雨月物語

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劇場公開日

雨月物語

解説

巨匠・溝口健二の代表作で、戦乱の中で世俗の欲に翻弄される人々を幽玄な映像美で描き、多くの映像作家に影響を与えた世界的名作。上田秋成の読本「雨月物語」に収録された「浅茅が宿」「蛇性の婬」の2編にモーパッサンの短編「勲章」を加え、川口松太郎と依田義賢が脚色、宮川一夫が撮影を手がけた。戦国時代、琵琶湖北岸の村。戦乱の到来を機に大儲けを狙う陶工・源十郎と、侍として立身出世を夢見る義弟・藤兵衛は、それぞれの家族を連れて舟で琵琶湖を渡り都を目指す。旅の途中、源十郎の妻子は戦火を怖れて引き返し、藤兵衛は妻を捨てて羽柴勢に紛れ込む。やがて源十郎は、若狭と名乗る妖艶な美女から陶器の注文を受け、彼女の屋敷を訪れるが……。1953年・第14回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞に輝いた。

1953年製作/96分/日本
配給:大映

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第28回 アカデミー賞(1956年)

ノミネート

衣装デザイン賞(白黒) 甲斐荘楠音
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映画レビュー

4.5溝口作品の傑作に触れる。祈りにも似た思いに触れる。

2020年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

溝口作品でも評価の高い本作は、戦によって村人のささやかな幸せが無残に奪われていく様と、非常時に試される愛の形といった部分が際立った幻想譚だ。物語自体は江戸時代に執筆されたというが、1953年という製作年から考えると、観客の多くはこの戦争をつい数年前の「太平洋戦争」として受け止めたはず。家族と生き別れたり、死んだ妻と会いたいと思ったり、どうにかして生き残ろうと歯をくいしばる姿には、当時の人々の胸の内側が大いに反映されたことだろう。もちろん、湖に立ち込める不気味な霧に始まり、お屋敷にはびこる生き霊、そしてラストを飾る妻の逸話に至るまで、心の内側に隙間風が吹くような不可思議なエピソードとそれを見事にまとめ上げる演出には舌を巻くばかり。それら決して美の範疇で終わらせず、自宅に灯った明かりがもう二度と消えませんようにと、こちらを祈りにも似た気持ちにまで高める流れに、溝口作品の真骨頂を見た思いがした。

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牛津厚信

4.0二つの幽霊譚を合体した物語

不死鳥さん
2022年8月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

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不死鳥

4.5田中絹代に出会い直すことができた

talismanさん
2022年5月12日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

この映画で私は初めて田中絹代さんを発見しました。今まで色々な監督の映画で見てきた女優さんです。山田五十鈴や京マチ子のような美女タイプではなく小柄で可愛らしいが、立派過ぎる台詞を言わされてる感じも強く、正直、あまりよくわからない女優さんでした。

そしてこの「雨月物語」で田中絹代に出会い直した。田中絹代は聖女で、清らかで優しくあたたかく限りなく優しい。すべてを包み込んでくれる。共に居るだけで自分も清められるようなそういう存在でした。何かあるとすぐに子どもを抱きかかえるその速さ。夫を慈しむ思いと言葉。夫の源十郎(森雅之)が家に戻ると誰も居ない。が、ふと見ると火のついた囲炉裏端に妻の宮木(田中絹代)が座り家事をしながら夫を待っていた。向こうには息子が眠っている。息子を抱きながら眠る源十郎。この世に居なくてもそういう想いで夫と息子をあの世から見守っている宮木。本当にあり得るんだと思わせる優しさとあたたかさを醸し出す田中絹代の演技は心から素晴らしいと思った。涙が出た。

都に向かう船のシーンは幻想的で、霧に包まれた湖の風景では(よくわかってないけれど)旅に出るオイディプスの神話を思い浮かべた。若狭(京マチ子)が住まう朽木屋敷は能舞台のような雰囲気で、若狭が纏うのも能の衣装、歩き方も能、化粧も能の面。その高貴な娘の顔が源十郎に正体を知られたことで恐ろしいような様相になるが鬼にはならない。ひたすら悲しい。オープニング・クレジットから能の鳴り物が響き、朽木屋敷では能管と謡曲が聞こえる。死者と生きている者が出会う能舞台。それがこの映画で自然に描かれている。

金や出世を求める男たち、愛する人と共に静かに生きていきたい女たち。この映画の女性に溝口監督はもう男性を告発させない。なぜなら女たちー若狭も宮木もーは既に死んでしまっているから。ローカルな日本の能の幽玄や死者への思いが、普遍的なものとして理解され感動を与えることができた希有な邦画、素晴らしい映画だと思う。

おまけ
京マチ子は29歳!には見えない大人で凄みのある絶品の演技。田中絹代は44歳!には見えない健気で包み込むあたたかさ溢れる絶品の演技。森雅之に内野聖陽は似てる。

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talisman

4.0ジャポニズム、そして戦後の鎮魂

2022年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

知的

映像に酔いしれる。

姫の、妖艶でいながら、ふとした拍子のあどけなさ。恋する乙女と、恋に縋りつく女の表情。そして怖さ、裏切られたことを知った時の切なさ。

右近の、慎み深さ。それでいて有無を言わさぬ押しの強さ。思いを遂げられないことを知った時の無念さ。

この二人が、滑っているかのように、土を踏んで歩いていないかのように、動く。
この二人が動くほどに、光と影が姿を変える。
生活感など、微塵も匂わせない佇まい。けれど、そこに”思念”ははっきりと伝わる。

息が白く見えるのでさえ、演出かと思ってしまうような幽玄の世界。

屋敷の調度とともに、ため息が出る。

田舎の鄙びた風景。基本、同じことの繰り返しが続く静的な日々。-雑兵さえ来なければ。

都会のエネルギッシュでダイナミックさ。-そのすぐそばにある落とし穴。

屋敷の、雅やかなものを愛でつつの、姫たちの心づくし、完璧な世界。-見失う現実。

その、田舎と、都会・屋敷を繋ぐ、びわ湖の、セット丸出しなのに、あの怖さ・不気味さ。

もう、これだけでお腹がいっぱいになる。

原作は、学校で名前だけは習う、読み継がれている江戸時代の作品・『雨月物語』の中からの脚色。

漫画とか、いろいろな媒体で脚色される『浅茅が宿』。
 『木綿のハンカチーフ』にも通じる、都会の色に染まって勘違いした男が、都会にすべてを絞りとられて、故郷に帰ったら…という脚色の方が好き。

『蛇性の婬』は未読だけれど、『白蛇伝』の方が好き。
 これまたいろいろな媒体で表現される『安珍清姫』『耳なし芳一』『牡丹灯篭』の方が壮絶。
 この映画では、姫と右近も、男も、ちょっと中途半端。
 正体がばれた時の演出は必見だけれども。

原作は、もっとシンプルな、どんな時代にも通ずる人間の業ーあさはかさや切なさーがあぶりだされるような、胸を締め付けられるような話。だからこそ、江戸時代の作品なのに、いまだに読み継がれる名作。

その二本をまとめた話に加えて、オリジナルの、もう一組の夫婦を描く。

夫の役目って何なのか。
 立身出世や金儲けをして、妻や子に良い暮らしを与えること?
 家族の安全を守ること?
 こんな問いかけも、この映画は訴えてくる。

 ちょっと、説教臭くなってしまった。
 というか、全部戦さのせいになってしまった。

落ち武者や、雑兵のすさまじさよ。
彼らが傍若無人にふるまわなかったら、女たちの運命も違っただろうにと思わされるような筋。

「つわものどもが夢のあと」的な無常観を描きたかったのか。

豊臣が天下を取るまではまだこの地は戦乱に巻き込まれるだろうに、映画は、霊魂に見守られながら、平和な日常で終わる。
日本昔話的に収めたかったのか。

1950年代に制作された映画。まだ戦争の記憶も生々しいころ。
 終戦直後は、家を焼かれ、家族を失い、生きるために、映画の落ち武者や雑兵のようなことをする輩もいたと聞く。
 そんな時代を生きた人々への鎮魂のように見えてしまった。

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とみいじょん
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