劇場公開日 2019年2月22日

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THE GUILTY ギルティ(2018) : 映画評論・批評

2019年2月12日更新

2019年2月22日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにてロードショー

緻密な“音”のスペクタクルが生み出す重層的なサスペンスとドラマ

言うまでもなく映画とは、映像と音によって成り立つ表現形態である。しかし俳優の演技や視覚効果といった直接スクリーンに映し出されるものに比べると、その場の状況や登場人物の感情をサポートする役目にとどまりがちな音について語られる機会は格段に少ない。デンマークの新人監督グスタフ・モーラーは、そんな私たちの目には見えない“音”の比重を格段に高め、それ自体が主役と言っても過言ではない斬新なクライム・スリラーを完成させた。

主人公の警官アスガーは、日本で言うところの110番、すなわち緊急通報室のオペレーターだ。ある日、彼が対応した電話の主は、今まさに夫に拉致されて車でどこかへ連れ去られているイーベンという女性。事態が切迫していることを察知したアスガーは、通報者の身元や車の位置情報を確認し、他の部署と連携して事件解決を図るが、思いがけない深刻な事態に直面していく。

舞台は全編にわたって緊急通報のオペレーター・ルームに限定され、カメラが捉える主要登場人物は主人公のアスガーだけ。ゆえに私たち観客はアスガー同様、イーベンが巻き込まれた事件の全情報を電話の向こう側から聞こえてくる音から得るしかない。震えを帯びた通報者の声、車の走行音やワイパーの音、そして時折割り込んでくる犯人らしき男の怒声。当初はよくあるDV絡みの単純な事件のように思えるストーリーを、ムーラー監督は“視覚的な音”を巧妙に駆使して、予想もつかない方向へと展開させていく。

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例えば、アスガーと自宅にぽつんと取り残されたイーベンの幼い娘との対話。真っ暗闇の中で受話器を掴み、一生懸命アスガーの質問に答えるその少女は、いかなる危うい状況に陥っているのか。はたして、その家で何が起こったのか。そうした決して画面には映らない状況を、生々しい戦慄とともに観る者に想像させる本作は、ワン・シチュエーション映画でありながら多様なシーンチェンジを繰り返し、確実にサスペンスのテンションを高めていく。やがて声優たちの演技も含め、緻密に設計された音が生み出すささやかなスペクタクルは、アスガーと私たちが囚われた先入観を易々とひっくり返し、人間の不可解さ、世界の複雑さをもあぶり出していくのだ。

さらに驚嘆させられるのは、題名にもなっている“罪”という主題が重層的なドラマとして描かれていることだ。その脚本の見事なひねりと、深い余韻を残す着地点にも唸るほかはない。

高橋諭治

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