写版が「青春の一部」だというほどドハマりしたのことですが、韓国版のふたりの恋愛模様についてはどう捉えましたか?


■韓国版は自立し、成熟した大人の恋愛。だからこそビターな味わいに

クチナシ 私は日本の実写版がソフト化された頃に初めて大学の図書館で見たんです。授業の合間だったのですが、次の授業の教授に心配されるほど大号泣しました(笑)。ですからまず先に、犬童版での恋愛についてお話したいのですが、あちらはジョゼのエキセントリックな言動がふたりの恋の始まりと終わりの要因になっていた気がします。あのエキセントリックな性格が恒夫をひき付け、また疲れさせました。ふたりとも急速に相手にのめり込んで、その分だけ辟易していく、岡田さんが言ったように恋愛面も成熟していない幼さがありました。

その点、韓国版のジョゼは、エキセントリックさではなく、すべてを見透かしているような達観した存在感でヨンソクをひき付け、絶望させたように思います。もちろん、日本版のジョゼも障害を抱えて生きる上での様々な経験のためか達観した部分がありましたが、韓国版にはもう少し成熟した恋愛観を感じました。今田さんが「彼の行動が読めない部分もあった」とおっしゃったように、韓国版は分かりやすい感情の乱れや、それを象徴するセリフやイベントが抑えめ。ヨンソクが、自分がジョゼを受け止められる器じゃないことを静かに突き付けられるところは味わい深いですね。

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■韓国版を楽しんだら、日本版と比較してみよう キーアイテムに時代の変化

今田 さすが恋愛映画をたくさん見ているクチナシさん! それぞれの恋模様を深く分析してくださってありがとうございます。みなさんのそれぞれのお話のように見どころ満載の韓国版です。

そして、今、日本実写版とアニメ版も、シネマ映画.comで鑑賞できるんですよね。私は18年前の日本実写版の彼らと同世代なので、もう大分大人になったつもりでしたが……今見ても泣きました。まあ、恒夫みたいに誰にでも優しく、しかもすぐ関係を持ってしまうタイプの男性にはのめり込まずに、割り切ってお付き合いすべしだと思えるようになりましたが(笑)。そしてアニメ版は、画がとても美しくて、いつまでもあの世界に浸っていたい……と現実逃避させてくれました。

M 私も日本実写版の妻夫木さん&池脇さんと同世代なので、学生時代に恒夫みたいな女グセが悪いけど憎めない“愛されキャラ”な男の子いたな~って、すごくキャラ設定が身近に感じました。

クチナシ 私もまだまだ普通に泣けました。恒夫には「ずっと」とか「必ず」とか言葉が持つ重みや責任を感じて欲しいものです。こういうことを盛り上がって言っちゃう人には要注意、という恋愛の教訓になりました(笑)。ただ、本当に妻夫木さんはああいう憎めない、“悪気のない悪を持つ根はいい人”を演じるのが上手い役者さんだな~と改めて思いました。

岡田 池脇さんが演じるジョゼの「帰れって言われて帰るような奴ははよ帰れ」というセリフは、今でも日本映画史に残るセリフだと思っています。再び聞くことができてよかった……本当に人を揺るがす言葉。

僕にとって日本実写版は、妻夫木さん、池脇さん、そして犬童監督の映画であると同時に「くるりの映画」でもあるんですよね。何度「ハイウェイ」を聴いたことか……。劇中音楽も担当されていますよね。韓国版では、その音楽がどのように変容したのかにも着目してほしいですね。日本実写版と韓国版の変容をもうひとつだけ語っておくと、その時代の表し方です。ジョゼが外界のアイテムに驚くという展開が両作にあるんですが、日本版はカーナビ、韓国版はGoogleマップを想起させるものが登場します。この変化も面白かったです。

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■日本実写版で登場する“重要人物”。韓国版では不在だからこそ、ジョゼの態度&セリフから感じとって欲しい

岡田 あと、犬童監督版に出てくる「変態のおっさん」がめちゃくちゃ重要人物だったと、今回見返して気づきました。ジョゼに向ける「性的な視線」について。彼の存在によって「恒夫と変態のおっさんでは、何が違うのか」という問題が浮き彫りになっています。これを03年時点で描いているのが、わりと凄い。

M アニメ版と韓国版は、「変態のおっさん」は出てきませんし、おばあさんの描き方もだいぶ違いましたね。

今田 「変態のおっさん」というネーミングとキャラ設定、ヌードや性描写、障害を持つ人への言葉や意識の向け方など、今同じ表現で作るのはNGなことも多いかもしれませんね。

クチナシ 韓国版でジョゼに向けられる性的な視線は最初の痴漢でアピールされてはいますが、ヨンソクは彼らとどう違うのか問題は、ふんわりです。それが後々ヨンソクの器……ということに繋がるのですが。あと、個人的には犬童監督版でのふたりの情熱的な初めてのセックスシーンが「恒夫と変態のおっさんでは、何が違うのか」という問題の答えを出し始めるスタート地点になっていたように思います。韓国版でキャラクターは出てきませんが、ジョゼの「ヨンソクと変態のおっさんでは、何が違うのか」を問い詰めたい気持ちがあふれる、非常に韓国映画らしい情のこもったセリフがあるので、そこにも注目して欲しいです。

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岡田 「変態のおっさん論」は語るべきポイントですね。コンプライアンス的にも今の時代ではなかなか作れないかもしれないです。であるからこそ、なぜこれが今作れないのかという点も含めて、韓国版と併せて再見してほしいです。細かなポイントですが、象徴的なモチーフ「虎」「魚」も、3作品それぞれかなり異なる使われ方がされているので、そこも注目でございます!

M 日本の実写版とアニメ版はジョゼと同じくらい恒夫にもスポットが当たっていて「ふたりの成長物語」っていう感じがしたんですけど、韓国版はジョゼの年齢設定が上がっていることもあって、無気力に流されるまま生きていたヨンソクが出会った「ジョゼの物語」という感じがしました。ジョゼの生きざまを描いた物語というか。ヨンソクがけちょんけちょんに言われていて思わず庇いたくなりましたが、それはイケメンコラムの方で書きましたのでぜひご確認ください!

<イケメンコラムはこちら>

今田 いやー、「ジョゼ虎」いろんな角度から語れる映画でした……。3作全部見て、原作も読むと、それぞれの世界観の違いをじっくりと楽しめますね。この秋、映画.com編集部オススメの恋愛映画、ぜひ多くの方に見て&語っていただきたいです!


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