テロ首謀者とされた青年を救おうとする弁護士役 ジョディ・フォスターが本人に質問したこと
2021年10月28日 14:00

悪名高きグアンタナモ収容所に収監されたモーリタニア人の青年と、彼を救うべく奔走する弁護士たちの姿を、実話を基に描いた「モーリタニアン 黒塗りの記録」。青年を救おうと行動する不屈の米国人弁護士ナンシー・ホランダーを演じ、第78回ゴールデングローブ賞で最優秀助演女優賞を受賞したジョディ・フォスターが、本作について語った。
弁護士のナンシーとテリー・ダンカンは、モーリタニア人青年モハメドゥの弁護を引き受ける。アメリカ同時多発テロに関与した疑いで逮捕された彼は、裁判すら受けられないまま、拷問と虐待が横行するキューバのグアンタナモ米軍基地で地獄の日々を送っていた。真相を明らかにするべく調査に乗り出すナンシーたちだったが、正義を追求していくうちに、恐るべき陰謀によって隠された真実が浮かび上がる。

モハメドゥ・ウルド・スラヒの著書「グアンタナモ収容所 地獄からの手記」を題材に、「ラストキング・オブ・スコットランド」のケビン・マクドナルド監督がメガホンをとった。
フォスターは本作と現在の米国における政治情勢の関連性の大きさを伝えつつ、「私が魅力を感じたのは、実はパーソナルなストーリーの部分」と明かす。

「(監督の)ケビン・マクドナルドもそうだったと思うわ。脚本に磨きをかける段階に入ったとき、彼はパーソナルなストーリー、エモーショナルなストーリーに重点を置いたの。大事なのはモハメドゥだった。モハメドゥの物語に報いたい、彼のためのスペースを確保したいという思いがあったの。そうすることで、9・11の後、イスラム教徒の男性たちに起きたことを、世界中の人たちが理解できるようにしたかった。9・11に対する、私たち全員の反応がいかに不公正なものだったか。怒り、恨み、裏切り、恐怖という反応が、イスラム教徒の男性たちに何とも異様な時期をもたらしました」
ナンシーとモハメドゥ本人が撮影を訪れたこともあったそう。14年間も拘禁生活を送ってきたモハメドゥについて、フォスターは「彼のエネルギー、楽観性、他の人たちとつながりたい、他の人たちの話を聞きたいという姿勢。好奇心にあふれた人です。希望にあふれていて、いつでもその瞬間を生きています。禅マスターよ。私たちはいつも彼に、禅マスターだねって冗談を言っています(笑)。彼は本も出したの。絶望的な刑務所生活を生き抜く方法についてね。その答えは、愛、信仰、そして希望だったわ」と印象を明かす。

役作りのため、ナンシー本人に質問をすることもあったといい、「私はディテールが好きなんです。どんなものをコレクションしているのか。これはどこで買ったものなのか。両親との関係はどうだったか。そういうディテール、彼女の中の矛盾している要素すべてについて質問しました。彼女はあの真っ赤な口紅とマニキュアやショッピングが大好きで、音楽はカントリウェスタンが好きでレースカーも大好き。聞いていると『え?』って思います。そうした矛盾が最高に素敵だなと思ったので、映画の中できちんとそうしたことに敬意を払おうと思いました」と明かし、さらに重要だったという質問もぶつけたそう。
「それと同時に私が知りたかったのは、モハメドゥが有罪かもしれないと考えるのをやめたのはいつなのか、やめたことがあったのか、そのことに確信を抱いたのはいつなのか、抱いたことがあったのか、ということでした。彼女が弁護してきた人たちのうち、85%の人たちは有罪だったし、彼女もそれを知っている。彼女の使命は、有罪か無罪かに関わらず人々を弁護することなので、この人は有罪だと考えても弁護を断ることはない。だから、そうした考えを手放したのはいつだったのか、手放したのか。あるいは今も心のどこかでひそかに、そのことを自問自答しているのかを聞きました。そして、いかにもナンシーらしく彼女はこう言いました。『もし彼が有罪だという証拠がほんの一かけらの証拠でもあったら、彼らはすでにそれを見つけているはず』って。『そんな可能性はない』とは言わなかった。あまりに退屈になるのでこの映画では取り上げていないけれど、米国政府が怠ったデューデリジェンス(当然やるべき精査)を、ナンシーたちはすべてやっていたからです」
最後に、フォスターは改めて「モハメドゥのような人たちに大きなダメージを与えてきた、ステレオタイプを覆してくれる作品」と本作の魅力を紹介し、「世界の人々、そしてアメリカ人にとっても、人間の精神の適応力を見せてくれます。私たちは、人間性でもって、残酷さや非人道的行為と戦い、乗り越えていくことができる。剣を持ち出す必要はありません。不正に対する最高の治療薬は、公正な世界です」とメッセージを送った。
「モーリタニアン 黒塗りの記録」10月29日から全国公開。
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