【パリ発コラム】3度目ロックダウンのフランス、映画業界は暗中模索 女優は首相に文化施設再開を全裸で訴え
2021年3月27日 08:00
3月12日に開催された、フランスのアカデミー賞にあたるセザール賞授賞式。度重なるロックダウンのせいで、昨年公開された映画の本数が少ない中、アルベール・デュポンテルの「Adieu les cons」が、作品賞、監督賞を含む最多7部門を受賞した。だが、賞の結果よりもどちらかといえば舞台上のサプライズの方が話題になった印象だ。各受賞者がスピーチで口々に映画館の再開を訴えるなか、賞のプレゼンターとして登場した女優コリーヌ・マジエロ(「君と歩く世界」)が、示威行為としてその場で服を脱ぎ始め、全裸になったためである。
マジエロは当初ジャック・ドゥミの「ロバと王女」を真似て、ロバの着ぐるみ姿で踊りながら登場。だが、その後おもむろに着ぐるみを脱ぐと、「キャリー」のシシー・スペイセクのような血だらけのドレス姿となり、さらにそれも脱ぎ捨てると、ボディには「No Culture, No Future」の文字が。「いまのわたしたちはこういう(瀕死の)状態よ」と語った。背中には、「わたしたちに芸術を返して、ジャン!」と、ジャン・カステックス首相に宛てたメッセージが書かれていた。会場は一瞬しんとなったが、次の瞬間拍手と笑いがわき起こった。
彼女のセンセーショナルな行為には、後日何人かの議員が法的に処罰すべきだと意見したが、結局訴えは通らなかった。マジエロがそこまでしてアピールしたかったのは、コロナ禍ですでに4カ月以上も閉鎖したままの、映画館など文化施設の再開だ。文化業界では、劇場内の衛生管理を厳しくしたにもかかわららず、遊園地などの娯楽施設と十把一絡げに営業を禁止している政府に対する、批判の声が大きくなっている。
また時期を同じくして、フランス国内の20の映画館が政府の決定に逆らって、週末に試験的に開館。「マニフェスト20」と銘打って、安全性をアピールしながら再開措置を訴えると、これに賛同する映画人が後を絶たず、ジュリエット・ビノシュやマチュー・アマルリックをはじめ2000人以上の署名が集まった。
だが、あまりにタイミングが悪いと言うべきか。セザール賞に出席した数日後、文化大臣のロズリーヌ・バシュロのコロナ陽性が発覚。さらにエリザベット・ボルヌ労働・雇用・社会復帰大臣もコロナ陽性で入院し、マクロン内閣は政府内のコロナ対策に追われる事態となってしまった。
そんななか、カンヌ国際映画祭は今年7月上旬に時期を移して開催することを発表した。すでに審査員長は、昨年担当する予定だったスパイク・リーが務めることが決定し、リー自身も「絶対カンヌに行く」と、やる気満々だ。アメリカはワクチンが猛スピードで普及しているだけに、おそらく不可能ではないという読みなのだろう。フランスも、遅れを取りつつも夏までには希望者に行き渡らせることを目標としているからか、今のところ映画祭側はレッドカーペットなどもおこなうつもりらしい。
もっとも、オリンピック同様に世界中からゲストが集まる映画祭が、果たして本当に通常通りの形で開催できるのか。貧しい国はワクチンを普及させられないだろうし、感染率が下がらない国からは入国禁止となる可能性も十分にある。結果的に、かなり不公平な形の開催となってしまうこともあるかもしれない(映画の場合、作品だけ上映することはもちろん可能だが)。
現在、パリを含む16地域が3度目のロックダウンを迎えているフランス。映画業界も暗中模索が続くなかで、なんとか少しでも早く事態が改善に向かうことを祈る他はない。(佐藤久理子)
関連ニュース
「シビル・ウォー アメリカ最後の日」アマプラで見放題配信! 「怪物」「PERFECT DAYS」「劇場版 SPY×FAMILY」もラインナップ
2024年11月28日 10:00
映画.com注目特集をチェック
【推しの子】 The Final Act NEW
【忖度なし本音レビュー】原作ガチファン&原作未見が観たら…想像以上の“観るべき良作”だった――!
提供:東映
物語が超・面白い! NEW
大物マフィアが左遷され、独自に犯罪組織を設立…どうなる!? 年末年始にオススメ“大絶品”
提供:Paramount+
外道の歌 NEW
強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…地上波では絶対に流せない“狂刺激作”【鑑賞は自己責任で】
提供:DMM TV
全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作 NEW
【伝説的一作】ファン大歓喜、大興奮、大満足――あれもこれも登場し、感動すら覚える極上体験
提供:ワーナー・ブラザース映画
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
ハンパない中毒性の刺激作
【人生の楽しみが一個、増えた】ほかでは絶対に味わえない“尖った映画”…期間限定で公開中
提供:ローソンエンタテインメント
【衝撃】映画を500円で観る“裏ワザ”
【知って得する】「2000円は高い」というあなただけに…“超安くなる裏ワザ”こっそり教えます
提供:KDDI
モアナと伝説の海2
【モアナが歴代No.1の人が観てきた】神曲揃いで超刺さった!!超オススメだからぜひ、ぜひ観て!!
提供:ディズニー
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。