米映画史上最大の問題作「マンディンゴ」新場面写真 「フライシャー天才!」黒沢清監督らがコメント
2021年3月6日 18:00
南北戦争前のアメリカ南部を舞台に、奴隷牧場を営む父子の栄光と没落を描いた小説を「ミクロの決死圏」のリチャード・フライシャー監督が映画化、46年ぶりに劇場公開される歴史大作「マンディンゴ」デジタルリマスター版の新場面写真と、蓮實重彦氏、黒沢清監督らからのコメントが公開された。
原作はカイル・オンストットの同名ベストセラー。公開時は世界的ヒットを記録したものの、人種差別的な設定や偏見を助長する内容、過激な描写などが物議を醸した。
19世紀半ば、ルイジアナ州。マクスウェルは自身が所有する広大な農園で、黒人奴隷を育てて売買する奴隷牧場を経営していた。息子ハモンドは父の言葉に従って名家の娘ブランチと結婚するが、彼女が処女でなかったことに憤り、黒人女性エレンとの情事に溺れていく。一方、ブランチも屈強な奴隷ミードと関係を結んで妊娠。横暴な権力者として振る舞ってきた一家は、破滅の道へと突き進んでいく。出演は「ロリータ」のジェームズ・メイソン、「わらの犬」のスーザン・ジョージ、「処刑教室」のペリー・キング、プロボクサーのケン・ノートン。「アラビアのロレンス」のモーリス・ジャールが音楽を手がけた。
3月12日から、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。来場者には、表面に「マンディンゴ」フランス版ポスターを、裏面に上記のフライシャー語録と解説を掲載した「マンディンゴ」B4オリジナル解説ポスター・リーフレットを数量限定でプレゼントする。
幼い黒人の子供たちが扇を緩やかに揺らし、年輩の奴隷たちが穏やかに料理を配膳してゆく薄ぐらい食堂での白人たちの晩餐シーン。そこで驚くべきは、今日の合衆国が抱えている人種問題をいまから四〇年近くも前に描ききっていたことではない。ここにあるのは、問題による問題の廃棄、頽廃による頽廃の廃棄、あるいは褐色による褐色の廃棄ともいうべき美学の実践なのだ。それが今日までアメリカで評価の対象とならなかったことこそが問題なのである。
聡明なリチャード・フライシャー監督の真の評価はいま始まろうとしている。誰もがその評価に加担する権利を旺盛に行使しようではないか。
黒人と白人、親と子、妻と夫、およそあらゆる人間関係が最悪の結末へと至る、震えがくるような歴史暴露映画。と言うか、これは極めて現代的な映画でもあるだろう。フライシャー天才!ゴシック・ホラーのごとき暗黒の映像が最高!そしてスーザン・ジョージ凄まじい!
エンタメでもなく社会派でも芸術でもなく、ただただフライシャーは映画の本質を把握しているという揺るぎない真実が、ここに息を殺して潜んでいる。マディとスーザンとメイスンとペリキンらの影と陰に。
1975年の公開当時の社会情勢と今では比べるのも難しいですが、色々考えさせられながらも、間違いなく心に突き刺さる映画でした。
「マンディンゴ」が鋭く暴きたてるのは、人種差別のおぞましさだけではない。その裏側には、女性を都合よく利用し尽くす家父長制~マチズモの欺瞞と病理が、ぺっとりと張りついているのだ。
どちらも人を人として見ようとしない思想であること、そして残念ながら、2021年現在の人類が決して脱却できてはいない問題であるという点で、共通している。そしてそこにこそ、本作がいままた観返されるべき理由がある……たとえどれだけ不快な鑑賞体験となろうとも。
アメリカ合衆国南部、1800年代半ば。人種差別と性差別が蔓延る野蛮と迷信の支配下。物議に満ちた映画に描かれた暴力とセックスと愚かさ。でも、2020年代の世界にその欠片も残っていないと私たちは言えるでしょうか?「マンディンゴ」を観ることは、世界と映画について考えさせる何か事故のような体験だと思います。
この映画が暴くのは奴隷制度の現実だけではない。クライマックスにおける“マンディンゴ”の怒りと哀しみに満ちた視線は、それをグロテスクな名作として消費する我々にも向けられている。
問題作と言われる通り、耳を塞ぎたくなる台詞、目を覆いたくなる場面が続き、どこまでも非情で非道な映画作品である。結末では思わず声が出た。本作が提示するもっとも痛ましい点は、実際にかつてのアメリカでは肌の色や出自により同じ人間に価値をつけて売買し、家畜のように扱ってきたという歴史的史実が存在することである。そこから我々が学ぶべきことは何か。人間の愚かさを突きつけられる作品だ。
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