第42回山路ふみ子映画賞 大林宣彦監督が妻・恭子氏を祝福
2018年11月30日 20:41
[映画.com ニュース] 「第42回山路ふみ子映画賞贈呈式」が11月30日、東京・新橋のヤクルトホールで行われ、がんで闘病中の大林宣彦監督が、映画功労賞を受賞した妻でプロデューサーの大林恭子氏を祝福した。
同賞は元女優の故山路ふみ子さんが設立した「山路ふみ子文化財団」がその年に優秀な作品や映画人を表彰するもの。映画功労賞を受賞したプロデューサー、大林恭子氏は「数日前に80歳になりましたが、その一歩をこのような形で踏み出せて、うれしいです。人生の大半を大林とともに映画の生活を送ってきました。監督は『これから30本を撮る』と言っていたので、私が先に逝ってしまうのではないか。私の記憶は7歳の時、東京大空襲の焼け野原から始まっています。その時に亡くなられた方々に守られて、生きて、映画でいろんなことを学んできたような気がします」と挨拶した。
最前列で見守っていた、がんで闘病中の大林監督も壇上にあがり、「嬉しい瞬間を過ごさせていただいております。映画とはプロデューサーが作ってくれるもの。その作ってくれたレールの上を渾身の力で進んでいくだけです」と内助の功に感謝。「映画は過去を変えることはできませんが、未来を変えることができます。それを信じて、若いみなさんは映画を作って欲しい。戦争のない世界を作ってください。それが映画に託す、何よりの願いです」と話すと、満席の客席から盛大な拍手を浴びていた。
沖縄戦の実態を描いたドキュメンタリー「沖縄スパイ戦史」で文化賞を手にした三上智恵監督も「このような伝統ある賞をいただき、うれしい。大林監督の言葉を聞き、今日は宝物のような1日だったと思いました」と喜んだ。
映画賞と新人女優賞の2冠に輝いたのは「寝ても覚めても」。柴崎友香氏の小説を原作に、ヒロインの朝子が瓜二つの容姿を持つ2人の男性(東出昌大)の間で揺れる姿を描く。濱口竜介監督は「唐田さんも新人女優賞をいただきました。見つけていただいて、ありがとうございます。こうした賞をいただく経験がなく、うちには台らしきものはないので、(記念の盾は)テレビの前に置きたいです」と喜んだ。
新人女優賞の唐田は「撮影しながら、胸が苦しい毎日でした。この賞をいただけたのも、濱口監督、事務所のスタッフがいたから。ここにいるのが奇跡のようです。賞にふさわしい女優になれるように精進していきたい。いろんな方に映画を見ていただけるような女優になりたいと今、この場で思いました」と感激した面持ちだった。
また、長年の功績に対して、文化財団特別賞が贈られた草笛光子は「山路さんにはお目にかかったことはないのですが、こんな大きな賞で山路さんに会えるとは……。映画に初めて出演したのは66年前。その頃はテレビがなかったので、映画を2本いっぺんに撮ったり、忙しい時代でした。先月、85歳になりました。きょうまで元気に育てていただき、幸せな人間でした。いよいよ正念場だと思います。どうやってお返しできるか。お返しできるような女優になって、死にたいと思います」と決意を新たにしていた。
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