映画評論家・町山智浩、スパイク・リー監督「ブラック・クランズマン」の背景を解説
2019年2月22日 13:00

[映画.com ニュース] 第91回アカデミー賞で6部門にノミネートされているスパイク・リー監督最新作「ブラック・クランズマン」のジャパンプレミアイベントが2月21日、渋谷のシネクイントで行われた。本編上映後には映画評論家の町山智浩氏が来場し、日本の観客には分かり難い本作の背景について生解説した。
黒人刑事とユダヤ人の刑事が白人至上主義団体「KKK(クー・クラックス・クラン)」に潜入捜査するさまを描き出したノンフィクション小説を、「マルコムX」のスパイク・リー監督が映画化した本作。本作劇中には、ビビアン・リー主演の「風と共に去りぬ」や、D・W・グリフィスの「國民の創生」といった過去の名作のフッテージ映像、そして「黒いジャガー」「コフィー」「スーパーフライ」といったブラックスプロイテーション映画のポスターなどがところどころで登場する。
町山によると、これらの作品は、映画が黒人をどう描いてきたかという歴史を指し示しているという。「國民の創生」はKKKを称賛する映画となっており、同作に感銘を受けた人たちが、映画公開当時は消滅していたKKKを再興させるきっかけになった悪名高き映画であることなどを説いた。1970年代になると、黒人であることに誇りを抱くブラックパワーのムーブメントが起こり、ブラックスプロイテーション映画と呼ばれるジャンル映画が人気を集めたことなどが、これらの映画の背景にあるという。「この映画では、あまりにも白人がまぬけに描かれていると思いませんか? この映画はブラックスプロイテーション映画のスタイルで描かれた映画なんです」と町山は解説する。
さらに「なぜスパイク・リー監督がこの映画を今作るのか」ということに関して、「トランプ大統領が黒人を差別するということよりも、彼自身が黒人を差別する人たちからの票を得ようとしているのが問題なんです」と切り出す。「トランプ大統領が出てきた時、(KKK元最高幹部の)デビッド・デュークはトランプこそが我々の理想を実現すると言ったんです。KKKに支持された人がアメリカの大統領なんですよ。これは大変な事態ですよ」と語り、「そこに今起こっている現実を突きつけてきて、そして最後に救いを与える。感情が上がったり、泣いたり、怒ったりと感情の起伏が非常に激しいスパイク・リーらしい映画だと思います」と付け加えた。
さらに本作がアカデミー賞作品賞を含む6部門にノミネートされたことに触れ、「かつてスパイク・リーは(代表作の)『マルコムX』がアカデミー賞にノミネートされず、受け入れられなかったんですが、この映画でやっとアカデミー賞にノミネートされました」と語っていた。「ブラック・クランズマン」は3月22日から全国で公開。
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