オダギリジョー監督作「ある船頭の話」にベネチアが熱いスタンディングオベーション
2019年9月7日 12:59

[映画.com ニュース] 第76回ベネチア国際映画祭で9月5日(現地時間)、イタリアの批評家が選出する「ベニス・デイズ」部門に選出されたオダギリジョー監督の「ある船頭の話」が上映され、オダギリ監督とともに主演の柄本明、村上虹郎が日本から参加し、熱いスタンディングオベーションを浴びた。10年越しの企画を実現させたオダギリ監督は、緊張した面持ちのなかにも、感動を隠せない様子だった。
本作は、明治後期から大正初期を思わせる時代に、大自然に囲まれた川辺の小屋で、ひとり船頭を生業にする主人公トイチ(柄本)の姿を描く。近隣の馴染みの客から見ず知らずの旅人まで、さまざまな人間に触れるなか、たゆたう船のごとくゆったりとした彼の暮らしが、ある少女(川島鈴遥)の出現によって乱されていく。ウォン・カーウァイ映画などで知られるクリストファー・ドイルのカメラが、壮大な自然の美しさや厳しさをとらえ、輪廻天性のテーマを含むドラマが現地の観客を圧倒した。
(C)Kazuko Wakayama公式上映では、終演後に観客との質疑応答が行われ、「今回の映画祭でたくさんの映画を見ましたが、この作品がもっとも詩的で美しく、突出していました」という意見があった。また、黒澤明の「どですかでん」などの影響はあったかという質問があがり、オダギリ監督は「黒澤明監督は尊敬する監督のひとりですが、この映画の影響という点では溝口健二の『雨月物語』のほうが、映画のテーマや描きたいことが似ていると思います。(『雨月物語』がベネチアで銀獅子賞に輝いていることから)この映画もベネチアに選んで頂いて、不思議な縁を感じます」と答えた。
さらに質疑応答後、日本の報道向けの取材では、オダギリ監督、柄本、村上の三者ともに喜びをたたえた満足げな表情を浮かべた。オダギリは、監督として映画祭に参加したことについて「あんなに温かい拍手が長い時間続いたのと、みなさんの顔がとても満足しているように見えたのが嬉しかったです。(上映中は)人が動くたびに気になって、俳優として見ているよりも気の散り方がまったく違いました。(一旦会場を出て)戻って来る人がいると、トイレだったんだと思い、嬉しくなりました」とホッとした様子だ。
一方、柄本は「疲れました(笑)。今日で(見るのは)2回目なのですが、改めて監督の志の高さを感じました」と告白。村上は、「かなり体力と気力を奪われました(笑)。僕が見るのは今回が3回目なんですが、3回とも違う映画を見ている印象がありました。(質疑応答中)目の前の観客が、映画に対してここはこうでしょ、と言い合っている感じがあって、それはなかなか日本では見られない光景なので、見られてよかったです」と答えた。オダギリはベネチアをきっかけに今後も海外映画祭への出品に意欲を見せ、「みんなで手分けしていろいろなところに行けたらいいですね」と語った。本作は日本で9月13日に公開される。
(C)Kazuko Wakayamaまたベネチアでは今年初めての試みとして、ユニジャパンがイタリア映画・マルチメディア産業協会と協賛し、日本映画のプロモーションの一環としてプレス、インダストリー向けの日本映画特集と交流イベント「ジャパン・フォーカス」を実施した。ここでは蜷川実花の「人間失格 太宰治と3人の女たち」、周防正行の「カツベン!」などが上映された。日本映画を海外に向けてプロモートするこうした動きが、今後も定着するのかどうか、見守りたい。(佐藤久理子)
(C)2019「ある船頭の話」製作委員会
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