【ハリウッドコラムvol.307】アメリカでのワクチン接種ペースと米映画館再開 カギは「ブラック・ウィドウ」と「ワイスピ」最新作
2021年2月17日 12:15

ゴールデングローブ賞を主催するハリウッド外国人記者協会(HFPA)に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリストの小西未来氏が、ハリウッドの最新情報をお届けします。
新型コロナウイルスのワクチン接種がアメリカで始まってから、早くも2カ月が経過した。前政権は2020年内に2000万人の接種を目標に掲げていたが、調整不足やリーダーシップの欠如からあらゆる混乱を引き起こし、実際には接種できたのは280万人程度。その後、政権交代の影響もあってペースが着実に上がっており、現時点(現地時間2月14日)では1日あたりの接種者数が166万人に到達した。
米疾病対策センター(CDC)によると、アメリカでワクチンを1回接種した人は3580万人、効果を最大化させるための2回目の接種を終えた人は1210万人いる。65歳以上の知り合いも続々と接種を受けていて、自分の番もだんだんと近くに迫ってきていると感じている。アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長によると、4月にも一般を対象にワクチン接種が始まるとのことで、いまから腕まくりをして待ち構えている状態だ。

あいにく接種ペースの増加にワクチンの供給が追いついておらず、1日6000人以上の集団接種場となったロサンゼルスのドジャースタジアムも、一時閉鎖に追い込まれた。こうした事態を受け、バイデン政権はワクチンを製造するファイザー、モデルナとそれぞれ1億回分の追加契約結び、今夏までに計6億回分を確保している。アメリカの成人は約2億6000万人なので数は十分だ。
なにかと分裂しがちなアメリカの世論も、新型コロナ収束のためにはワクチンによる集団免疫の獲得しかないと、ひとつにまとまりつつある。規制の強化と緩和の繰り返しにうんざりしていることに加えて、1月上旬に起きた米国会議事堂襲撃事件をきっかけにSNS各社が有害な投稿を規制するようになったことも関係していそうだ。次々と強力な変異株が現れているためスピードアップが急務だが、バイデン米大統領はワクチン供給の遅れから収束は秋以降になるとの見解を示している。ニューヨーク・タイムズ紙の試算によると、現行ペースでは国民の50%が1回目の接種を受けるのは6月26日、70%に到達するのは9月3日、90%は11月10日だという。

こうした現状から、大作映画が再び相次いで公開延期となっている。全米公開を3月2日に予定していた「モービウス」と、4月2日に予定していた「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」が、揃って10月8日に公開を延期。3月5日に全米公開を予定していた長編アニメ「ラーヤと龍の王国」は、ディズニーの配信サービスDisney+での独占配信に切り替えられた。モンスターバース最新作「ゴジラVSコング」に関しては、3月31日に劇場で封切られるものの、同日にワーナーメディアの配信サービスHBO Maxで配信される。

いま注目されているのは、「ブラック・ウィドウ」(5月7日公開)を抱えるディズニーと、「ワイルドスピード ジェットブレイク」(5月28日公開)を有するユニバーサルの動向だ。
常識的に考えれば、集団免疫を獲得できる見込みの高い今秋以降に公開を再延期するか、あるいは、動画サービスで同日配信するのが妥当な線だろう。だが、それは瀕死の米興行界に追い打ちをかけることになる。「ブラック・ウィドウ」と「ワイルドスピード ジェットブレイク」が公開延期となれば、新型コロナウイルス感染拡大が始まった昨年春と同じように、夏の大作映画がなくなるドミノ現象が起きるかもしれない。

できれば、それぞれのスタジオには様子見として延期を1、2カ月程度に抑えて欲しいと思っている。なぜなら、ワクチン接種のペースが劇的に改善する可能性があるからだ。たった1回の接種で済むジョンソン・エンド・ジョンソン製をはじめ、ほかのワクチンが承認される可能性が高いし、モデルナ製も1瓶あたりの接種回数を10回から14回に増やすことが承認されたばかりだ。ワクチンの輸送や保管、接種会場運営などあらゆる側面で改善が行われれば、夏のあいだに新型コロナを抑え込むことも決して不可能ではない。スタジオにはその可能性に賭けて欲しいと思う。
7月4日の米独立記念日に満員のシネコンでポップコーンを頬張りながらハリウッド大作を満喫する。そのあと、近くの公園で花火を鑑賞する。そんなシナリオを思い描きながら、これからの数カ月を過ごしていきたいと思う。
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