【コラム/細野真宏の試写室日記】「鬼滅の刃」と同じ週刊少年ジャンプ作品の映画化「約束のネバーランド」のポテンシャルは?
2020年12月18日 15:00
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
先週末は、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」と「新解釈・三國志」が想定通りのポテンシャルを発揮しました。
まず、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は先々週末の興行収入6億5551万9250円から興行収入9億3941万1200円にアップ。ポテンシャルとして考えていた興行収入約10億円を見事に達成しました。
その結果、興行収入302億8930万7700円となり、「千と千尋の神隠し」の308億円を超える歴代興行収入1位まで、あと6億円弱となっていました。
そのため、12月21日(月)にはニュースで歴代興行収入1位になるはずでしたが、突如として、12月15日に事態が動きました。
配給元の東宝が、歴代興行収入1位の「千と千尋の神隠し」の興行収入を316億8000万円に上方修正したのです。
ただ、実はこれは「想定内」の動きでもあって、2020年11月4日更新の第98回試写室日記【劇場版「鬼滅の刃」興行収入200億円突破はいつ? 「千と千尋の神隠し」超えの可能性は?】(https://eiga.com/extra/hosono/98/)で以下のような文章を書きました。
【現状の歴代1位の「千と千尋の神隠し」の 興行収入308.0億円というのは、実は、6月26日からのリバイバル上映分の約9億円がカウントされていない数字で、これは配給会社の東宝が加算するかどうかを最終的に決められる仕組みになっています。アメリカの大統領選挙ではありませんが、もめる要素は無い方が望ましいので、新型コロナウイルスで窮地に陥った全国の映画館を(今回の映画のメインである煉獄杏寿郎のように)救っている「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」には、まずは興行収入350億円規模を目指して戦い抜いてほしいところです。】
つまり、ようやく「もめる要素がなくなった」ので、私はこれで良かったと捉えています。
さらに言うと、いくら直前に上方修正がされても、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は止まらず「歴代興行収入1位」は来週末には達成できて、ニュースが1週間ズレて28日(月)になるだけだと想定しています。
年内に達成できると、閉塞感のある状況で非常に活力のある景気の良いニュースとなるでしょう。さらに年末31日の「紅白歌合戦」という国民的な番組でも盛り上がって、列車は加速すると思っています。
そして、もう一つの注目作であった「新解釈・三國志」も期待通りの成績になっています。
大きな焦点の一つが、「今日から俺は!!劇場版」にどこまで迫れるのか、でしたが、「新解釈・三國志」は金曜日からの3日間で興行収入7億7186万円。「今日から俺は!!劇場版」は金曜日からの3日間で興行収入7億8800万円だったので、ほぼ同じになっています。
さらに、個人的には「福田雄一監督作品のブランド力」がどこまで高まっているのか、というのが最大の注目点でした。
東宝の初日のアンケート結果によると、「今日から俺は!!劇場版」の時は「福田雄一監督・脚本の作品だから」ということで選んだ人は12.6%でしたが、「新解釈・三國志」は「福田雄一監督・脚本の作品だから」が30.4%と、1割から3割に急増していました!
福田雄一監督映画を第1作目からずっと見続けていた私としては、ようやく「福田雄一監督映画のブランド力」が広く認知されるようになって、とてもうれしいです。
やはり映画館での予告編効果は抜群で、前回考察したように、今回の成功は、東宝と日本テレビの戦略の勝利、ということになるでしょう。
配給元の東宝は、「新解釈・三國志」が「今日から俺は!!劇場版」と同様な推移になることを期待しているようで「興収50億円を狙える」と公表しています。
ただ、現時点の私はまだ「新解釈・三國志」の最終的な興行収入がどうなるのかは、そこまで楽観できない状況です。
現状での懸念材料は、見た人の評価です。
映画.comのレビューでは、「新解釈・三國志」は(5点満点中)2.5点となっていて、「今日から俺は!!劇場版」の3.7点から大きく落ちています。
また、yahoo!映画でも、「新解釈・三國志」は(5点満点中)2.56点となっていて、「今日から俺は!!劇場版」の3.91点から大きく落ちています。【すべて12月16日時点】
果たして本作の「観客からの評価」がどう興行収入に影響を及ぼすのかは、今後の福田雄一監督作品の行方を考える上でも重要になりそうで、興味深いところです。
さて、今週末も冬休みに向け大型の新作映画が複数公開されるので、さすがに座席配分も厳しくなっています。これまで猛スピードで走り続けていた反動もあり、そろそろ「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の週末動員数が1位を維持し続けるのは難しいのかもしれません(とは言え、来週は再び1位になると想定していますが)。
今週末公開の新作で私が一番面白かったのは「約束のネバーランド」です。そこで、今回はこの作品について考察します。
まず、本作の製作委員会は「フジテレビ、集英社、東宝」の3社となっています。
「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」と同様に、真ん中に集英社が入っているのは、原作が同じく「週刊少年ジャンプ」の作品だからです。
2016年から4年にわたって連載された作品で、こちらも単行本が全20巻と、「鬼滅の刃」の全23巻と似たような巻数となっています。
そして、累計発行部数は2500万部を突破している人気作品の実写化なので、ファン層は多いのでは、と想定しています。
(ちなみに、テレビアニメ化もされていて、アニメ版は「鬼滅の刃」と同じくアニプレックスが主導し、製作委員会は「アニプレックス、フジテレビジョン、集英社、CA-Cygamesアニメファンド、電通」となっています)
本作の実写版は、映画では強さを発揮することが多いフジテレビ映画なので、その点からも期待が高まります。
ただ、本作で唯一引っかかっていたのは、フジテレビ映画におけるヒット率の高い、自社の監督ではない点です。
本作の平川雄一朗監督は、作風は安定しているものの、個人的にはまだ安心感が持てないため、正直、心配していました。しかし、実際に本作を見てみたら杞憂に終わりました。
原作の独特な世界観があり、単純に面白く、なかなか興味深い作品に仕上がっていました。
浜辺美波、北川景子、板垣李光人らの演技も良かったですし、私は、役者としての渡辺直美は本作が一番光っているような気がしました。
どうやら原作とは少し設定が変わっているようですが、それは特に問題ないでしょう。
批判が出るとしたら、CGと、メインキャストの一人である城桧吏の「声」くらいではないでしょうか。
まず、CGについて。本作では、ほんの一部でしかないですし、そもそも日本のCGは「デスノート」や「鋼の錬金術師」くらいから、それほど変化のない状況で、私は許容範囲という認識です。
また、「万引き家族」の名演でブレイクした城桧吏は、たぶん声変わり(変声期)の影響で、「これからの俳優」だと思っているので温かく見守ってあげたいところです。
ようやく期待できる作品が増えてきて、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の話題も連日のように報道され、映画業界への注目は日に日に高まってきています。
「約束のネバーランド」の興行収入は、まずは(通常のヒットを超える)15億円は狙えると想定していますが、久しぶりの邦画実写ファンタジー大作なので、上振れもあり得るのかもしれません。
今週末は「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」、「新解釈・三國志」、「約束のネバーランド」のどれが1位になってもおかしくない状況で、結果に注目したいと思います。
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