人間に擬態DNAが存在した!? 藤井秀剛監督、異色ホラー「超擬態人間」を携えて「世界で戦いたい」
2019年3月8日 22:00
[映画.com ニュース] 「生地獄」「狂覗」を手がけた藤井秀剛監督の新作「超擬態人間」が3月8日、北海道・夕張市で開催中の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019」のオフシアター・コンペティション部門でワールドプレミア上映された。藤井監督は、キャストの田中大貴、河野仁美、宮下純、安井大貴、越智貴広、納本歩、プロデューサーの梅澤由香里氏とともに舞台挨拶に出席し、「世界で戦いたい」という思いを込めた力作の背景を打ち明けた。
伊藤晴雨の幽霊画「怪談乳房榎図」に着想を得た異色ホラー。切れたチェーンを腕に巻いた少年が、全裸で廃線を歩いている――全ての始まりは、その前日にあった。なぜか森の中で目覚めた親子が“ナマハゲ”に襲われ、山奥の結婚式場の下見に来ていたカップル、新婦の父親、ウェディングプランナーが古民家へと迷い込む。2つの話が、1つになる時、物語は予想のつかない方向へと向かっていく。
「このチームはとても特殊。全員俳優さんなんですが、裏方もやっている。皆オフの日には金づちで壁を叩いていました。一番わかりやすいのは、宮下純さん。別名“ミヤ・サヴィーニ”として特殊メイクもやっているんです」と説明した藤井監督。“和でも洋でもない新たなホラー”を目指して一丸となったようで「(撮影の合間に)“ナマハゲ”の面、自分が入る沼を作ったりしていた」(田中)、「画として、形として残せるようにと必死になって走ってまいりました。見て頂いた方に、少しでもトゲのように刺さり、体内に残ってくださると嬉しい」(宮下)、「撮影現場には、基本的に監督と僕らしかいないんです。出番がない時はカチンコを叩く人がいたり、マイクを持つ人がいたり。徹夜続きの過酷な現場でしたが、『世界で戦える作品を作ろう』という思いを忘れずにやってこられた」(納本)と語っていた。
幼児虐待にまつわる問題から、人間に擬態DNAが存在したという驚きの要素が込められた「超擬態人間」。藤井監督は製作の動機について「『悪魔のいけにえ』『死霊のはらわた(1981)』のような元気のあるものを作ってみたい」という思いに加えて「自分も2児の父親で幼児虐待のニュースが飛び込んでくるたびに気分の悪い思いをしてきた。説教をするつもりはないんですが、社会性を交えた作品を目指したかった」と明かした。
同映画祭初参加となった藤井監督は「ゆうばりファンタ号に乗った時、各駅に夕張の方々が黄色い旗を持って手を振ってくださっていたんですが、一体何分待たれていたんだろうと……。こんなに温かい映画祭はない」と歓迎ぶりに感謝しきり。「今後はちょくちょくと良い話はもらっていますが、全てが“ゆうばり”からスタートしているので、これを皮切りに作品がどんどん(上の方へと)行ってくれるとありがたいなあ」と思いの丈を述べていた。なお、主演を務めた杉山樹志さんは2017年8月に亡くなり、本作が遺作となった。
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019は、3月10日まで開催。