【「千年女優」評論】邦画の名作へのオマージュも、時空を越えた女優の一代記
2020年7月19日 22:00

[映画.com ニュース] 新型コロナウイルスの影響により、多くの新作映画が公開延期となり、映画ファンの鑑賞機会は減るばかりです。映画.comでは、「映画.comオールタイム・ベスト」(https://eiga.com/alltime-best/)に選ばれた、ネットですぐ見られる作品の評論をお届けいたします。今回は「千年女優」です。
普段アニメを見ない映画ファン、なかでも昔の邦画が好きな人にお勧めしたい1本。「PERFECT BLUE(1998)」に続く今敏監督の劇場アニメ第2作で、原案は監督自身が手がけている。ドリームワークスで全世界配給され、海外でも高く評価された。
「千年女優」という魅力的なタイトルどおり、原節子や高峰秀子を彷彿させる架空の名女優・藤原千代子の一代記。女優を引退した老齢の千代子のもとに彼女の大ファンである映像制作会社の社長が訪れ、ドキュメンタリー作品のためにカメラをまわす。千代子は昔の自分に思いをはせながら女優時代のことを語りだす――するとシームレスに当時の思い出の場面につながり、若い頃の彼女がさまざまな役柄で出演した映画のなかも舞台となり、虚実入り混じった物語が展開される。
聞き手の社長とカメラマンも彼女の思い出に入りこみ、映画内で共演したり彼女の言動にツッコミを入れたりしながら物語に介入していく。こう書くとメタフィクションの小難しい映画にみえるがむしろ分かりやすく、尺も87分とコンパクト。戦国時代から未来まで時空を越え、黒澤明の「蜘蛛巣城」、小津安二郎作品など邦画の名作へのオマージュも交えながらテンポよく場面が切り替わっていく。好きな映画に「スローターハウス5」を挙げる今監督らしい編集の切れ味のよさが全編冴えわたっている。
千代子が女優を続けてきたのは、思いをよせる絵描きの男性に再会するためだった。ひたすら彼の影を追う健気な姿を縦軸に物語は進むが、しめっぽい悲恋ものには着地せず、終盤で彼女が放つある一言で物語はさらにツイストする。観客が抱いていた千代子像が反転し、公開当時このシーンは特に話題になった。
クリスマスの一夜の奇跡を描いたハートウォーミングな第3作「東京ゴッドファーザーズ」でも、今監督は登場人物に過度に感情移入させるつくりにはしなかった。そんなクールな語り口も今監督作品の魅力だ。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
面白すぎてヤバい映画
【目が覚める超衝撃】世界中の観客が熱狂・発狂し、配給会社が争奪戦を繰り広げた“刺激作”
提供:松竹
この冬、どの映画を観たらいいですか?
【答え:私はこれを絶対に観ますね!!】心の底から推す理由が、たんまりあります!
提供:ディズニー
人生にぶっ刺さる一本
人生に迷ったとき、この映画が“効く”だろう。すべての瞬間が魂に突き刺さる体験が待っている
提供:ディズニー
日本で実際に起きた“衝撃事件”を映画化
【前代未聞の事件】そして鑑賞後、あなたは“幸せ”の本当の意味を知る――
提供:KDDI
ヤバすぎる世界へようこそ
【この映画がすごい】“最弱の青年”ד下半身を失ったアンドロイド”=非常識なまでの“面白さと感動”
提供:ディズニー
てっぺんの向こうにあなたがいる
【世界が絶賛の日本映画、ついに公開】“胸に響く感動”に賞賛続々…きっとあなたの“大切な1本”になる
提供:キノフィルムズ