米批評家サイトで満足度100%のスリラー「ギルティ」 森直人氏「一目瞭然の傑作」

2018年11月15日 23:28

映画の魅力を熱弁した森直人氏
映画の魅力を熱弁した森直人氏

[映画.com ニュース]米批評家サイト「Rotten Tomatoes」で満足度100%を達成したデンマーク映画「THE GUILTY ギルティ」の特別試写会が11月15日、都内で行われ、映画評論家の森直人氏がトークショーに出席した。

「電話の音声だけをヒントに誘拐事件を解決する」という設定が高く評価され、第34回サンダンス映画祭の観客賞に輝いたほか、世界中の映画祭で話題をさらったスリラー。緊急通報司令室にオペレーターであるホルム(ヤコブ・セーダーグレン)は、ある日一本の通報を受ける。それは、今まさに誘拐されているという女性からの架電だった。車の発進音、騒音、犯人の息づかい……。かすかに聞こえる音だけを頼りに、ホルムは“見えない事件”に挑んでいく。

森氏は今作に大きく感情を揺さぶられたようで、開口一番「面白すぎてびっくりした。一目瞭然の傑作。見たらわかる」と太鼓判を押し、「意地でも司令室から出ないという(ワンシチュエーション)が斬新」と絶賛。物語の構造に話が及ぶと、携帯電話やインターネットなどの登場が「アルフレッド・ヒッチコックや、その優秀なフォロワーが築き上げてきた“サスペンス文法”を無効の危機にさらした」としたうえで、「携帯電話がサスペンスのメイン道具となったのは、おそらく2004年の『セルラー』が最初」と説明し、「『セルラー』の流れを最も受け継いだのは、13年の『ザ・コール 緊急通報指令室』でしょう。『ギルティ』を語る縦軸として、この2作品をぜひ押さえておいてほしい」と、その系譜にスポットを当てた。

画像2

「サンダンス映画祭で好評を博した」という点にも着目し、「(受賞作品には)低予算で斬新なエンタメをつくろうという意図がある。最初の設定、ワンアイデアが突出している映画が多い」と述べる。14年の同映画祭グランプリ&観客賞に輝いた「セッション」や、全編PC画面上で展開される「search サーチ」を引き合いに、「アイデア勝負だからこそ1時間半の尺を持たせるためには、演出の地力が試される。大昔にサンダンス映画祭があったら、スティーブン・スピルバーグの『激突!』は観客賞やグランプリをとっていたと思う。典型的な同じ匂いがする」。さらに、今作が“新感覚”である理由にも考えを巡らせ、「今作の監督が、インタビューで影響を受けた映画として『タクシードライバー』『狼たちの午後』と答えていた。『タクシードライバー』は主人公の主観を通したNYの街が描かれる。『狼たちの午後』は限定された空間に街のざわめきが入ってくる、という構造。どちらも『ギルティ』に共通していて、『セルラー』『激突!』など、いろんな流れと合流するんです」と分析していた。

また、国内外を問わず「無名の監督・キャストによる映画が人気を博す」という潮流にも言及。特に日本においては「『旬のイケメンとアイドルを出せばいい』というのでは、我々はなかなか乗らないことが明確になってきたと思う。『シンプルに面白い映画を見たい』という欲望が高まっているのかも」と前置きし、「『カメラを止めるな!』『サーチ』『ギルティ』の共通項を探すと、一種の“低予算なりのアトラクション志向”かと思う。サプライズとカタルシスを明確に、丹念な計算の上に用意している。予備知識なしで見たほうが楽しめ、見た後は『とにかく見てください』というのがベストであるという快楽。そういう映画が今後、手を替え品を替え出てくるのかなと思った。『ギルティ』はそのプロトタイプになる作品。見ておかないと、ダメです」と熱く締めくくっていた。

THE GUILTY ギルティ」は、19年2月22日から公開。

Amazonで今すぐ購入

DVD・ブルーレイ

Powered by価格.com

関連ニュース

映画ニュースアクセスランキング

本日

  1. 中川大志、染谷将太、上白石萌歌、堤真一ら豪華俳優陣が集結! 加藤拓也監督による前代未聞の“穴”ドラマ、4月放送開始

    1

    中川大志、染谷将太、上白石萌歌、堤真一ら豪華俳優陣が集結! 加藤拓也監督による前代未聞の“穴”ドラマ、4月放送開始

    2024年3月18日 07:00
  2. 【地上波初】“女性用風俗”が舞台! 「買われた男」瀬戸利樹がセラピスト役で主演 共演は久保田悠来、池田匡志

    2

    【地上波初】“女性用風俗”が舞台! 「買われた男」瀬戸利樹がセラピスト役で主演 共演は久保田悠来、池田匡志

    2024年3月18日 12:00
  3. 3

    「踊る大捜査線」新作映画、今秋公開 12年ぶりにプロジェクトが再始動

    2024年3月18日 21:24
  4. スタントマンが史上最高の難易度のスタント成功でギネス認定 ライアン・ゴズリング主演映画で

    4

    スタントマンが史上最高の難易度のスタント成功でギネス認定 ライアン・ゴズリング主演映画で

    2024年3月18日 09:30
  5. 「変な家」が首位、「ゴジラ-1.0」「君たちはどう生きるか」「オッペンハイマー」「デューン2」もアップ【映画.comアクセスランキング】

    5

    「変な家」が首位、「ゴジラ-1.0」「君たちはどう生きるか」「オッペンハイマー」「デューン2」もアップ【映画.comアクセスランキング】

    2024年3月18日 14:00

今週