【「新感染半島 ファイナル・ステージ」評論】鉄道パニックから、国家崩壊の黙示録映画へ。そして恐怖は激情に変わる。
2020年12月26日 06:00

「新感染 ファイナル・エクスプレス」(16/以下:「新感染」)の続編と聞き「次はジャンボ旅客機で感染が蔓延するのか!?」と思った人は「デッド・フライト」(07)という既存作があるのでそちらを当たって欲しい。軽口はさておき、今回は前作から4年間を経た、パンデミックによって孤立した韓国の惨状が描かれ、映画は鉄道パニックを主体とするものから、国家崩壊の黙示録ものへとフェーズが移行している。なので新幹線に引っかけた邦題「新感染」が成立しないほど、シリーズは広義に拡張されている。
もちろん続編の流儀として「新感染」と接点を持たせた描写は少なくない。感染者が雪崩れのように襲撃してくるダイナミックな視覚表現や、連中以上に恐ろしい人間の本性を暴き出したりと、それらは前作と同じく顔を覗かせる。なにより前作も「新感染半島 ファイナル・ステージ」も、どちらも目標点に向かって高速車両が疾駆する「暴走アクション」という点で同譜を奏でている。その激速バトルのハイボルテージなさまは、観る者のアドレナリンを前作以上に爆上げしていくのだ。
そう、今回の主人公ジョンソク(カン・ドンウォン)は、半島に遺された巨額金を陸送する元軍人で、身内を救えなかったことから自暴自棄となり、グレーな生き方をしている。映画はそんな彼が現地で生存者と遭遇し、やがて自身を苛み続けてきた“悔い”と向き合うことになるのだ。前作では仕事で家庭を顧みなかった主人公が、感染者との戦いを通じて娘との“絆”を強めていったように。
封鎖された都市が無法地帯と化し、主人公がそこに赴きミッションを遂行するという設定は、ジョン・カーペンターの名作「ニューヨーク1997」(81)を強く連想させる。しかし感染パニックを熱い人間ドラマへと換言していき、観る者の激情を高めていくスタイルは、こうしたダークスリラーや限定空間サスペンスというサブジャンルを越え、韓国映画らしい精神性が何ものにも増して主張を放っていく。
感染をめぐる避難者の排他的な扱いなど、フィクションを通じて見えてくるのは、まさに新型コロナウイルスがもたらす現実の様相。なのでエンタメと割り切りがつかない部分もあるが、観る者が最も高揚感を覚えるであろうシチュエーションで、あのジョージ・A・ロメロのクラシックホラー「ゾンビ」(78)を思わせるところ、ゾンビ映画としての本気と仁義が感じられ、涙腺の決壊を抑えられない。
関連ニュース






映画.com注目特集をチェック

映画「F1(R) エフワン」
【語れば語るほど、より“傑作”になっていく】上がりきったハードルを超えてきた…胸アツをこえて胸炎上
提供:ワーナー・ブラザース映画

でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男
【あり得ないほど素晴らしい一作】この映画は心を撃ち抜く。刺すような冷たさと、雷のような感動で。
提供:東映

たった1秒のシーンが爆発的に話題になった映画
【この夏、絶対に観るやつ】全世界が瞬時に“観るリスト”に入れた…魅力を徹底検証!
提供:ワーナー・ブラザース映画

186億円の自腹で製作した狂気の一作
【100年後まで語り継がれるはず】この映画体験、生涯に一度あるかないか…
提供:ハーク、松竹

なんだこの映画は!?
【異常な超高評価】観たくて観たくて仕方なかった“悪魔的超ヒット作”ついに日本上陸!
提供:ワーナー・ブラザース映画

すさまじい映画だった――
【あまりにも早すぎる超最速レビュー】全身で感じる、圧倒的熱量の体験。
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

“生涯ベスト”の絶賛!
「愛しくて涙が止まらない」…笑って泣いて前を向く、最高のエール贈る極上作【1人でも多くの人へ】
提供:KDDI

究極・至高の“昭和の角川映画”傑作選!
「野獣死すべし」「探偵物語」「人間の証明」…傑作を一挙大放出!(提供:BS10 スターチャンネル)