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「ウィーアーリトルゾンビーズ」の8bit表現に込められた真意 森直人「素晴らしいメタファー」

2019年6月24日 19:00

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長久允監督(左)と映画評論家の森直人氏
長久允監督(左)と映画評論家の森直人氏

[映画.com ニュース] “映画を語る”をテーマとしたWEB番組「活弁シネマ倶楽部」の収録がこのほど、東京・銀座九劇アカデミアで行われ、「ウィーアーリトルゾンビーズ」(公開中)のメガホンをとった長久允監督が出演。映画評論家の森直人氏がMCを務めたトークを、映画.comが取材した。

両親を失い、ゾンビのように感情を失った子どもたちの冒険を、ギミック満載の映像表現や独特のセリフ回しで描く。長久監督と森氏は、2009年に公開されたオムニバス映画「ゼロ年代全景」の座談会(パンフレット収録)以来、10年ぶりの再会となった。青山学院大学に通いながらバンタンデザイン研究所で映像を学んだ長久監督に対し、「自分のルーツをはっきりと語られる方」という印象を抱いていた森氏。「ウィーアーリトルゾンビーズ」は、「ゼロ年代全景」の1本として世に放った「FROG」を想起したようだ。

「FROG」は、世界の終末が近づく中で生きる人々をつづった群像劇。長久監督は「中学、高校、大学とキリスト教系の学校に通っていたので、聖書を思い浮かべながら物語を紡いでいる」と明かし、森氏から「スタートラインが“絶望”」という両作の共通点を指摘されると、ストーリーテラーとしての信念を打ち明けた。「僕は0が100になる幸福よりも、マイナス100がマイナス99になるもの、そのプラス1の幸福をきちんと描きたいんです。またマイナス100も客観的な評価であって、実はフラットで0なんじゃないかという思いも強くある。だからこそ、客観的に絶望的な状況というものを描きたい」と語っていた。

「ウィーアーリトルゾンビーズ」
「ウィーアーリトルゾンビーズ」
(C)2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS

現在、大手広告会社に勤務している長久監督。人生の転機となったのは、17年1月に活動を休止したバンド「NATURE DANGER GANG」との出会いだ。「たまたまライブを見たんです。メンバーが言っているわけではないんですが、(演奏が)上手くなくてもいいから、今この瞬間、自分達が存在しているためのエネルギーを発散しようという姿勢に共感させられた。自分が今生きていることを、ちゃんと残さなければいけないと感じたんです」と振り返り、リバイバル上映中だった「青春の殺人者」の鑑賞を経て「俺は映画をやらなければいけない!」と思い至ったようだ。

やがて、16年に生まれた短編映画「そうして私たちはプールに金魚を、」は、第33回サンダンス映画祭ショートフィルム部門グランプリを受賞。同作にも通じる“ナレーションの多用”にも意図があった。「かつての邦画に多かった空気感、間で察してもらうのではなく、感情は言葉ではっきりと伝えてしまっても良いのではないか。言葉が楽しければエンタテインメントとして成立する」と話し、フランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダールからの影響を告白。さらに広告業界での映像作りが、自らの話法に欠かせなかったという。

長久監督「例えば15秒で広告を設計する際に“これくらいの情報を詰め込んでも人は理解できる”という検証を、1000本ほどやってきたんです。イオンさんの店頭ビデオを約10年担当していたんですが、行き交うお客さんの興味をひかせるために何をすればいいのかという点を毎秒考えなくてはならなかった。それは“表現筋トレ”として相当役に立っているんです。『音が重要なんじゃないか?』『ストーリーがジャンプしても、ナレーションが繋がれば、人は内容を理解できるのではないか?』『音楽が繋がれば、感情も繋がるんじゃないか?』という検証をたくさんしてきました」

その発言を聞いた森氏は、長久作品の感想に見受けられる「PV映像的な映画」という言葉が「どんどん反転されていく」と分析。「起点は、道行く人に興味を抱かせるPV映像なのかもしれないが、結果的に作家のコアな部分を叩きつけようとした時の手法になった」と述べつつ、着目した「8bitのゲーム調音楽&映像のトーンにするアイデアはどこからきたもの?」と問いかけた。要因のひとつとして挙げられたのは「まだ映画作家としてはプロとは言えないので、自分の中の物語からしか切り出せない。だから、小学校の頃にハマっていたファミコン、スーパーファミコンの要素は、自然と作品に組み込まれていった」(長久監督)。次に明かされたのは、森氏も「目から鱗です。素晴らしいメタファー」と驚くものだった。

収録後“自動筆記”の話題で盛り上がった 長久監督と森氏
収録後“自動筆記”の話題で盛り上がった 長久監督と森氏

長久監督「リアリティのあるゲームよりも、8bitのゲームの方が見ている人の想像力の余地がある気がするんです。8bitで表現されているものって、こちらがきちんと想像しないといけない。8bitで描かれたマリオの奥には“本当のマリオ”がいる――その構図は“大人が子どもの心情を、より想像しなくてはいけない”というものと同じこと。大人にとって子どもの心情が8bitに見えているのかもしれないが、その奥にはしっかりとした情景がある」

「(長久監督は)ロジカルな人なのに、ロジックを超えたものにひかれてしまう――今後、長久允を研究する上でのポイント」と断言した森氏は、最後に大林宣彦監督の名を挙げた。「自主映画、広告業界、商業映画の偉大なる先駆者であり、ゴッドファーザー。『PVみたい』という批判について、『じゃあ、大林宣彦はどうすんねん』と(笑)。“大林監督の末裔”という呼び方もできるんじゃないか。超スキル派なのに、あえてチープな方にブレたり。ご本人が一番大切にしてらっしゃるのは、エモーション、魂の衝動。そこが似ていますよね」と続けると、長久監督は「すごく嬉しいですね。海外の観客も(本作を)『HOUSE ハウス』だと言ってくれました。『北京的西瓜』も好きですし、理想の監督」と喜ぶ。森氏は「『ウィーアーリトルゾンビーズ』は、21世紀の『HOUSE ハウス』ですよ」と絶賛してみせた。

「活弁シネマ倶楽部」(「ウィーアーリトルゾンビーズ」)は、YouTube(https://youtu.be/5g-XZEiwUew)で配信中。

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