ピエール瀧容疑者逮捕で協議中だった映画「麻雀放浪記2020」公開が決定
2019年3月20日 11:08
[映画.com ニュース] ピエール瀧容疑者が麻薬取締法違反の疑いで逮捕されたことを受けて「公開を協議中」とアナウンスしていた映画「麻雀放浪記2020」だが、配給の東映が3月20日、劇場公開が正式に決定したことを会見の場で発表した。
1984年に和田誠監督で映画化された阿佐田哲也のベストセラー小説「麻雀放浪記」を、主人公が1945年から2020年にタイムスリップするという大胆なアレンジを加えて映画化した本作。劇中で瀧容疑者は、第三次世界大戦が勃発したことで開催中止となってしまった東京オリンピックの組織委員会会長の役を演じている。
東映の多田憲之社長は「『麻雀放浪記2020』の劇場公開を正式に決定したことをご報告させていただきます」と声明文を読み上げると、「劇場公開については、中止または延期、編集した上での公開、ノーカットでの公開など議論が重ねられましたが結論に至らず、配給担当の弊社の判断で、4月5日、ノーカットのままで公開することにいたしました」と明言した。
理由として「あってはならない罪を犯したひとりの出演者のために、作品を待ちわびているお客さまに、既に完成した作品を公開しないという選択肢は取らないという結論に至ったということでございます。現状、ほとんどの映画は劇場公開からスタート致します。劇場での上映は有料であり、かつ観賞の意志を持ったお客さまが来場し観賞するというクローズドなメディアでありますので、テレビ放映またはCMとは性質が異なります」と説明。さらに公開に際し、「お客さまに対しては劇場公開時にポスター、および上映前のテロップで、逮捕されたピエール瀧容疑者が出演していることを明示致します」という旨を明かした。
ただし、製作委員会に参加する企業もさまざまな立場があると切り出した多田社長は、「いろんな意見があり、現在でも議論は続いてる状況。今後、製作委員会を降りる企業さんも出てくるかもしれない。また、劇場さんも(今回の決定を)ご存知ない状況。どういうリアクションが返ってくるかまだ分かりませんが、ここは公開するという強い意志を持っております」とコメント。さらに出演者の不祥事により、公開自粛、延期、再撮影などを余儀なくされ、影響が甚大である現状については「それは映画会社だったり、製作委員会の判断だったと思いますが、東映としても個人としてもちょっといきすぎだなという印象は持っていました。スタッフが総力をあげて作ったものをボツにしていいのか、はなはだ疑問に思っておりました」と言及しつつも、「ただそれが東映に起こるとは思っていなかった。当事者になったということで、かなり悩みました。東映もいち株式会社なので、コンプライアンスがあります。でも映画会社の責任としてここは公開したい。そういった思いを社員に伝えました」。
一方、本作のメガホンをとった白石和彌監督は「『凶悪』という映画から何度もご一緒してきて、映画を一緒に作ってきた仲間が犯罪を行ったということに大変驚きましたし、直近で言うと『麻雀放浪記2020』がどうなるのかと。瀧容疑者に対して押さえられない憤りを感じました」と正直な思いを吐露。逮捕を受けた対応について「出来上がった映画を再編集するとか、再撮影も覚悟していましたが、監督の気持ちはどうなんだと、東映さんから聞かれて。何とか編集しない形で、ベストな形で公開したいというのが正直な気持ちです。この映画に関わったみんなそうですが、禁止薬物には反対の立場で、絶対に犯してはいけないという思いがあります。ただし、個人が犯した罪と、作品そのものには罪がないんじゃないかという話をして。東映さんをはじめ、委員会の判断もあって、公開できたことにホッとしています」と付け加えた。
さらに瀧容疑者に対しては「僕を監督として大きく引き上げてくれたひとりだと思っていて。僕自身、彼が持っているキャラクターや男っぷりの良さなど、いろんなことに男惚れをして。お仕事をさせていただきました。瀧さんのスタッフやファン、家族がどういう思いをしているかというのは言葉にできない。今はバカヤローとしか言いようがない。これからどういう人生を歩むか想像できないですが、自分の罪をちゃんと反省して、まずは治療をして。人として歩いてほしいなという気持ちしかないですね」と複雑な心境を吐露した。
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