西川美和監督最新作「すばらしき世界」トロント国際映画祭正式出品
2020年7月31日 05:00

[映画.com ニュース] 西川美和監督と役所広司が初タッグを組む「すばらしき世界」が、米アカデミー賞の前哨戦となる第45回トロント国際映画祭(9月10~19日)へ正式出品され、ワールドプレミア上映されることがわかった。あわせて、公開日が2021年2月11日に決定した。
原案となるのは、「復讐するは我にあり」で直木賞を受賞した佐木隆三氏が1990年に刊行した小説「身分帳」。デビュー以来、一貫してオリジナル脚本にこだわり続けてきた西川監督が、初めて“小説原案の映画化”に挑戦している。実在の人物をモデルにした小説の舞台を約35年後の現代に置き換え、徹底した取材を敢行。13年の刑期を終えた男の人生再出発をめぐる物語を紡ぎ上げた。
カナダで毎年9月に開催されるトロント国際映画祭は、北米最大の国際映画祭であり、過去に「スポットライト 世紀のスクープ」「ラ・ラ・ランド」「グリーンブック」などが、最高賞にあたる観客賞を受賞。同賞の受賞作が、米アカデミー賞をはじめとする主要映画賞の有力候補となることから、その年の賞レースを占う“アカデミー賞前哨戦”ともいわれる。
本年度は、新型コロナウイルス感染拡大影響により世界中の映画祭が規模縮小を余儀なくされ、同映画祭も長編映画50本、短編映画プログラム5本と、例年の4分の1程度に絞られている。「すばらしき世界」は、その非常に狭き門を突破。多くの注目を集める映画祭での正式出品は非常に意義深い。上映時の英題は「Under The Open Sky」。これは、主人公の元殺人犯・三上正夫(役所)が生きる世界を印象付ける“セリフ”から引用されたものだ。受賞結果は、映画祭最終日にあたる9月19日(現地時間)に発表される。
同映画祭への出品は、3作品連続となった西川監督。「トロント国際映画祭には格別な思い出があります。『夢売るふたり』の上映中、ラスト20分のところで観客の目の前でフィルムが燃えたのです。映画は突然中断し、私は映写技師のところに駆け込み、スタッフは大慌てでしたが、応急処置で上映が再開されるまでの30分間、地元の映画ファンのほとんどが席を立たずに辛抱強く待っていてくれており、最後は同じ旅を終えた仲間のような拍手で迎えてもらいました。北米最大の映画祭であると同時に、市民や映画ファンと距離の近い、大好きな映画祭です」と振り返る。そして「コロナの影響でたくさんの映画が人に観てもらう場を失う中で、『すばらしき世界』の招待を決断して頂いたことに、心から感謝しています。今作も、“燃えるような”上映になりますように!」と語っている。
役所は「(第50回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した)『うなぎ』で初めてカンヌ国際映画祭に参加しました。その時、海外の観客と一緒に観て『こんなにも、笑ってくれるんだ!』って驚きましたが、この『すばらしき世界』にも、『うなぎ』と共通するような、ユーモアや笑えるところがあります」と説明。「まっすぐ過ぎて不器用な三上と本作を、是非楽しんで頂けたらと思っています」とコメントを寄せている。
「すばらしき世界」には、仲野太賀、長澤まさみ、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、安田成美も出演。21年2月11日から全国公開。
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