高畑勲監督の回顧展スタート 「パンダコパンダ」「ハイジ」新発見資料など1000点以上展示
2019年7月1日 15:30
[映画.com ニュース] 昨年4月5日に死去した日本アニメーション界の巨匠・高畑勲監督の回顧展「高畑勲展――日本のアニメーションに遺したもの」の記者内覧会が7月1日、会場となる東京国立近代美術館で行われた。
本展は、“絵を描かないアニメーション監督”高畑勲の演出術に注目し、制作ノートや絵コンテなど1000点を超える作品資料を展示しながら、高畑監督の作品世界をひも解いていく。会見には、同館館長の加藤敬氏、本展を担当する同館主任研究員の鈴木勝雄氏が出席。鈴木氏は、本展に関して「もともとの始まりは、高畑さんと一緒に展覧会を作ろうとしていた」「高畑さんの生前から準備をしていた」と明かし、「高畑さんが亡くなられたことによって大きく変わりました。これは高畑さんの追悼展でもあります。回顧展でもあります」と開催の経緯を述べた。
さらに鈴木氏は、本展の大きな見どころを紹介。高畑監督の遺品から発見された初期の企画メモ「ぼくらのかぐや姫」、「パンダコパンダ」の宮崎駿によるレイアウト、高畑&宮崎による「アルプスの少女ハイジ」のオリジナル絵コンテなど初公開資料が多数あり、1000点を超える展示物のうち「正確な数は明らかではないが、おそらく半分は今回初めて展示されるもの」と説明する。
展示ブースでは、高畑監督の軌跡を4つのチャプターにわけて紹介していく。チャプター1「第1章 出発点 アニメーション映画への情熱」は、東映動画(現・東映アニメーション)在籍時に携わった「安寿と厨子王丸」(1961)、「狼少年ケン」(63~65)、劇場長編アニメ初監督作「太陽の王子 ホルスの大冒険」(68)などを取り上げ、チャプター2「第2章 日常生活のよろこび アニメーションの新たな表現領域を開拓」は、東映動画を去った高畑監督が、盟友・宮崎駿、小田部羊一、近藤喜文さんらととともに手がけ、新境地を開拓したアニメシリーズ「アルプスの少女ハイジ」(74)、「母をたずねて三千里」(76)、「赤毛のアン」(79)を掘り下げる。
チャプター3「第3章 日本文化への眼差し 過去と現在の対話」は、85年にスタジオジブリが設立され、高畑監督が「火垂るの墓」(88)、「おもひでぽろぽろ」(91)、「平成狸合戦ぽんぽこ」(94)で発揮した「日本の風土や庶民の生活を活写」「日本人の戦中戦後の経験を現代と地続きのものとして語りなおす話法の創造」などの演出術にフォーカス。チャプター4「第4章 スケッチの躍動 新たなアニメーションへの挑戦」は、アニメーション表現の探求者であり続けた高畑監督が、「ホーホケキョとなりの山田くん」(99)、「かぐや姫の物語」(2013)でたどり着いた新たな表現スタイル「人物と背景が一体化したアニメーション」を解説する。
「高畑勲展――日本のアニメーションに遺したもの」は、7月2日~10月6日に開催。当日券は一般1500円、大学生1100円、高校生600円(中学生以下無料、障害者手帳を提示の方とその付添者1人は無料)。音声ガイドは中川大志が担当している。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。