【ホラー映画コラム】 リドリー・スコットやデヴィッド・リンチなど後世の巨匠たちにも影響を与えたマリオ・バーヴァの作品の中から3本をピックアップ
2020年11月21日 21:00
Twitterのホラー界隈で知らぬ者はいない人間食べ食べカエル氏(@TABECHAUYO)によるホラー映画コラム「人間食べ食べカエル テラー小屋」では、“人喰いツイッタラー”が、ホラー映画専門の動画配信サービス「OSOREZONE」の配信中のオススメ作品を厳選し、その見どころを語り尽くす! 今回は、 イタリアンホラーが隆盛するきっかけを作り、リドリー・スコットやデヴィッド・リンチなど後世の巨匠たちにも影響を与えたマリオ・バーヴァ作品の中から、食べ食べさんお気に入りの作品をご紹介。
「サスペリア」や「ビヨンド」など、これまでイタリアからは、血みどろで美しいホラー映画がたくさん誕生してきた。このコラムを読んでくださっている方ならご存じだと思うが、イタリアンホラーが隆盛するきっかけとなったのがマリオ・バーヴァという人物である。
1914年、イタリアのサン・レモで生まれたバーヴァは、映画監督や撮影監督をしていた父エウジェニオ・バーヴァの影響を受け、自身も撮影監督となった。やがて彼は自ら映画を撮り始める。予算の限られた中で創意工夫を凝らして映像を作り上げるスキルに長けていたバーヴァは、その手腕を存分に発揮して様々な傑作を世に生み出した。それ等の作品は、イタリア映画界にホラーを広めるだけに留まらず、リドリー・スコットやデヴィッド・リンチなど後世の巨匠たちにも影響を与えている。この度、OSOREZONEでマリオ・バーヴァの作品が一気に配信開始することとなる。そこで今回は、その中から個人的に好きなバーヴァ監督作品を3本ピックアップして紹介したい。
最初は「呪いの館」だ。これはバーヴァ監督作の中でも特に評価の高い一作。マーティン・スコセッシ監督曰く、本作がバーヴァ監督の最高傑作とのことだ。実際、その評価も納得の面白さ。金田一耕助シリーズ的なストーリーに、マジの怪奇現象を取り入れた展開は、ミステリーとホラーの良いとこ取りをした楽しさ。ロケーションとセットも素晴らしい。ロケ地はイタリア・ローマの北方に位置するカルカータという街。「天空の城ラピュタ」のモデルにもなっただけあって、街並みが素晴らしすぎる。この景観の効果もあり、全編ただならぬ雰囲気に満ちている。何も起きずとも画面に引き込まれてしまう。そして、独特のライティングも見事。至る所に差し込まれる緑色が映える。バーヴァ監督の色彩感覚は好きだなあ。
それ以外にも、白い少女の霊というビジュアルイメージや、Jホラーの先駆けとも言えるさりげない心霊描写(窓の外に手だけ映り込むシーンが最高)など、後世に影響を与えたホラー演出が満載。全編、鮮烈な映像だらけだが、中でも、主人公がドアを開け続けて部屋を駆け抜けるうちに自分自身に追いついてしまうシーンは衝撃的だった。バーヴァ監督の代名詞ともいえる映像センスが炸裂した名作ホラーである。
続いて紹介するのは「新エクソシスト 死肉のダンス」。正直、これはかなり人を選ぶだろう。「エクソシスト」がブームになったのを良いことに、元々はお蔵入りになっていた「リサと悪魔」という作品に悪魔祓いのシーンを追撮して新たな作品として作り上げた、商魂たくましい作品である。だが、意外と侮れない。元の映像を上手く編集して過去パートとして組み直しているのだが、思いの外かなり上手くハマっている(と、個人的には思いました)。ずっと白昼夢を見ているような感覚で、観ていくうちに段々とクセになってくる。追撮した悪魔祓いパートも見どころだ。やっている事はほぼ「エクソシスト」のパクリだが、足をM字に開脚して手だけで立つという、ジャッキーの修行にしか見えない態勢での悪魔憑き演技など、しっかりとオリジナルな要素も取り入れられている。
最後に紹介するのは「血みどろの入り江」だ。71年制作なのでバーヴァ監督作品としては後期に位置する。ちなみに私のファーストバーヴァは本作である。何者かに登場人物が次々と無残に殺されるという筋書きの、いわゆるスラッシャーの走りと言われている作品だ。ちなみに本作が、あの「13日の金曜日」の元ネタなのは有名な話。顔面に食い込む刃物など、グッとくる殺戮シーンが目白押しだ。さすがに映像に古さは感じるものの、工夫に富んだショック映像は今見ても十分に楽しめる。
特筆すべきは、生きたタコにまみれた死体のシーン。殺された男の顔面をウネウネとタコが這う映像はあまりに衝撃的で、人によっては見た後しばらくタコが食えなくなることだろう。吸盤とか大丈夫だったんだろうか。あれ、生きてる時にくっつくと結構離れないからなあ……と無理やりにでも思考を逸らさないと、とてもじゃないけど受け付けられないほど強烈にグロテスクなシーンであった。ちなみに日本版のVHSジャケットには、このタコにまみれたシーンがデカデカと写し出されている。いや確かに一番印象に残るところだけど、ジャケットにしちゃダメでしょうよ!当時、レンタルビデオ店でうっかり手に取った人がどう思ったのか気になるところだ。
というわけで、今回はバーヴァ監督作品を3本紹介した。是非、配信が開始されるこの機会に他作品も含めて観てほしい。余談だがマリオ・バーヴァの息子ランベルト・バーヴァも映画監督を生業にし、「デモンズ」等あらゆるイタリアンホラーを手掛けている。なんてすばらしい親子なのでしょうか。
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