欠点こそが真実!「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」夫婦監督が追求する“人間味”
2018年7月5日 18:00
[映画.com ニュース] 「リトル・ミス・サンシャイン」「ルビー・スパークス」という映画ファンの人気作を手がけてきたバレリー・ファリス&ジョナサン・デイトン監督夫婦が、「ラ・ラ・ランド」のアカデミー賞女優エマ・ストーンと組んだ「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」を携えて来日。「あらゆる映画の要素が詰まっている」という本作に込めた思いについて、存分に語った。
ストーンと「30年後の同窓会」が公開中のスティーブ・カレルが実在のテニス選手を演じた本作。1973年に世界的な注目を集めた「テニスの男女対抗試合」を題材に、29歳・現役世界チャンピオンの女性テニス選手ビリー・ジーン・キング(ストーン)と、元チャンピオンである55歳の男性選手ボビー・リッグス(カレル)の対決を描く。製作を次期「007」の監督を務めるダニー・ボイル、脚本をボイル監督と「スラムドッグ$ミリオネア」で組んだサイモン・ビューフォイが担当している。
スポーツはもちろん、ドラマ、コメディ、ラブストーリーと多様な要素を内包し、現代の社会が直面する男女間の格差問題や、恋愛の多様性についても言及している本作。さらには“実話”であることから描写には最大限の注意を払わなければならず、難易度が非常に高い題材だ。だが、両監督は多くの材料を見事に調理し、1つの映画の中に共存させている。デイトン監督は、「バランスを保つことが1番のチャレンジだったね。だからこそやりたかったし、面白かったよ」と“監督魂”をのぞかせる。
対するファリス監督は、「スポーツ映画というのは、ある意味構成が決まっているもの。最後に大会や試合が来るというね。そこに行くまでにラブストーリーがあり、ボビーのドラマがあり、性差別や歴史的事実も入ってくる。さまざまなストーリーがあるからこそ、試合がより高まっていくのよ」と配分には苦労しつつ、スポーツ映画としてのだいご味を失わないよう努めたと振り返る。
本作において見事なのは、話題に上がったバランス感覚をクリアしつつ、ファリス&デイトン両監督ならではの風合いがにじみ出ているところだ。人物をヒロイックに描くことなく、欠点をも含めて見せることで人間味を付加させる手法は、2人の真骨頂と言えるだろう。
ファリス監督は「“人間関係”というものを大切にしているわ。キャラクターを3次元的に見せたいの。彼らの気持ちや、物語を“旅”として、どう進化していくかを描いていく。その部分を探求するのが、私たちがいつも狙っているところよ。人の悩みって、面白かったり時にはこっけいに映ったり、非常に共感できるものだと思う。実際、私たち自身の人生もぐちゃぐちゃだし(笑)」と柔和な笑みを浮かべて自分たちの作風を解説する。デイトン監督はその言葉を受け継ぐ形で、「人間は不完全で、欠点がたくさんある。そこが好きなんだ! だから僕たちは、そういう意味での“人間の真実”を描いていくし、そういった作品を見ると人間として共感できる、と考えているんだ」と穏やかな口調ながらも真摯に語る。
互いの言葉を補い合う姿からは、ファリス監督とデイトン監督の強い絆がうかがえるが、夫婦で創作を行うことで、「2つの利点がある」のだとか。「1つ目は、2人いるからこそ、台本を一緒に持って、シーンを自分たちで演じられること。そうすると気持ちが非常によく分かるんだ。2つ目は、夜寝てるときなど、急にアイデアが浮かんでも隣にいるから、『アイデアが浮かんだんだよ!』と共有できるところだね」(デイトン監督)。ファリス監督は、「悩みがあったり問題があったときも、それぞれ違うパートナーの所に帰って行ったら、話したくてしょうがないけど次の日まで待たないといけない。でも私たちは、その場でずっと話し合える。そして解決もできるというメリットがあるわ。特に寝てるときなんかは、1番いいアイデアが浮かぶしね(笑)」と実感を込めて語る。
お互いを尊重し、意見を積極的に採用していくスタイルが、ファリス&ジョナサン監督の“武器”。そして、「リトル・ミス・サンシャイン」「ルビー・スパークス」と一貫して組んできたFOXサーチライトは、2人の最大の理解者だ。ファリス監督は「彼らとは3回一緒に組んできたけれど、本当に私たちが撮りたい映画を撮らせてくれるスタジオって少ないの」と感謝を述べる。対するデイトン監督も、「観客との関係もとても良いし、何より映画を愛してくれている。そういった意味で、とても貴重なところだね」と信頼感をにじませていた。
「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」は、7月6日から全国で順次公開。
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