是枝裕和監督、最新作は「イーサン・ホークが決まって7対3で期待」
2018年7月16日 04:00
[映画.com ニュース] 是枝裕和監督の最新作が、日仏合作の「La Verite(仏題・仮)」に決まった。「万引き家族」がパルムドールを受賞した第71回カンヌ国際映画祭期間中から多くの噂が流れた今作について、是枝監督自身が語った。
是枝監督にとって長編15本目となる今作は、フランス映画界屈指の大女優である母とかつて女優を志望しながら現在は脚本家としてアメリカに拠点を構える娘の対立、そして関係が修復出来るのかがが軸となる。主演は、フランスの至宝カトリーヌ・ドヌーブ。さらにジュリエット・ビノシュ(「イングリッシュ・ペイシェント」)、イーサン・ホーク(「6才のボクが、大人になるまで。」)、リュディビーヌ・サニエ(「スイミング・プール」)を共演に迎える。撮影はエリック・ゴーティエ(「モーターサイクル・ダイアリーズ」「ポーラX」)が務めることになり、10月初旬にフランスでクランクインする予定だ。
ドヌーブへの出演オファーは約2年前。快諾を得たそうで「今は脚本を書くためのヒアリングをずっとさせてもらっています。自伝ではないけど、フランス映画史を背負ってきた女優の話になるので、彼女がどうやって芝居と出合い、向き合ってきたのか……。一緒に作っている感じなんですよね。ドヌーブさん、ビノシュさんは最初から味方、同志になってくれています」と語る。そして、キャスト陣の積極性を頼もしく感じているようだ。「日本の女優さんではなかなかないと思うんですが、ビノシュさんは気に入った監督がいると『一緒にやらないか?』と積極的にアプローチする。自分のキャリアをどのように広げていくのかに意識的だし、ポジティブ。ドヌーブさんにも同じことを感じます。頼もしいし、魅力的ですよね」。
スタッフは「バイリンガルのフランス在住日本人スタッフが何人かいるけれど、基本的にフランス人」だという。オーディションには苦戦を強いられているようで、「子役のオーディションで、日本と同じやり方をしようと思って台本を渡さずにやってみた。ちょっと分からないんだよね。それが自分の言葉として子どもの中から出てきているのかが正直分からない。ここから先、子どもの演出をどういう形でやっていくかが一番の課題かもしれません」と明かす。
ただし、悲観はしていない。カンヌから帰国前に立ち寄った米ニューヨークで会ったホークの存在と経験が大きな力をもたらしてくれると、是枝監督は感じている。「ちゃんとした答えをもらえていない状況でニューヨークへ行き、直接お会いして話が出来たのがすごく良かったです。『6才のボクが、大人になるまで。』の撮影の話をさせてもらい、あの子どもからどうやって演技を引き出したのかを突っ込んで出来たので、今回の撮影でボクが不安に思っている部分は、かなりイーサンが助けてくれそう。非常に力強い味方を得た感じ」と穏やかな笑みを浮かべる。
パルムドール戴冠はもちろんプラスに働いているようで、「ニューヨークで会ったイーサンも、握手して座った瞬間に『このタイミングだと断りにくい。これは断れない企画になっちゃったなあ』と言っていた。彼の役はあてがきだったので、もし断られたらどうしようって感じだったので、助かりました」。それだけに「不安と期待でいうと、オーディションをやる前は不安の方が高かった。ただ、イーサン・ホークが決まったので、今は7対3くらいで期待の方が大きいかな」とニッコリ。言語の壁は確かにあるが、どこまでも自然体で撮り上げるつもりだ。「これまでの作品も日本映画として撮ってきていないので、あまり意識していません。特に意識せず作ったものがそれほど齟齬(そご)をきたさずにフランスで公開され、きちんと伝わっているという実感があるので、映っている人が日本人かフランス人かの違いだけで押し切ろうと思っています」。
12月初旬にクランクアップ後、是枝監督は仕上げもフランスで行うという。公開は2019年を予定。
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