松田龍平&豊田利晃監督、4度目のタッグ作に捧げた“将棋愛”
2018年9月9日 12:00
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[映画.com ニュース] 一手一手の積み重ね、周囲の人々の後押しが偉業へと結びつく――史上初めて奨励会退会からプロ編入試験に合格した瀬川晶司五段の実話を描いた「泣き虫しょったんの奇跡」。驚くべきサクセスストーリーの映画化に「勝算があった」という豊田利晃監督は、「青い春」以来16年ぶりに盟友・松田龍平と本格的なタッグを組んだ。4作目となった名コンビは、一切の手抜かりなく、将棋に愛を捧げていた。(取材・文/編集部、写真/堀弥生)
2006年に発表された瀬川五段著の自伝的作品を原作に、1度は将棋の道を諦めサラリーマンとなったしょったんこと晶司(松田)が、再びプロ棋士を目指すさまを描く。晶司は、26歳までに四段への昇段がかなわず、プロ棋士の登竜門である新進棋士奨励会を年齢制限で退会する。絶望と喪失感に襲われるが、将棋への強い思いや仲間の支えでアマチュアとして頭角を現し、前代未聞のプロ再挑戦に向けて動き出す。
かつて実際に奨励会に在籍していた豊田監督。「9歳での入会はあまりにも若いということで、ローカルニュースでしたが、テレビや新聞社もくるというちょっとした騒ぎになったんです」とプロを目指すべく日々研鑽を積んだが、17歳で挫折を味わい、駒を置いた。「色々あって将棋への情熱がなくなってしまったんです。情熱がなくなれば勝てなくなる。すると面白みも失われ、一生やっていく自信が消えていってしまった」と苦い過去を振り返ったが、この時に得た感情は物語に息づいている。
満21歳の誕生日までに初段、そして満26歳の誕生日を含むリーグ終了までに四段になれなかった場合、退会という厳しい掟が存在する奨励会。年齢制限や実力の差に苦しみながら“棋士の卵たち”は盤面と向き合うのだが、“孵化”できない者の方が多い。青春の全てを捧げながらも、プロ棋士への道が閉ざされた時、彼らの心に去来するのは「人間になれなかった」という想像を絶する後悔の念。残酷な現実を反映した“棋士の卵たち”の表情から、カメラは決して逃げることはない。
「原作をあまり読まない」というスタンスの松田は、「情報が増えると余計なことを考えてしまいがち。台本のなかで描かれていないこともイメージして芝居をしたくなってしまうんです。映画は脚本によって完成されるものですから」と意図を説明。だが「今回は瀬川さんに会ったことで読もうと思った」と告白した。「将棋の世界のことは全然知らなかった」ようだが、あくまで松田が意識したのは、瀬川五段の人となり。頻繁に現場見学に訪れていた瀬川五段の「何かを話すというより、佇まいを近くで感じていたかった」と明かし、自らの人生と重ね合わせた。
松田「僕自身、15歳の頃から、気がついたらずっと役者をやっていました。そういう意味では、役者以外の人生というのは想像できなかったし、客観性がまるでないと感じていたんです。瀬川さんも小学生の頃からずっと将棋を指し続けていて、1度サラリーマンになってから、もう1度将棋の世界を志します。この物語が『芝居をやっている自分』『そうではない自分』という意味で繋がる部分がありました」
駒の“鳴り”が印象的な対局シーンでは「観客の飽き」を懸念し、縦横無尽のカメラワーク、「モンスターズクラブ」へ参加した照井利幸氏による音楽の効果によって、アクション映画を想起させるようなイメージを創出。さらに注視すべきは、全身全霊で戦い抜いた棋士たちの“負けざま”であろう。
豊田監督「囲碁やチェスを例に出せば、敗者が『負けました』と口に出して頭を下げるということはないんです。将棋の世界において、これはかなり残酷なこと。そういうカットは積み重ねていきたいと思っていました。一番初めに負けたシーンを撮った時、龍平に『もうちょっと頭を下げて』と言ったはず。瀬川さん自身もそうなんですが、負けに対しては“正々堂々”“丁寧”であるべき。この積み重ねによって、痛みを感じるようにしていったんです」
実際は“勝ちざま”も撮影していたようだが、編集の段階であえてカットするという決断を下した豊田監督。負けっぱなしの松田が何度も浮かべる、苦悶の表情が胸を打つ――芝居といえど「やっぱり負けるのは嫌でしたね」と当時の心境を打ち明けた松田は「でも、棋士は勝ってもあまり大喜びしないイメージがありました。瀬川さんも同様で、露骨には喜ばない」と溢れんばかりの感情を“内に秘める”という姿勢を貫いていた。
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