カンヌ映画祭、ジム・ジャームッシュのゾンビ映画で開幕! アラン・ドロンへの栄誉賞授与に賛否も
2019年5月15日 13:30
[映画.com ニュース] 第72回を迎えるカンヌ国際映画祭が、5月14日(現地時間)に開幕した。オープニングを飾ったのは、ジム・ジャームッシュによるゾンビ映画の「The Dead Don't Die(原題)」だ。ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、ティルダ・スウィントン、クロエ・セビニー、トム・ウェイツといった、ジャームッシュ組には馴染みの顔ぶれに新参のセレーナ・ゴメスが加わり、ゾンビと対峙する。といっても、ジャームッシュ的なユーモアや緩さの上に、トランプ大統領のアメリカに対する皮肉と、やや悲観的な見解が入り混じった、いわばメランコリックなコメディ。イギー・ポップのゾンビ姿が見られるのも一興だ。
また初の試みとして、フランス全土約600館で本作を同時に封切り、カンヌ開幕の様子も中継した。この日だけは一般観客とともに映画祭を祝うという姿勢を打ち出したようだ。
今年のコンぺティションは、ぎりぎりになってクエンティン・タランティーノの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」と、アブデラティフ・ケシシュの「Mektoub, My Love: Intermezzo」が加わり計21本に。テレンス・マリック、ケン・ローチ、ダルデンヌ兄弟、ペドロ・アルモドバル、エリア・スレイマンらベテラン勢に、グザビエ・ドラン、ポン・ジュノら若手の常連、さらにコンペ初参加組が混在する。
アウト・オブ・コンペティションには、タロン・エガートンがエルトン・ジョンに扮した伝記映画「ロケットマン」、ディエゴ・マラドーナのドキュメンタリー、クロード・ルルーシュが「男と女」から53年を経てオリジナルキャストで描いた続編など、話題作が並ぶ他、ガエル・ガルシア・ベルナルの監督作も追加になった。
今年の審査員はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ審査委員長を筆頭に、エル・ファニング以外はヨルゴス・ランティモス、アリーチェ・ロルバケル、ロバン・カンピヨ、パベウ・パブリコフスキら個性派監督が目立つ。果たして彼らがどんな作品を評価するのかが興味深いところだ。
もっとも、現在話題の的になっているのはアラン・ドロンの栄誉パルムドール。というのも、ドロンはフランスの極右政治家ル・ペンを支持し、同性愛に対する差別的な発言をしている上、女性蔑視とも言われているため、「そんな人物を称えるのは、映画祭のモラル的に問題ではないのか」と、アメリカの団体から批判の声があがったため。これをきっかけに、受賞をとりやめるさせる誓願書が集められ、すでに1万8000人がサインをしているという。会見を開いたジェネラル・ディレクターのティエリー・フレモーは、「賞はあくまで彼の俳優としてのキャリアを称えるものであり、ノーベル平和賞ではない」と、断固取り合わない様子を示した。
冒頭から波乱含みとなった今年の映画祭。最終日の5月25日には、果たしてどんな結果を迎えているだろうか。(佐藤久理子)
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