「大島渚全映画秘蔵資料集成」発売! 大島作品をめぐる記念碑的な書籍が誕生
2021年2月18日 11:00
日本を代表する映画監督・大島渚氏と、これまで手掛けてきた映画作品をめぐる記念碑的書籍ともいえる「大島渚全映画秘蔵資料集成」(国書刊行会)が、発売されることが明らかになった。
編著は、映画評論家で映画監督の樋口尚文氏。大島家、大島渚プロダクションの全面協力のもと、樋口氏が大島監督の書斎から保管庫、大島プロが管理する資料庫にいたるまで、膨大な量の資料を数カ月にわたり調査。初めて紹介する資料群を通して、大島監督の「創造」と「人間」の全貌に迫るもの。
500ページに及ぶという同書では、各所に秘蔵されていた写真、ノート類など製作時の資料図版を作品ごとに多数収録。そして、大島監督の映画製作過程、その人物像について時代背景を含めて詳細に解説していく。と同時に、大島監督本人の貴重な証言も時系列で並行して配し、激しくも豊穣な軌跡を立体的に浮き彫りにしていく。
松竹ヌーベルバーグを生み出し、「愛の亡霊」でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞するなど常に海外に目を向けていた大島監督。同書ではあらゆる年代を多角的に切り取っているが、「幻の企画と晩年」というパートでは、実現することが叶わなかった監督作「日本の黒幕」、製作が中止になった「ハリウッド・ゼン」、幻となったテオ・アンゲロプロス作品についても触れられるようで、興味は尽きない。
樋口氏は2002年にも「大島渚のすべて」を刊行しているが、大島監督との関係は17歳の頃までさかのぼる。高校生だった樋口氏が監督した自主映画「ゲリラになろうとした男」を、大島監督が激賞したことから交流がスタート。電通に勤務していた時代には遺作となった「御法度」のテレビスポット制作を担当しており、樋口氏でなければここまで踏み込むことは許されなかったといっても過言ではないほどの、唯一無二の“大島本”といえそうだ。
また、同書の刊行を記念し、東京・シネマヴェーラ渋谷で大島監督の特集上映「オーシマ、モン・アムール」が4月3~23日に開催されることが決定。さらに、デジタル修復された代表作「戦場のメリークリスマス」「愛のコリーダが4月16日から東京・ヒューマントラスト有楽町、新宿武蔵野館ほかで2作連続公開される。大島監督作は2023年に国立機関に収蔵される予定のため、今回が最後の大規模全国公開となる。
「大島渚全映画秘蔵資料集成」は、4月に刊行予定。予価8800円(税別)。