行定勲監督、日本映画界の次世代の逸材監督たちへ熱きエール
2018年4月9日 14:00
[映画.com ニュース] くまもと復興映画祭3日目となる4月8日、特別企画・新進監督シンポジウム「次世代を担う監督達を囲んで」が開催され、「僕の帰る場所」の藤元明緒監督、「アイスと雨音」の松居大悟監督、「blank13」の齊藤工監督、「おじいちゃん、死んじゃったって。」の森ガキ侑大監督、「アイムクレイジー」の工藤将亮監督と行定勲監督が、日本映画の現状と未来について語り合った。
齊藤監督は正当な評価を得るために、まずは海外の映画祭に参加したと語る。「俳優が映画を撮ると、どうしてもバイアスがかかって見られてしまうので、それを逆手にとりました。『blank13』の場合は、先に海外の映画祭に出し、(自分や)高橋一生さんのことを知らない国の人たちの(純粋な作品の)評価を経て、日本公開できたらいいと思ったんです。今後もタレント監督の立場を生かしながら、思いっきりコンプライアンスにひっかかるような映画を作ってみたい」と、現在の過剰なコンプライアンスについても言及した。
行定監督が「越境して撮る国際派監督」と期待を寄せているのが「僕の帰る場所」の藤元監督だ。日本とミャンマーの合作として日本に住む外国人の知られざる苦悩や真実を描いた作品で、これを機に「これからもアジアのなかの1人として、国とか何人とか関係なく映画を撮って行きたい」と意欲をみせる。また、「おじいちゃん、死んじゃったって。」の森ガキ監督も「海外との合作を含めて、1人でも多くの人に見てもらえる仕掛けをしていきたい」と、それぞれが風穴をあけようとしていた。その理由のひとつが製作費の問題だ。
製作費が多ければ自由が減り、本当に作りたい映画を作ろうとすれば製作費が減る、どの監督も抱える問題、立ちはだかる壁だ。松居監督は「監督を続けるほど製作費が減っていきます(苦笑)」と言い、「アイスと雨音」では、現実と虚構、映画と演劇の狭間でもがく若者たちの1カ月間を74分ワンカットで描くという挑戦をしている。行定監督は「製作費と作品の出来は決して比例しない。革命を起こす監督になると思う」と賛辞を贈った。
「アイムクレイジー」の工藤監督は、10代後半から京都の撮影所で助監督として働いていたが、現在助監督は「絶滅危惧種」だと話す。7年前にやめようと思ったことがあったそうだが、その時に行定監督と出会い、「うつくしいひと」シリーズの助監督を務めたことで、思い止まった。「時間がかかってもいい、自分と社会のあいだで撮りたいものが見つかったら撮りなさい」という行定監督の言葉が支えとなり、「アイムクレイジー」で監督デビューを果たした。
行定監督は、この5人の監督が作り出す、大作でも有名でもないけれどいい映画を埋もれさせないため、日本から海外へ才能が逃げていってしまわないため、観客の意識の変化も必要だと言う。「たとえば、原作が有名だからという理由だけで映画を選ぶのは客の怠慢だと思うんです。そうならないために、発見してもらうために、映画祭がある。1年に1回、くまもと復興映画祭に来てもらうことで発見がある」と映画祭の魅力を力強く語り、今年についても振り返った。
「(ディレクター)4年目にして熱狂的な映画祭ファン、熊本のファンが増えているのを感じています。手応えを感じています。世界をみても“復興”とついている映画祭はひとつもなくて、復興とついていることによって風化しない、熊本を象徴する言葉になっている。今後も“復興”映画祭として続けていけたらいいと思っています」と、熱いメッセージを伝えた。
クロージングセレモニーでは熊本市長の大西一史氏が「(震災などの)自然のエネルギーに負けないだけの人間のエネルギーを出していく、それが復興映画祭だと改めて思いました。どんな形になるかは分からないですが、くまもと復興映画祭を続けていきたい、また来年やりましょう」という希望に満ちた言葉で幕を閉じた。
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