「蜘蛛の巣を払う女」クレア・フォイが明かす、リスベットの“トラウマと孤独”
2019年1月11日 17:00
[映画.com ニュース] 21世紀の文学のなかで最も個性的で強烈なヒロインと言われる、「ミレニアム」シリーズの天才ハッカー、リスベット・サランデル。これまでスティーグ・ラーソンの原作を映画化したスウェーデン版シリーズと、デビッド・フィンチャーによるアメリカ版リメイク「ドラゴン・タトゥーの女」が作られてきたが、ラーソンの世界を引き継いだダビド・ラーゲルクランツの著書を映画化したのが、新作「蜘蛛の巣を払う女」(公開中)だ。今回リスベットに扮するのは、テレビシリーズ「ザ・クラウン」で多数の賞を受賞し、新作「ファースト・マン」(2月8日公開)でもゴールデングローブ賞にノミネートされ、いま最も油の乗っているクレア・フォイ。過去の重いトラウマを引きずりながら、ハードなアクションもこなす「闘う女戦士」の面が強調されたリスベットを、強烈な個性で演じきっている。そんな彼女がリスベットに対する思い入れと、その役作りについて語った。(取材・文/佐藤久理子)
「原作を初めて読んだのは12年ぐらい前かしら。ただただ、このユニークなヒロインに魅了され、啓発された。それ以来、このシリーズが大好きになったの。スティーグ・ラーソンはとても興味深いキャラクターと、彼女を取り巻く独特な世界を構築した。『蜘蛛の巣を払う女』はリスベットの過去を明かしたものであり、彼女がそのトラウマから自由になるために戦う物語だけど、私にとってこれまでの原作すべてがバイブルになった」。
新作では、原作でラーソンが過去に1度だけその存在に触れていたリスベットの妹カミラが重要な役割を担う。リスベットは、人工知能研究の世界的権威である博士からアメリカ国家安全保障局に渡したデータを取り返すことを頼まれ、難なく手に入れるが、その矢先、何者かに自宅を襲撃されデータを盗まれる。その背後には意外なことに、幼いときに生き別れたカミラ(シルビア・フークス)の存在があった。ストーリーは、ここから一挙に姉妹の因縁をめぐる、まるで蜘蛛の巣のように複雑に入り組んだ展開を見せる。
脚本も共同執筆したフェデ・アルバレス監督(「ドント・ブリーズ」)は、今回のリスベットについてこう明かす。「本作はアクション映画と強烈な人間ドラマと北欧のノワール・サスペンスが合わさった独創的なものであると同時に、リスベットがこれまで以上に中心的な存在になっている。彼女の行動は今の時代と強い関わりを感じさせる。つまり被害者であることを拒否する、闘う女性の象徴なんだ」。
その点を踏まえたフォイは、ルックスやしゃべり方も含めて、役作りに並々ならぬこだわりがあったようだ。
「リスベットの場合、そのルックスが彼女自身を雄弁に物語っている。リスベットは子どものときに、彼女が信頼し愛する人から裏切られ、決して愛を示されることがなかった。そういう困難な経験をくぐり抜けてきたことが、彼女の人との付き合い方や行動を決めている。だからルックスもそれを反映して、人から不気味で脅威に思われるような雰囲気にしたかった。髪型や服装に関して、スタッフと何度も話し合ったわ。結果的にこれまでよりは少し成熟してシンプルな、戦士の雰囲気になった。しゃべり方については、監督から特に要望はなかったけれど、私は独特のアクセントにしたかった。観客に『ザ・クラウン』の私を思い出してほしくなかったし、北欧生まれのフィルム・ノワールということで、異質な感じを出したかったの。それで独特のアクセントを持ったぶっきらぼうなしゃべり方になった」。
さらに「リスベットにはファイターとしてのセンスがある」と監督が指摘するように、何度も窮地に陥りながら切り抜けるため、フォイ自身もこれまで経験したことがなかった肉体的な役作りをしたという。
「私自身はまったくスポーティブな人間じゃなかったから(笑)、この役のためにトレーニングを積んだの。主に筋肉をつけること、そして長距離のランニングなどをして体を鍛えた。今まで私はこれほど肉体的な役柄を演じたことはなかったけれど、ハードなトレーニングをするのはとても気持ちがよかった。リスベットのおかげで、スポーティなことに目覚めたわ(笑)」。
確かにこれまでのシリーズに比べ本作は、息つく間もなくアクションが続く。だが、そんな“動”のシーンから浮かび上がってくるのはやはり、リスベットの孤独な内面の葛藤だ。
「私にとって彼女は、相反する要素を持ったとてもリアルな存在。すごくタフである一方で、どこか途方にくれ、目的を失っている。それは彼女が過去にトラウマを抱え、そこから逃げていたから。そして本作ではその過去が彼女をとらえる。それは同時に、彼女がついにそこから自由になることでもあるわ。リスベットのことを知れば知るほど、驚かされると同時に、私のなかで彼女を愛おしいと思う気持ちが強くなっていったの」。
果たして、どんなリスベットを見る者に提示するのか。その新たなる勇姿から目が離せない。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
【史上最高と激賞】人生ベストを更新し得る異次元の一作 “究極・極限・極上”の映画体験
提供:東和ピクチャーズ
犯罪が起きない町で、殺人事件が起きた――
【衝撃のAIサスペンス】映画ファンに熱烈にオススメ…睡眠時間を削ってでも、観てほしい
提供:hulu
映画料金が500円になる“裏ワザ”
【知らないと損】「映画は富裕層の娯楽」と思う、あなただけに教えます…期間限定の最強キャンペーン中!
提供:KDDI
予想以上に面白い!スルー厳禁!
【“新傑作”爆誕!】観た人みんな楽しめる…映画ファンへの、ちょっと早いプレゼント的な超良作!
提供:ワーナー・ブラザース映画
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。