【「空白」評論】絶望の果てに見つかる“ほんのわずかな救い”には、心からの優しさが宿っている
2021年9月17日 14:00

いつ頃からか、「人の悲しみに寄り添う」とか「被害者に寄り添う」とか、「寄り添う」という言葉を繁盛に耳にするようになった。そこには共感や助け合いの精神に裏打ちされた善意があることはわかっている。でも、悲劇に見舞われて当事者になった時に、「お前らに何がわかる!」という気持ちが湧くことも容易に想像できる。
人の善意は人を救うことができるのか? 吉田恵輔監督は、友人を亡くした実体験から着想を膨らませたという「空白」で、数多ある“感動のヒューマンドラマ”が描いてきた美談に真っ正直に疑問をぶつけている。
監督が「ヒメアノ~ル」や「愛しのアイリーン」で殺伐とした暴力を扱ってきたことや、娘を亡くした父親がいかにも闇落ちしそうな“狂気”寄せの宣伝から、ギスギスした復讐劇を想像しているなら、どうかその先入観は捨ててしまって欲しい。本作で描かれるのは、「自分の苦しみは誰にもわからない」と思い詰めた2人の男が、被害者と加害者の立場を入れ替えながら、とことん七転八倒する姿だ。
古田新太と松坂桃李が演じる主人公たちの周囲には、それぞれに寄り添ってくれる人が登場する。しかし苦悩の沼に沈んだ2人にとって、善意はお節介に過ぎず、事件をセンセーショナルに取り上げるマスコミや、ことなかれ主義で責任逃れを図るクソみたいな大人たちの悪意が余計に2人を追い詰める。得意のコメディをほとんど封印し、出口のない苦しみを等身大で描こうとする吉田監督の語り口は、観客ひとりひとりを無傷では帰さないくらい誠実で、かつ容赦がない。
しかし、登場人物や観客にビシビシとムチをくれながらも、やはり映画にはアメが欲しいと語る吉田監督だけに、ただ苦しいだけの作品には終わってはいない。そこには確かに、悲劇と背中合わせのそこはかとない喜劇性と、やんわりと射し込む光がある。
人生、万事解決めでたしめでたしなんてことはありえないに近い。しかし絶望の果てに、ほんのわずかな救いなら見つかるかも知れない。そんなギリギリの落とし所を模索する姿勢は、イ・チャンドンの「シークレット・サンシャイン」やケネス・ロナーガンの「マンチェスター・バイ・ザ・シー」にも通じていて、心から信頼できる優しさが宿っている。吉田監督、またですか、またも傑作を更新してしまったのですか!
(C)2021「空白」製作委員会
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